第26話:瓦礫の玉座と、変異する階級(ランク)
1. 爆発の沈黙
轟音と熱風が収まった後、東京・江東区のデータセンター跡地には、巨大なクレーターと、焼け焦げた電子部品の山だけが残されていた。
「天野……!? 嘘でしょ……」
駆けつけた氷室咲は、絶望に顔を歪めた。S級ランカーですら生き残れないほどの魔力爆発。しかし、煙が風に流された先に、信じられない光景が浮かび上がる。
クレーターの中央。
無傷の悠真が、意識を失った少女(実体化したベリアルの器)を横抱きにし、静かに立っていた。彼の背後には、ルシフェルとバルクァンが跪き、主の無事を確認している。
(【自己ステータス確認】:魔力臨界突破。ベリアルの電子魔力を『知識』として完全統合。……ランク上昇を強制停止中。変異属性:『電脳支配』が追加)
「主、ご無事で何よりです。……しかし、そのお体、少し『重く』なっておられませんか?」
バルクァンの指摘通り、悠真の瞳には時折、デジタルの文字列がノイズのように走っていた。1億人分の精神データを受け止めた代償だ。
2. 迫りくる「国際的な牙」
「動くな! 特対庁・天野悠真!」
瓦礫の山を囲むように、数十機の武装ドローンと、アイアン・デューク率いる『リバティ』の残存部隊が銃口を向けた。
「データセンターを破壊し、未確認の悪魔卿を私物化。さらには国際ネットワークを麻痺させた。……君はもはや救世主ではない。世界を脅かすテロリストだ」
デュークの言葉は、彼の背後にいる「世界冒険者連盟(WAF)」の意志だった。彼らは、日本が一独占しようとしている悠真の「知識」と、悪魔卿の力を恐れ、排除、あるいは強奪しようと動き出したのだ。
氷室咲が悠真の前に立ち、デュークを睨みつける。
「彼は1億人を救ったのよ! それをテロリストと呼ぶなんて……!」
「どいていろ、氷室。……これは、俺と『世界』の問題だ」
悠真は静かに氷室を下がらせた。
3. 傲慢な警告
悠真は右手を軽く挙げ、指を鳴らした。
次の瞬間、周囲を取り囲んでいた武装ドローンすべてが、一斉に制御を失い、空中で互いに衝突して自滅した。
「なっ……何をした!?」
「ベリアルの能力の一部を借りた。……この世界のあらゆる通信網、電子制御は、今この瞬間から俺の『図書館』の管理下にある」
悠真の瞳が紫色の光を放つ。
「デューク、お前たちの背後にいる連中に伝えろ。俺の邪魔をするなら、世界中の銀行口座を凍結し、すべてのインフラを停止させる。……俺は救世主になるつもりはない。ただの『管理者』だ」
その圧倒的な威圧感に、デュークは一歩も動けなかった。B級というランクを遥かに超越した、「世界の法則そのもの」を武器にする少年の誕生に、その場にいた全員が戦慄した。
悠真は気絶したベリアルを連れ、悠然と歩き出す。
だが、その影の中で、救済を待つ五人目の悪魔卿が、静かに笑っていた。




