第3章:魔法学院入学試験と、覚醒するチート級の才能!
「……いや、どういうことなの?」
天野澪(仮名:ミオ・シルヴァ)は、冒険者ギルドで出会った金髪のイケメン王子——レオン・フィルゼンの突然の発言に、目を丸くしていた。
「ぜひ、王立魔法学院へご招待したい。今、学院では“次世代の才能”を求めている。そして君の魔力は……まさに理想そのものだ」
「わたし、ただの素人なんですけど……!?」
「君は知らないかもしれないが、“素人で光魔法を無詠唱”なんて、百年に一度の逸材なんだ」
【澪ちゃん天才バレ早いって!】
【設定ガバいって思ってたけど、逆に清々しい】
【王子のスカウト力エグいなw】
【あ、これヒロイン枠じゃなくて主人公枠だった】
「……推薦してくれるなら、受けるしかないか……」
という流れで、澪は流れるように王立魔法学院の“特別入学試験”を受けることになってしまった。
(本当に大丈夫かな……?)
配信コメントは盛り上がっているが、本人は不安で仕方がなかった。
◆
魔法学院は、王都の中心にある巨大な塔だった。
空中に浮かぶ魔法陣や、石造りの図書館、魔導人形が掃除をしている中庭など、まるでゲームやアニメの世界そのもの。
(テンション上がる……けど、問題は試験!)
特別試験の内容はシンプルだった。
——“与えられた初級魔法を10分以内に習得し、魔力操作で形を示すこと”。
「普通は1時間かかるものを、特別枠は10分で、ってどう考えてもハードル高すぎじゃない?」
澪は内心でシステムに八つ当たりしつつ、支給された魔法書を開いた。
内容は、「ライト・スフィア(光の球)」という初級中の初級魔法。
(……ふむふむ、魔力を手に集中させて、形をイメージして……)
澪の目がスッと細くなる。
集中。
世界の空気が、静かになった気がした。
次の瞬間——
彼女の手のひらに、完璧な光の球体が浮かび上がっていた。
「っ!?」
その美しさ、安定性、透明感。
それはもはや「初級魔法」の枠を超えた“アート”だった。
「ま、まさか……もう完成したのか?」
「いや、まさか……!?」
「これは……“天才”という言葉で済むレベルではない……」
周囲の試験官たちがざわつく中、澪本人は。
「うん、まあ……こんな感じ、で合ってるかな?」
ケロッとした表情で魔法球をくるくると回していた。
【え、今の何分?】
【1分もかかってないよ!?】
【完全にバケモノじゃん……】
【無詠唱・無手本・初見でこれは草】
【はい!異世界チート主人公爆誕です!!】
その夜、「異世界美少女が魔法初見で完璧再現してきた件について」という切り抜き動画が日本の配信サイトで100万再生を突破した。
◆
「……というわけで、合格です。しかも、特待生扱いです。おめでとうございます!」
学院の案内係の少女、シルヴィア・エーレンが、あからさまに警戒しながらそう言った。
彼女は銀髪碧眼の澪をじっと見つめる。
「あなた、本当に“素人”なの?」
「ホントに素人ですってば……!」
澪の返答に、シルヴィアは小さくため息をつく。
「嘘でもいいけど……私は認めない。あなたが、私より目立つなんて」
「え、なんで突然ライバル宣言!?」
【あーこれは……ライバル美少女来た!】
【百合の香りがしてきた】
【“私は認めない”って言いつつ仲良くなるやつだこれ】
【ツンデレ最高】
澪の魔法学院生活は、まだ始まったばかり。
ライバルも増え、スカウトも増え、そして何より——
視聴者数も、まだまだ……増えていく。