第37話:価値の再定義と、黄金の檻
1. 崩壊する「嫉妬」の鏡
マンモンが縋り付いていた「黄金の鏡」には、彼女が欲して止まなかった「他者の輝き」が映し出されていた。しかし、悠真がその鏡に触れた瞬間、鏡面は音を立てて粉砕される。
「嫌ぁぁぁ! ボクの……ボクの宝物が……!」
「マンモン、よく見ろ。鏡が割れて、お前を照らす偽物の光は消えた。……今、そこに残っているのは何だ?」
粉々になった鏡の破片。そこに映っていたのは、煌びやかな宝飾品を剥ぎ取られ、ただ一人の少女として震えるマンモンの姿だった。彼女は、誰かに自分自身を見て欲しかった。だが、自分には「価値」がないと信じ込んでいたため、他者の価値を奪い、着飾ることでしか存在を証明できなかったのだ。
2. 簒奪から「管理」へ
悠真は、マンモンの首筋に手を添えた。アスモデウスの残した『執着の刻印』が共鳴し、悠真の魔力が「所有」の概念を書き換えていく。
「お前に、新しい役割を与える。……お前のその『嫉妬』は、これから『価値の適正管理』として機能させる。世界中の富と魔力。誰が何を持つべきか、お前のその執拗なまでの執着心で監視し続けろ」
(【悪魔卿マンモン:制圧完了】:属性:『深淵の嫉妬』。権能:『黄金の秤』。……世界規模の資産・魔力分配の最適化権限を掌握)
「……ボクが、管理するの? ボクだけの、仕事……?」
マンモンの瞳に、初めて「他者の模倣」ではない、自分自身の存在意義が灯る。彼女は悠真の足元に力なく崩れ落ち、その服の裾を強く握りしめた。
「……わかったわ、悠真。ボクはもう、他人のものは欲しがらない。……でも、あなただけは、誰にも渡さないから。ボクが一番近くで、あなたを『監視』してあげる」
3. 予兆:世界の鳴動
七人の悪魔卿のうち、六人が悠真の支配下に入った。残るはアスモデウスの完全な服従のみ……というその時。
突如として、エリュシオンの空が不自然な「白」に染まった。
それは魔力による攻撃ではない。システムそのものが、外部からの干渉を受けて「書き換え」られている兆候だった。
(【天使の図書館:緊急警告】:深刻なエラーを検知。……上位権限者による『世界初期化』のシークエンスが開始されました。……現実世界とエリュシオンの境界線が、0.02%の速度で消失しています)
「……始まったか。運営か、あるいは『創世記』の真の主か」
悠真の背後には、ルシフェル、ガブリエル、そして新たに加わったマンモン。最強の陣容が揃いつつある中で、物語は「ゲームの攻略」を超え、世界そのものの存亡を懸けた最終局面へと突入する。




