第11話:S級ランカーとの合流と氷室の心の隙
1. 換気シャフトの落とし穴
悠真は、C級ゲート『霞ヶ関金庫』の地下金庫にある、目立たない換気シャフトの入り口を前にしていた。ここが悪魔卿マモンの製造拠点であることは、悠真の解析では確実だった。
悠真がシャフトに手をかけたその瞬間、床全体が軋み、換気シャフトの周囲の壁が一斉に崩落した。
【観測対象:マモンの隠しトラップ】:種類:「強欲の罠」を回避した者に対する「憤怒の罠」。効果:強制的な深層への落下。
悠真は落下しながら、図書館の知識で衝撃を吸収する体勢を整えた。しかし、彼と共に崩落の罠に巻き込まれた者がいた。
「ちっ……!なぜこの座標が罠だとわからなかった!」
怒りに満ちた声と共に、悠真の隣に、特対庁の制服を着た氷室咲が落下してきた。彼女はS級ランカーとしての高い身体能力で、壁面を蹴りながら落下速度を制御していた。
「氷室さん!なぜここに!?」悠真は驚きを隠せなかった。
「私があなたを信用しすぎた報いよ、天野!あなたは、製造拠点へ単独で向かっているはず。私はその確認のために、S級チームを待たず、単独でここに来た!」
氷室は、悠真が送った座標情報が囮である可能性を疑い、そして悠真の単独行動を阻止するために、自ら動いていたのだ。
2. S級ランカーとの共闘
落下した先は、マモンの魔力が渦巻く未知の地下通路だった。マモンは、二人が合流したことを知るや、すぐに眷属を送り込んできた。
現れたのは、これまでのゴールドタートルとは違う、人間の骨と、盗まれた宝飾品が融合したような異形の眷属、『貪欲の亡者』だった。
「貪欲の亡者……物理防御が極めて高い。悠真、邪魔をしないで!私が一掃する!」
氷室咲は、即座に短銃型の魔力武器を取り出し、S級ランカーとしての実力を発揮した。彼女のスキル『絶対零度』が発動すると、通路全体が瞬間的に凍りつき、亡者たちは動きを止めた。
「今よ!天野、解析しろ!弱点を!」
氷室の攻撃は強大だったが、亡者たちの硬すぎる防御を完全に破壊するには至らない。彼女は、悠真の知識に頼るしかなかった。
【観測対象:貪欲の亡者】:特徴:凍結状態にあると、骨と宝飾品の結合部が脆化する。弱点:凍結中に、特定の高周波振動を与えることで、結合部を剥離させることが可能。
「氷室さん!亡者たちの結合部が凍結で脆くなっている!この距離から、俺の剣で高周波振動を叩き込みます!」
悠真はD級の筋力しか持たないが、『効率化された動作』によって、ショートソードの先端に正確な振動を集中させることができる。
悠真は亡者たちの体表に触れる寸前、その振動を一気に解放した。
キィィィン!という耳鳴りのような高周波音が響くと、氷の亡者たちの結合部が崩れ、甲羅が剥離し、瞬時に塵となった。
「……信じられない。私の攻撃とあなたの知識が、完璧に連動している」氷室は、悠真の正確な指示と連携に、驚きを隠せなかった。
3. 氷室咲の心の隙を観測
共闘は続いた。マモンの眷属は次々と襲いかかってくるが、悠真の知識と氷室の武力は、S級チーム以上の効率で深層へと進んでいった。
その戦闘の合間、悠真の『天使の図書館』は、氷室咲の精神領域に焦点を合わせた。
(【観測対象:氷室咲の心の隙】:感情の欠落は偽り。真の感情:「自身への絶対的な信頼と、他者への絶望的な不信感」。マモンのトラップに影響される可能性:「情報の独占欲」)
氷室は、常に全ての情報を自分で把握し、自分で行動しなければ気が済まない、完璧主義者だった。これは、レヴィアの嫉妬とは違う、「情報の独占」という強欲の隙だ。
「氷室さん。この先は、マモンの精神干渉がさらに強くなります。俺の『知識による精神防壁』で、一時的に貴方の精神を保護します」
悠真は、ガブリエルから吸収した『精神防壁』の力を氷室に分け与えた。氷室は、一瞬だけ警戒の表情を見せたが、その魔力の清らかさに、拒絶することができなかった。
「悪魔卿マモン。お前が氷室に仕掛けた強欲の罠は、俺のチートの前では無意味だ。そして、お前の力も、もうすぐ俺のものになる」
悠真は、隣で警戒を続けるS級ランカーを、悪魔卿救済のための強力な盾として利用しながら、マモンの拠点へと足を踏み入れた。




