表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢のはずだった(副題、緑の眼の化け物)

作者: 夜明青





血筋がよく、魔力も強く、最高のレディであるため家や学園の勉強と並行して皇太子妃の教育もこなして。

全ては我が家門と私の幸せのため。


帝国の公爵の娘が皇子と婚約するなんて当たり前のこと。

お互いに相手ではなければ釣り合う相手がなかなかいないのだ。

近すぎる血では不具合がうまれる、それは何世代か前のある家門が近親婚を繰り返した事でわかった。

貴き血筋を残す為、何よりもそこが重視されるだけのこと。


なのに真実の愛を見つけたですって?婚約破棄ですって?

光魔法が聖女の力?下賤な人間に神が力をたまたま与えたとして、それは高貴たる人物になるか?

否。

身の程を知らずに皇子に懸想し、なおかつ人目をはばからず逢瀬を繰り返すなんて、人がやることではない。


やはり下賤なものは、私達とは違う生き物なのだ。人ですらない。



本日、皇子から告げられたことは私の今までの努力を全て全て潰した。

良かったのは、城の私室に呼びだされことで、側近しか聞いてなかったこと。


家に帰ってからそれはもう暴れた、物がぶつかって割れた鏡台、 瓶が割れてインクが巻き散らかされた床、破り捨てた貴重な本、止めようとする使用人達には鞭をふるった。

そうしてるうちに夜がおとずれ、床に散らばった鏡の欠片にうつるのは髪が乱れて酷い表情の自分と美しいと褒められた緑の眼。


つい先日まではこの眼は私の誇りでもあった。

王は代々、透き通ったエメラルドのような緑の眼に、夜明けの空のような赤とも紫とも日の加減でかわる不思議な色の髪をもつ。

そうである為に皇太子妃は緑の眼を持つ者が選ばれることが多い。



執務から帰ってきたお父様に呼び出され、事の次第を説明すると溜息をつかれ何も言われず部屋へ返された。

失望されたのだ。皇子の心を掴めなかったことに、また皇子に私が皇太子妃であるメリットを示せなかったことに。


皇子を愛してるかと問われたらそれはないと言い切れる。敬愛はしてるが、それは下賤な者いう愛とは違う。

国の為の、家門の為の、相手への愛はある。



もう、何でもいい。

家のお抱え者達にも頼み、それだけでは心配なので信頼できる侍女と顔を隠せる黒衣を身に纏い、馬車も家門とは関係のないものを使い、金次第では何でもするという所の扉をくぐった。

あとは結果を待つだけである。


それから数日して、呆気無く聖女は死んだ。

なんでも皇子の他に仲良くしてた男と町でお忍びで遊んでる最中に毒を塗られた短剣で刺されて呆気無く死んだらしい。

聖女には傷を治す力があるはずだが、それが効かない毒であったと。不思議な事もあるものだ。


報せを聞いて、久々に歌いたいくらいに気分が良くなった。

たとえ、私の婚約が破断となっても、もう彼が望んだ幸せは手に入らないのだ。

私の努力、全てを潰した男への最高の復讐だと思った。


それから直ぐ私は城へ呼び出された。

今回は皇子の側近もいない、皇子の部屋で二人きりだ。

普通こういう場合には扉を少し開けておくのだけど側近が退室する際にしっかりと扉を閉めていってしまった。


空気の重さとは逆に皇子は凄く笑顔だ。

やったことがバレたのかなと思う。

家門は取り潰され、私や家族は民衆の前で処刑されるだろう。


「今日はなんで呼び出されたか解るかい?」


ああ声はどこまでも優しい。


「申し訳ございません、私にはわかりません。」


何も知りません、お茶を口にしながら微笑んでこたえる。

嘘をつくなど、ダンスより簡単なことだ。


「自分から言って欲しかったんだけどなあ。」


バサバサとテーブルの上に無造作に置かれる書類。

そして記録の為の魔法石。

書類には私が家の者を使って、また金で他者へ暗殺を頼んだ事も書かれており、ご丁寧に証拠としてのその時の会話の魔法石と実行犯とその繋がってる者が牢にいるとも記されている。


「あら、でも本当に私知りませんのよ。」


皆を虜にすると言われたことがある微笑みをで言う。

たとえバレてても私には知らないとしか答えられない。

ここで自白しようがしまいが、辿る末路は同じだ。


そっかそっかと笑いながら、皇子は剣をぬいた。

なるほど私は処刑されるのではなく、ここで皇子に殺されるのか。

あまり痛くないといいなと呑気に考える。

剣技の成績は良いらしいが実践経験は無いと聞くから心臓を一突きすることは難しいだろう、だから何度か切られるだろう。

愛しい聖女を殺した女だ、わざと嬲り殺しにする可能性もある等、思っていると、


「入ってこい。」


皇子が不思議な発言をした。

すると、すぐに扉がひらいてあの日一緒だった侍女が側近に腕をひかれて入ってきた。

彼女は私の乳母の娘だ、幼い時から一緒に育ち、身分の差があれど私が唯一信頼できる侍女。


彼女を連れて登城したのは間違いだったかもしれない。

ここまで証拠があるのだ彼女はこれから尋問どころか拷問うけて自白させてられるかもしれない。

まずい、普通は罪をおかした家の侍女でも主人に逆らえないのだから罪に問われることはあまりなく、仮に無罪放免とはならずとも、たいした罪にならずに済むはずだから忘れていた。


「なんですの?それはお話とは関係ありませんわ。」


皇子は今日一番機嫌が良さそうな顔になり、美しい笑みを浮かべた。

そして、剣には魔力をまとわせて。

勢いよく彼女の首を刎ねた。


何がおきたかわからなかった。人の首って以外ととぶのね、血ってドバドバ出るものではないの、と思ってると、喉から絞り出したような小さな悲鳴が出た。

大声は何故か出ず、淑女教育の賜物かもしれないし、人は驚きすぎると声が出なくなるのかもしれない。


皇子は変な歌を口ずさみながら側近に渡された布で剣を拭きながら言う。


「彼女はねぇ、重罪人なんだよ。彼女が聖女を殺すように頼んだんだよ。」


そんなはずは無い、全部私が仕組んだことだ。彼女は私に付き合わされてただけ。

そう言い返そうとすると、


「本当は侍女がやったことでも家門は取り潰し、君達は広場で処刑なんだけどね。」

「ねえ、すべて無かったことにしよう。婚約破棄も無かったことにしよう。ね、そうしよう。」

「この書類と魔法石は私がきちんとしておくから。」


凄く機嫌が良さそうな皇子が楽しげに言う。

私は恐ろしくて仕方がない。

この人は何を言ってるの?

悪いのは私なのに、彼女はなんで殺されたの?


「今日から城へうつるといいよ。婚約式もすんでるし、なにも変な事ではないよ。」


いつの間にか距離をつめて私の事を抱きしめながら言う声音の甘さが、この血なまぐさい光景を非現実なものにするようで、より一層彼が恐ろしい。


窓に鏡が反射して見えた皇子の美しい緑が濁ってるように感じたのは、きっと私が感じてる恐怖のせいだろう。





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




一目惚れだった。

それから何度も会うたびにどんどん好きになった。

好かれたくて一生懸命頑張ったけど、彼女はなかなか私個人にはあまり興味がないようだった。


私の好きと彼女の好きは差があるのだ。


このまま結婚しても、彼女の一番は私ではないだろう。

彼女は私と同等の愛を国へ民へ捧げるのだろう。

彼女の一番に私はこのままではなれないだろう。

好きすぎておかしくなりそうだった。



だから使えるものは使うことにした。

光の魔法が使える女を聖女と協会が認定し、その女が私に媚をうり、擦り寄ってくるのも笑顔で対応した。


そうして学園の噂になったころ、彼女を呼び出して婚約破棄を告げた。

その時の彼女の表情!はじめて見るものだったけど可愛かった。

驚きは噂があったからか、あまりなさそうだったが悔しさから顔は強張り、目は潤み、唇を噛みしめている。


嘘だよって言いながら抱きしめたいけど、それじゃあ駄目だ。

これからやる事がある。


そのあと、彼女につけていた影から、彼女が聖女の暗殺を依頼したことを報告され、それにそのままのることにした。


良かった、彼女はそんな性格ではないと知ってるけど絶望して自傷や自死するようなら止めるように指示はしてあったけど、それでも私のせいで彼女が怪我をしたりしたらと不安だった。


影に聖女にも効果がある毒を渡し、それを彼女が頼んだという金でなんでもやるという所へうまく流した。

そしてやつらはその毒を使って、聖女を殺し捕まった。

借金で首がまわらなくなったやつに金を握らせてやらせてたみたいだけど、そいつに繋がりを書面を残されてたしお粗末すぎる。


私は誰よりも先回りして彼女が頼んだ痕跡は消しておいた。

彼女は外においては清廉潔白で無くてはならない。



そうして色々片付けて、彼女を城によんだ。

何も知りませんって顔をしながらお茶を飲んでる彼女は今日も凄く綺麗だ。


証拠を提示しても、やはり彼女は知らぬ存ぜぬを通す。

まあ当たり前だ。自白して罪が無くなるわけでも無し、軽くなるわけでも無いのに、する馬鹿はいない。


目障りなのが彼女の周りにいたので調度良く始末した。

私よりも彼女を知っていて、私よりも彼女に信頼されていて。

そんなの要らない。


侍女の首を刎ねた時、彼女は何がおきたか解らなかったのだろう。

少し驚いたような、呆けたような、また彼女の初めての表情を見れた事に喜びつつ、安心できるように微笑みかけた。

彼女を傷つけるつもりなんて無いのだから。


そうして彼女のことを知ってるのも、彼女が一番頼れるのも私となり、私と彼女は幸せに暮らした。

子供の事は目をつぶることにした、彼女の子供でもあるからね。



この国にはお伽話がある。

嫉妬に狂う人がなる化け物は緑の眼をしているらしい。

私は人か化け物なのか、どちらにせよ彼女さえあればどうでもいい。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ