第16話:偽りの神威と使徒の総力戦
1. 特対庁ハッキング
深海ゲートの最深部、圧倒的な魔力を放つ悪魔卿サタンを前に、氷室咲を含むS級ランカーたちはその場に膝をついていた。サタンのスキル『絶対服従』により、彼らの精神は「戦う」という選択肢を強制的に封じられていた。
「さあ、跪きなさい。それがゴミ溜めの住人に相応しい姿よ」
サタンの冷酷な声が響く中、悠真だけは『精神防壁』を最大出力にして立ち続けていた。だが、C級の肉体では防戦一方だ。
(ガブリエル、バルクァン!準備はいいか!)
悠真が脳内で叫ぶと、二人の使徒が即座に応答した。
『主よ。特対庁のメインフレーム、および備蓄魔力タンクのハッキングを完了しました。今、私の「情報」とバルクァンの「富」を、主の図書館経由で直結します!』
特対庁本部では、ガブリエルが超高速でキーを叩き、バルクァンが魔力資産をデジタル化して送出していた。
2. 偽・S級状態への覚醒
「……っ、ぐあぁぁあ!!」
悠真の肉体に、二人の元悪魔卿の全魔力が、特対庁の備蓄魔力をブースターにして流れ込んできた。
【警告:肉体許容値を大幅に超過。天使の図書館による強制補正を開始】 【偽装ランク:C級 → S級(持続時間:180秒)】 【魔力出力:計測不能。全スキルを最大出力で解禁】
悠真の周囲に、青白い魔力の奔流が吹き荒れる。その圧力に、サタンが初めて不快そうに眉を寄せた。
「何かしら、その薄汚い魔力は。借り物の力で私に並ぼうというの?」
「借り物じゃない。これは、俺が救済した彼女たちの信頼の証だ!」
悠真は、一瞬でサタンの目の前まで踏み込んだ。S級の身体能力と『効率化された動作』が組み合わさり、その速度は光を超えたかのように錯覚させる。
3. 深海での激突
「オーダー!『その場で自壊しなさい』!」
サタンが強力な言霊を放つが、ガブリエルの情報介入により、そのスキルコードは瞬時に相殺される。
「無駄だ。お前の『命令』は、俺のライブラリによって既に解析済みだ!」
悠真の拳がサタンの防壁を粉砕した。バルクァンの魔力が物理的な破壊エネルギーへと変換され、海水の壁を何キロも先まで吹き飛ばす。
「おのれ……!下等な人間が、この私に触れるなど……!」
サタンの軍服が裂け、彼女の真の魔力が解放されようとしていた。だが、悠真の狙いはサタンの撃破ではない。彼女の「傲慢」という鎧を破壊し、救済の糸口を掴むことにある。
「氷室さん!動けるか!俺がサタンの意識を逸らしている間に、全員を連れて離脱しろ!ここからは、俺とコイツの、『王』を決める戦いだ!」
悠真の背中には、一時的にガブリエルの白き羽根と、バルクァンの金の光が重なり合い、神々しいオーラを放っていた。それは、F級の少年が、世界最強の悪魔卿と対等に渡り合うという、歴史的な瞬間だった。




