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F級冒険者と、役立たずの『図書館』  作者: 綾瀬蒼


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第30話:飽食の聖域と、五人目の誓い

1. 黄金の供物


自食オートファジーの苦痛にのたうち回るベルゼブブを前に、悠真は使徒たちへと合図を送った。

「バルクァン、ルシフェル! こいつの胃袋に、底知れない『価値』を叩き込め!」

『心得ました。……私の「財」は、奪われるためのものではありません。与え、回し、世界を支配するためのものです!』

バルクァンの金の魔力が、悠真の右手を介してベルゼブブの体内へと流れ込む。それは単なるエネルギーではない。世界中の「富」の概念そのものを凝縮した、質量を持った黄金の奔流だ。

同時にルシフェルが、ベルゼブブの暴走する消化機能を氷の魔力で「冷却」し、強制的に安定させる。


2. 無限の充足


「あ……が、はっ……!? 何、これ……。重い……熱い……。でも……満たされていく……!」

ベルゼブブの瞳から狂気が消え、代わりに黄金の輝きが宿る。

彼がこれまで求めていたのは、生命の搾取ではなく、決して枯渇することのない「絶対的な充足」だった。

バルクァンの『無限の財』が、ベルゼブブの『無限の飢え』という空洞を埋め尽くした瞬間、二つの相反する権能が一つに溶け合った。

【スキル:天使の図書館(全知の瞳)——概念結合マージ完了】

【対象:悪魔卿ベルゼブブ(暴食)→ 聖食卿ベルゼブブへと変異】

【救済完了:五人目の使徒として登録されました】

ベルゼブブの背中から、蝿を思わせる醜悪な翅が消え、ステンドグラスのように美しい六枚の薄羽が展開される。

「……もう、お腹空かない。ボク、こんなに気持ちいいの……初めてだ」

少年は巨大なフォークを杖へと変え、悠真の前で深々と頭を下げた。


3. 六人の覇者


フランスの古都に漂っていた死の臭気が、一瞬にして花の香りと温かな光へと塗り替えられた。住民たちの「概念的飢餓」も解除され、街は奇跡的な活気を取り戻していく。

【天野悠真:ランク B級 → A級(世界最高峰の領域へ)】

【特殊権能:『飽食の加護ギフト』——範囲内の味方の魔力・体力を常時高速回復する】

悠真の背後には、五人の使徒が並び立った。

⚫︎ ガブリエル(情報)

⚫︎ バルクァン(財)

⚫︎ ルシフェル(武力)

⚫︎ ベル(電脳)

⚫︎ ベルゼブブ(供給)

「……これで、準備は整ったわね」

傍らに立つ氷室咲が、その圧倒的な陣容にため息を漏らす。

「ああ。特対庁も、世界冒険者連盟(WAF)も、もう俺たちの歩みを止めることはできない」

悠真は、自らの『図書館』の最終ページを見つめた。

そこには、残る二人の悪魔卿――アスモデウス(色欲)とマンモン(嫉妬)の名が、血のような赤色で刻まれていた。

「残り二人。……この世界の『秩序』を、根底から書き換えに行こう」

悠真の言葉と共に、ステルス輸送機は次なる目的地、世界中の富と欲望が渦巻く「中東の摩天楼」へと進路を向けた。

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