第24話:二面作戦(ダブル・フロント)
1. 仮想世界:拒絶の門番
ベリアルの無意識領域『最果ての学舎』。悠真が禁じられた扉に手をかけた瞬間、空間が歪み、一人の騎士が姿を現した。
それは、黄金の甲冑に身を包んだ、全盛期の大天使スロウスの幻影。ベリアルが「自分自身すら近づけない」ように設定した、最強の自己防衛プログラムだ。
(【観測対象:守護プログラム・スロウス】:特性:攻撃意志を持つ存在の速度を99%低下させる。論理的対話不能。……破壊する以外に道はない)
「ここから先は、誰も入れない。……ここは、私が唯一、傷つかずに済む場所だから」
幻影のスロウスが剣を抜くと、悠真の思考速度すら遅延し始めるほどの強力な「停滞の加圧」が教室を包み込んだ。
2. 現実世界:サーバーセンター攻防戦
一方、現実世界。東京・江東区にある巨大なデータセンター。
そこには、サーバー爆撃を強行しようとするS級ランカー、アイアン・デューク率いるギルド『リバティ』の精鋭たちが集結していた。
「どけ、特対庁の女。我々は人類を救うためにこの『癌』を焼き払いに来たのだ」
デュークの前に立ち塞がったのは、執務服を脱ぎ捨て、本来の力を解放しつつあるバルクァンと、影から滲み出るような殺気を放つルシフェルだった。
「主の作業を邪魔する不届き者め。貴様らの命に、それほどの『価値』があると思っているのか?」
バルクァンが冷たく言い放ち、金色の魔力で周囲に巨大な障壁を展開する。
「……私の主に仇なすというのなら、ここを貴様らの墓標にしてあげましょう」
ルシフェルの背後に、漆黒の羽根が展開される。
「なんだ、この化け物じみた魔力は……! 特対庁にこんな戦力がいたとは聞いていないぞ!」
現実世界では、使徒たちによる「主を守るための防衛戦」が始まった。
3. 知識の零距離射撃
仮想世界では、悠真が「停滞」の重圧に抗いながら、スロウスの幻影に肉薄していた。
「お前が守っているのは、平和じゃない。ただの『虚無』だ、ベリアル!」
悠真は攻撃ではなく、あえてスロウスの剣をその身で受け止めた。
【スキル:天使の図書館(全知の瞳)——記憶の逆流注入】
剣を介して、悠真はガブリエルから送られた「現実世界で目醒めを待つ人々の祈り」と「ルシフェルたちの献身」のデータを、ベリアルの核へと一気に流し込む。
「……っ、何……これ……温かくて……苦しい……!」
スロウスの幻影が揺らぎ、教室の壁がひび割れ始める。
現実の絆を知らないベリアルにとって、それは猛毒であり、同時に唯一の救いとなる劇薬だった。
「48時間もいらない。俺が今すぐ、お前の夢を終わらせてやる」
悠真の拳が、スロウスの胸元にある「管理コア」を捉えた。




