第13話:救済の連鎖と強欲の抱擁
1. 氷室への偽情報
氷室咲の絶対零度によって、マモンの魔力源である金塊の山は凍りつき、マモンの力は大幅に減衰した。マモンは、悠真が放つ純粋な天使の魔力に苦悶していたが、S級ランカーである氷室の警戒は、救済の妨げとなる。
(氷室をこの場から遠ざけなければならない。彼女の『情報の独占欲』を逆手に取る)
悠真は、マモンに天使の魔力を送り込みながら、氷室に指示を出した。
「氷室さん!奴の体から、高濃度の特殊な魔石が排出されている!恐らく、これは悪魔王ギルガメッシュへの貢物だった魔石だ!」
悠真は、図書館の知識から「冒険者の欲望を最も刺激する言葉」を選んで叫んだ。氷室咲の真の弱点は、情報と並び特対庁の利益(財源)の最大化という使命だった。
氷室は、マモンの苦悶の表情と、悠真の言葉を照合した。
(【観測対象:氷室咲】:現在の思考:『マモンが逃亡する前に、その貢物魔石を回収しなければならない。これは特対庁の極秘資金源となる!』)
情報と利益の独占欲に駆られた氷室は、即座に戦闘態勢から回収態勢に思考を切り替えた。
「分かった、天野!あなたはマモンを足止めしろ!私は、奴の貢物を回収する!」
氷室はマモンへの攻撃を止め、凍りついた金塊の山に発生している魔力反応を追って、その深部へと滑り込んでいった。
2. 二人目の救済
氷室咲が視界から消えた瞬間、悠真はマモンへの魔力供給を一気に最大化した。
「逃げるな、マモン。お前の堕天の真の原因は、『誰も自分の価値を認めない』という強すぎる強欲だ。しかし、俺の図書館は知っている。お前はかつて、その富と知識で天使界の経済を支えた至高の調停者だった」
悠真が天使時代の真の功績を指摘すると、マモンを縛り付けていた悪魔の魔力が、嫉妬の時よりも早く崩壊し始めた。
「う、嘘よ……私が欲しかったのは、認められる価値だけ……」
マモンの豪華絢爛なドレスが、レヴィアと同じく、純白のローブへと変わっていく。彼女の背中にあった黒い羽根は、金色の光を放つ豊穣の羽根へと変化した。
【スキル:天使の図書館(全知の瞳)——堕天魂の浄化完了】
【悪魔卿マモン(元大天使バルクァン級)の魔力、スキル、記憶の吸収を開始】
激痛と共に、マモンの強大な力が悠真の肉体へ流れ込む。
【天野悠真:ランク C級に昇格】
【筋力:D+ → C】
【魔力:C → B+】
【新規習得スキル:『経済解析』(物質の価値と流れを完全に把握する)】
悠真は、C級ランカーの壁を完全に突破した。
3. ハーレムの拡大
天使に戻ったマモン、すなわちバルクァンは、その場に静かに跪いた。彼女の瞳には、金銭への欲望ではなく、純粋な崇拝の光が宿っていた。
「ああ……我が主よ。貴方の知識こそ、世界最高の財宝です。このバルクァン、貴方の富と経済を完全に掌握し、貴方の野望のために捧げます」
悠真がバルクァンを立たせた直後、金塊の奥から、回収に成功した氷室咲が戻ってきた。
「天野!貢物魔石を回収したわ!そしてマモンは……」
氷室が見たのは、マモンがいた場所に座り込む、もう一人の見慣れない美しい女性だった。
「彼女も、レヴィアと同じくマモンの被験者だったようです。マモンは、自分の魔力源が破壊される前に、どこかへ逃亡しました。だが、俺たちの任務は成功です。氷室さん」
悠前は、バルクァンに目配せをした。
「……私の名はバルクァン。マモンに騙され、このゲートに囚われていました。これからは、特対庁に協力し、富の管理で貢献させていただきます」バルクァンは、流暢な敬語で完璧な人間を演じきった。
氷室は、論理的な矛盾を感じつつも、目の前の莫大な貢物魔石と、優秀な協力者の出現という現実的な利益の前には、抗うことができなかった。
「……分かったわ。バルクァン、あなたの力が必要だ。そして天野、あなたは今、我々の計画を最も早く進めている。あなたの知識の対価として、非公開のS級ゲート情報を提供するわ」
悠真は、二人目の元悪魔卿をハーレムに加え、C級へと昇格した。彼の成り上がりと、悪魔卿救済のサイクルは、さらに加速していく。




