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F級冒険者と、役立たずの『図書館』  作者: 綾瀬蒼


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第15話:深海の傲慢と、崩壊のカウントダウン

1. S級ゲート『東京湾深海』


東京湾の海底に突如として現れた巨大な空間の歪み。そこは、海水が重力に従わず壁のように立ち塞がる、深海を模したS級ゲートだった。

現在、ここでは特対庁の氷室咲率いる精鋭部隊と、日本屈指の最大手ギルド『フェニックス』による合同攻略作戦が展開されていた。だが、彼らはまだ気づいていない。自分たちが悪魔卿サタンが仕掛けた「傲慢の罠」の渦中にいることに。

(【観測対象:S級ゲート『東京湾深海』】:魔力濃度:通常ゲートの400%増。サタンの策略:『自己顕示欲の増幅』。影響:ランカーたちの連携が「自分が最も目立ちたい」という欲望により致命的に欠落している)

悠真は、ガブリエルが提供した特対庁の通信コードと、バルクァンが横流しした潜水用魔力ブースターを装備し、単独で深海ゲートへと潜入した。

「主よ。先行しているS級部隊のバイタルデータに異常を確認しました。彼らの魔力波形が攻撃的に尖っています。サタンの干渉により、彼らは互いを仲間ではなく、自分の功績を奪うライバルと認識し始めています」

通信を通して、ガブリエルの冷静な声が届く。

「想定内だ。傲慢な強者ほど、サタンの毒は回りやすい。氷室さんはどうだ?」

「氷室課長は……自己抑制の知識で抵抗していますが、限界が近いです。彼女の『独占欲』が、サタンの『傲慢』と共鳴し始めています」


2. 傲慢の罠、発動


悠真が深海の第二階層、巨大な水没都市の廃墟に到達した時、前方で爆発音が響いた。

そこでは、氷室咲と『フェニックス』のトップランカーたちが、ボスの眷属を前にして醜い手柄の奪い合いを始めていた。

「氷室!このボスの首は我々フェニックスが獲る!特対庁は後方で支援に徹しろ!」

「笑わせないで。支援が必要なのは、無策に突っ込むだけのあなたたちの方よ。私の指示に従えないなら、この場で退場しなさい!」

氷室の瞳には、これまでになかった攻撃的な色が混じっていた。普段の冷徹な分析はどこへやら、彼女は「自分の正しさを証明すること」に固執していた。

【観測対象:氷室咲】:状態:精神汚染度65%。傲慢による判断力低下。 【構造解析:深海のボスの特性】:名:『リヴァイアサン・シード』。特性:「他者との連携を絶った瞬間に、攻撃力が10倍に跳ね上がる」。

「最悪のタイミングだ。あいつら、わざとボスのトリガーを引きに行ってる」

悠真はC級に上がったばかりの肉体を、バルクァンの魔力ブースターで強制的にオーバードライブさせた。


3. 最強の悪魔卿の眼差し


次の瞬間、ボスの『リヴァイアサン・シード』が咆哮を上げた。連携を失ったランカーたちの頭上から、回避不能な超高圧の水弾が降り注ぐ。

「……っ!? 結界が、防げない……!?」

氷室が絶望に目を見開いたその時、彼女の前に、一人の男が割り込んだ。

「『経済解析マモン』——魔力消費効率を最適化。『精神防壁レヴィア』——干渉波を遮断!」

悠真は、二人の元悪魔卿から得たスキルを同時に発動。氷室と周囲のランカーを包んでいた「傲慢」の魔力を力技で弾き飛ばし、ボスの水弾を最小限の魔力で相殺してみせた。

「天野……!? なぜ、ここに……」

「氷室さん、余計な自尊心は捨てろ。今この瞬間、この場を支配しているのはアンタたちじゃない」

悠真が廃墟の頂上を指さすと、そこには、これまでの悪魔卿とは比較にならないほどの圧倒的なプレッシャーを放つ女性が、不遜な態度で座っていた。

「あら。ゴミ溜めの中で、一匹だけ目つきの違うネズミがいたのね」

悪魔卿、サタン。彼女は漆黒の軍服を纏い、まるで世界の王であるかのような冷酷な美しさを湛えて、悠真を見下していた。

(【観測対象:悪魔卿サタン】:ステータス:魔力SS。特殊能力:『絶対服従オーダー』。現在の思考:『この男を私の靴を舐める奴隷に書き換えよう』)

サタンの強力な魔力が、悠真の精神を根底から書き換えようと襲いかかる。

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