第9話:C級への壁と悪魔卿マモンの領域
1. マモンの領域、霞ヶ関金庫
特対庁本部に潜入したガブリエルからの情報により、悪魔卿マモンが潜伏するゲートは、『霞ヶ関金庫』と特定された。
(【観測対象:C級ゲート『霞ヶ関金庫』】:特徴:マモンが直接魔力を流し込んでいるため、ゲート内の構造が絶えず変化する。主要モンスター:金銭や貴重品への「強欲」に引き寄せられた特殊な眷属)
『霞ヶ関金庫』は、C級ランカーにとってすら難易度が高く、クリアできても魔石以外の報酬が安定しないため、敬遠されがちなゲートだった。
悠真は、自らの知識チートをもってしても、一つ大きな壁に直面していた。
「主よ、D級からC級へのランクアップに必要な経験値は、F級からD級までの総量の約五倍です。単純な周回では、時間がかかりすぎます」ガブリエルが分析する。
「分かっている。『効率化された動作』を使っても、D級のステータスでは、C級モンスターを一撃で仕留めるための絶対的な筋力と魔力が足りない」
悠真は、知識がどれほど正確であっても、肉体の限界を超越することはできないと改めて痛感していた。知識は効率を最大化するが、ゼロをイチにはできない。
「だからこそ、マモンを救済する必要がある。彼女の力を吸収すれば、C級への壁は一気に突破できる」
2. チートの限界と応用
悠真は、ガブリエルから提供された『霞ヶ関金庫』の非公開マップと、マモンが仕掛けている「強欲トラップ」の情報を解析した。
強欲トラップとは、ゲート内に設置された罠で、冒険者が魔石や財宝への執着を見せると、その欲望の度合いに応じてトラップの難易度が上昇するという、マモン特有の策略だった。
(【観測対象:強欲トラップ】:攻略法:欲望を完全に捨て、「必要なもの以外は無視する」という行動様式をとれば、トラップは起動しない)
「このトラップは、普通の冒険者には回避不可能だ。だが、俺は知識を求めているのであって、金銭や名声ではない。知識チートを持つ俺にとって、欲望のトラップはただの無効化要素だ」
悠真は、C級の壁を知識で迂回し、マモンの懐に飛び込む戦略を立てた。
その準備として、悠真は氷室咲に一つの情報を提出した。
「氷室さん。D級ゲートで、魔石の純度を瞬間的に高める『錬成魔石』の存在を確認しました。これは、特対庁の資金源を大幅に強化できます」
これは、ガブリエルから得た、古代天使の錬成技術の一部を応用した偽情報だった。この情報をリークすることで、氷室咲は悠真に錬成技術の研究という名目で、大量の魔石と、純粋な魔力の供給を許可することになる。
3. 次なるゲートへ
数日後。悠真は、特対庁から秘密裏に提供された高純度の魔石を手に、『霞ヶ関金庫』へと向かった。
この魔石は、悠真の魔力吸収を助け、マモン救済に必要な純粋な天使の魔力を生成するためのブースターとなる。
ゲート前には、既にC級からB級のランカーたちが、高額な報酬目当てに集まっていた。彼らの瞳は、欲望にギラギラと輝いていた。
「おい、F級の天野がC級ゲートに来たぞ。また荷物持ちか?」
「諦めろって。あいつは知識があるだけで戦闘では役に立たねぇんだから」
悠真は嘲笑を無視し、ゲートへと足を踏み入れた。
(悪魔卿マモン。お前の強欲な領域に、今から入らせてもらう。お前の力は、俺のC級への壁を破るための糧だ)
悠真の瞳の奥で、ガブリエルから吸収した『精神防壁』が静かに発動していた。欲望を司るマモンのトラップは、悠真には効果がない。
悠真のD級ランカーとしての、本格的な悪魔卿攻略戦が始まった。




