第4章:入寮初夜!ルームメイトは異世界ギャル!?
王立魔法学院の寮、それは学生たちの夢と現実が交錯する生活空間である。
男女別棟でありながら、同じ敷地内に高等魔導研究棟や共同訓練場まで完備された、まさに異世界エリート育成の聖地。
その寮の一角に——天野澪、仮名“ミオ・シルヴァ”の部屋が用意されていた。
「うわ、すご……なんか、ホテルみたい……!」
大きな窓からは王都の夜景が見下ろせ、ベッドはふかふか、机には高級そうな羽ペンと革装丁のノート。まるで貴族の部屋のようだ。
【部屋豪華すぎw】
【なんか主人公補正で住む場所まで勝ち組】
【寮というより高級マンション】
【絶対ルームメイトとなんかある】
「え、ルームメイト……?」
そのコメントで思い出した。
案内の時に、確か——「この部屋は二人部屋です」と言われていた。
すると、そのタイミングでドアが開いた。
「……ん? あんたが新入り?」
現れたのは、露出度の高い制服を大胆に着崩した少女だった。肌は褐色、髪はピンクのツインテール、耳には金属製のイヤーカフ。
「わ、ギャル!? って、えっ?」
澪は思わず声を漏らした。
「ふーん……あんたがあの“噂の銀髪天才ちゃん”ね?」
「いやいやいや、天才じゃないってば……」
「ちっ、こっちは地道に炎魔法頑張ってきたのに、いきなり横からチート新入りが現れてさ〜。お姫様顔で無詠唱とか、ウケないんですけど?」
「ちょ、待って、第一印象悪すぎない!?」
【来たぞ来たぞ新キャラ!】
【この子ぜったいツンデレ】
【褐色ギャル魔導士!?属性盛りすぎでは?】
【しかもルームメイトで修羅場不可避】
ギャル少女はずかずかと澪のベッドの上に座り込んだ。
「アタシ、ティナ・ブレイズ。火系上級魔導師を目指す二年生。よろしくね、“姫様”」
「名前はミオなんだけど!?」
「ミオ姫ね、OK♪」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ!」
澪の悲鳴とともに、夜の寮部屋が賑やかになっていった。
◆
その後、夕飯を一緒に食べたり、部屋で魔法の練習をしたりするうちに、ティナの態度も少しずつ柔らかくなっていった。
「……ま、話してみたら意外と面白いじゃん、ミオ」
「わたしもティナさん、怖いけどいい人ってわかったかも」
「“怖いけど”は余計!」
二人の会話に合わせて、視界に流れる配信コメントが止まらない。
【やっぱツンデレだった】
【百合じゃん】
【ルームシェアコメディ始まった】
【ギャル×姫の組み合わせは神】
【ティナも配信に出してくれ!】
(あ、そういえばこの人、配信されてるって知らないんだっけ……)
澪はこっそり苦笑した。
バレたら記憶初期化——それだけは、何があっても避けなければ。
だが、その夜。
ティナがふと、寝る前にぼそりと呟いた。
「ミオってさ……なんか、変なとこあるよね。どこ見て笑ってるのか、時々わかんない」
「えっ」
澪は思わず固まった。
「ま、いっか。アタシ、変な子わりと好きだし」
そう言って笑うティナに、澪はごまかすように笑い返すしかなかった。
——そして画面の向こうでは、視聴者たちが叫んでいた。
【うおおおおおおおおおおおお!!】
【これは……バレフラグ……!?】
【ティナ覚醒ルートある!?】
【ギルティレベルの尊さ】
静かな寮の夜、秘密の配信は今日も続いていた。