冷蔵庫がある点だけは褒めてやらんでもない
◇
翌朝、私は重たい圧迫感で目を覚ました。
「・・・んぐ」
胸元が苦しい。
すわ金縛りか!と思って目を開ければ、そこには茶色い毛玉があった。
昨晩の猫だ。
私が起きたのを察したのか、猫は私の胸の上から軽やかに飛び降りると、ベッドの横でちょこんと座り、私を見上げてひと鳴きした。
「にゃあ」
ご飯をよこせ。間違いなくそう言っている。
猫を飼ったことがない私でもわかるくらいにこの態度は万国共通だ。
寝心地は悪くないベッドから放たれる二度寝の魅力をなんとか引き剥がして体を起こす。
不思議と、昨日のような鉛のような思考は少しだけマシになっていた。
「はいはい、ちょっと待ってて」
私は隣室のキッチンへと移動する。当然ながら猫もついてきた。
キッチンの隅にある場違いに真新しい白い箱。
魔石を動力源とした、最新式の小型冷蔵魔道具——早い話が冷蔵庫だ。これまたこの時代ではかなり高価な部類に入るが、かといって庶民が買えないわけではない、というくらいのもの。
「えーと、中にたしか・・・」
扉を開けるとひんやりとした冷気と共に、数本の瓶と食材が入っていた。
そのうちの一本を取り出し、コルクを抜く。
甘い匂い。ミルクだ。
お皿に注いで床に置いてやると、ついてきていた猫は猛然とミルクを舐め始めた。
「・・・まあ、冷えた飲み物がいつでも飲めるのは、感謝してもいいかな」
ふふ、と少しだけ笑みが溢れる。
あの女神様、性格はともかく、アフターケアは(一応)しっかりしているらしい。私もコップ一杯のミルクを飲み干し、さて、これからどうやって引きこもろうかと考えた時だった。
ガンガンガンッ!!
情緒もへったくれもない、乱暴なノック音が店のドアを叩いた。




