表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/18

親友は、私の占いで死んだも同然だ

「俺を占ってほしい」


男まさりな彼女は金曜日の夜、私の家に上がってくるなりそういうと、脇目も降らずに私を見つめた。

何を聞いても答えない。ただ頑なに占ってほしいとだけ言ってくる。

占いは辞めたとしっているはずなのに、どうしてもと言って聞かないのだ。

さすがに鬱陶しくなって「何があったのかいうのが面倒ならそれすらも占うよ?」といえば「おう、そうしてくれ。そして俺にその答えをおしえてくれ」とまでいう。

そんなことはない。

私の占いは適当で、全部口から出まかせで。

その実、私の言葉が、力を持っているのだ。

けれどその親友はどうしてもと言って動かず、夜になり、朝になり。


「——わかった、わかったわよ。占えばいいんでしょ占えば。どうなっても知らないわよ」


日が変わってせっかくの休日。いくら親友といえど予定にない彼女で潰されたら癪に触るのだ。夜のおしゃべりは楽しかったけど。


「タロットでいいわね。あれなら大体のことは占えるし」


タロット占い。

簡単にいえばなんでも占える、困ったときはコレ、といった具合に私は使っていた。

手相は正直人によって千差万別だし、じろじろと他人の手を見るのも気が引けた。姓名判断は今やスマホで検索したほうが早い。水晶?リサイクルショップに売ったら一千円と言われた。三万円でかったのに。

私は引き出しの奥底にあったタロットを引っ張り出してきた。こればかりは捨てられなかった。父が十歳の誕生日に買ってくれたものだったから。

長いこと触っていなくても手に馴染むカード。昔取った杵柄、とまでは年齢を重ねていないけど。

——占いの結果は、あまり良くなかった。


「どうした、教えてくれよ」

「慌てないの。読み解くのに時間かかるんだから」


嘘だ。何千何万とタロット占いをしてきたのだ。一目見れば全てわかる。


「今、困っている。これからちょっとばかり高い困難が降りかかる。それを乗り越えられるかは、貴女次第」

「——そんなふわっとした占いだったか?」

「うっさいわね、占いなんてそんなものよ。天気予報じゃないんだから」

「ちなみに、乗り越えられなかったらどうなる?」

「・・・あんまり良くない。身を滅ぼすって出てる」


——身を滅ぼす。


解釈はいくらでもできる。


「ねぇ、お金に困ってるの?」

「ちがう」

「じゃあ男?」

「ちがう」

「仕事関係」

「当たらずも、遠からず」

「そっか」


じゃあ何もいうまい。

仕事関係ならたとえ身を滅ぼすといっても、酷いことにはならないと思った。


「ま、どうしても困ったらうちにおいでよ。居候の一人や二人くらい、養ってあげるわよ」

「そんなんじゃないんだが、まぁもしもの時はそうだな、頼む」


そういって彼女は家を出て行った。

「また来る、今度は美味しいケーキでも買ってくるよ」と別れを告げて。私が大の甘党だと知っているのは彼女くらいだった。


——翌週、彼女の訃報が入った。


死因は転落死。

階段で足を滑らせて転がり落ち、打ちどころが悪くそのまま死亡。

原因は書類を読みながら歩いていたことによる不注意。

その知らせを聞いて、私は仕事を辞めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ