第25話:暴走する楽園と、極限の維持
1. 管理コアの破壊と反動
悠真の拳がスロウスの幻影を貫き、その胸元にある「管理コア」を粉砕した瞬間、仮想世界『エリュシオン』は断末魔のような叫びを上げた。
【警告:メインシステム・クリティカルエラー。全領域で定義崩壊が開始されます】
「……あ、ああ……っ!」
ベリアルの意識の拠り所だったコアが壊れたことで、閉じ込められていた1億人の精神データが、行き場を失い濁流となってサーバー内を逆流し始めた。それは、ベリアル自身の魂を内側から焼き切るほどの高負荷だった。
「ベリアル! お前を消すつもりはない! その膨大なデータを、俺の『図書館』に一時退避させろ!」
悠真は自身の脳をサーバーの外部ストレージとして開放し、1億人分の「怠惰」の魔力を引き受け始めた。全身の血管が浮き上がり、目からは血が滲む。
2. 現実世界:オーバーヒートする心臓部
一方、現実世界のデータセンターは、物理的な限界を迎えていた。
数万台のサーバーユニットが真っ赤に熱を持ち、冷却水は一瞬で蒸発して白い霧が立ち込める。
「な、何だこの熱は……! サーバーが溶け始めているぞ!」
アイアン・デュークが驚愕して後退する。もはや爆撃などせずとも、このままではセンター全体が大爆発を起こし、周囲数キロを吹き飛ばす魔力災害が発生する。
「……計算外ですね。主がこれほどまでに無茶な肩代わりをされるとは」
バルクァンが、汗を流しながらも冷静に魔力を注ぎ込み、サーバーの物理構造を金の魔力で補強し続ける。
「バルクァン、余計な私語は不要よ。……私たちは、主が戻る場所を守るだけ」
ルシフェルは漆黒の羽根を広げ、立ち昇る熱気を自身の氷の魔力で強引に冷却していた。S級ランカーであるデュークですら近づけない極寒と酷熱の境界線で、二人の使徒は文字通り「世界の崩壊」を食い止めていた。
3. 投影される「怠惰」の真姿
仮想世界の崩壊が進む中、悠真の目の前に、ノイズにまみれた少女の姿が実体化し始めた。それは、VRアバターではない、現実世界へ無理やり「投影」されようとしているベリアルの真の魂だ。
「……ねえ、主殿……。どうして、私を助けるの……? 私は、みんなの時間を奪った……最低の悪魔なのに……」
「最低かどうかは、起きてから自分で決めろ。……俺が、お前の新しい『居場所』になってやる」
悠真の言葉に反応するように、ベリアルの投影体が淡い光を放ち、悠真の影へと吸い込まれていく。
【悪魔卿ベリアル:一時封印完了】
【天使の図書館:データ退避率 98%】
だが、その瞬間。サーバーセンターの地下にある「最下層プロセッサ」が、耐えきれずに大爆破を起こした。
「主!!」
ルシフェルの叫びが響く中、データセンターを巨大な光柱が貫いた。




