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第1章:美少女転生と、謎の配信システムのはじまり

 目を覚ますと、そこは見たこともない青空だった。


 白い雲がゆっくりと流れ、風に揺れる草の匂いが鼻先をくすぐる。高く聳える木々の間から差し込む日差しが、まるでスポットライトのように少女の顔を照らしていた。


 ——少女?


「……え?」


 違和感を覚え、彼女——いや、彼は自分の手を見つめた。細くて、白くて、まるで陶器のような肌。指先はスラリとしていて、爪も整っている。見慣れた自分の手とは明らかに違う。


 立ち上がって近くの泉に駆け寄り、水面を覗き込む。


 そこに映ったのは、銀髪で宝石のような蒼い瞳を持つ絶世の美少女だった。


「…………だれ?」


 彼女は呟いた。


 かつての名は「天野あまの みお」。どこにでもいる普通の女子高生。アニメとラノベが大好きで、「異世界転生? いいね~!」なんて笑ってた、ちょっとオタクな女の子だった。


 ……だった、はずなのに。


 何が起きたのか思い出そうとしたその瞬間——


 《システム起動中……》


 突然、頭の中に機械音のような声が響いた。


 《隠密型配信システム、接続完了。配信を開始します》


「……はい?」


 澪は思わず変な声を出してしまった。


 《本システムは、異世界に転生した貴方の様子を、現代世界の配信プラットフォームへ自動配信する非公開型システムです。》


 《ご注意:システムの存在を現地の人間に漏らした場合、罰則として「記憶の初期化」が行われます》


 《それでは、素敵な異世界ライフを——》


「いやいやいやいや!?」


 澪は泉の前で派手にズッコケた。


 配信? 現代? 罰則って何!? 今の説明、ラノベでも読んだことないタイプのやつだぞ!


 パニック状態の彼女を無視して、視界の右上に小さな画面が浮かび上がる。


 配信中の映像だ。


 しかも——視点は彼女の背後からのふんわり美少女アングル。


「いや、カメラどこ!? てかこれ全国ネット!?」


 そして、さらに衝撃の情報が目に飛び込んでくる。


>【新しい子だ!めっちゃ美人!】

>【この衣装、まさか異世界もの!?】

>【ていうかこの子、天然?かわいすぎるんだが】

>【運営マジでどこから連れてきたの?本物の姫じゃん】


 コメントが止まらない。


 いや、視聴者……いるの!?

 配信されてるの、これ!?

 ガチでバズってるっぽいんだけど!!


「……え? これ、消せないの?」


 試しに空中に向かって手を振ったり、ウィンドウを押してみたりしたが、びくともしない。完全に自動配信型らしい。


 ——そう、澪は今や「異世界転生してしまった美少女の、現代配信チャンネル」の主役だった。



 ひとまず現状整理だ。


 身体は完全に別人。しかも超絶美少女。しかも、魔法とかあるっぽい異世界に来ている。


 そして、目に見えないカメラで勝手に撮影され、現代日本のネット上で配信されている。


 つまり、**異世界サバイバル×リアルタイム配信**という、前代未聞の状態。


 「もう……何この状況。誰かツッコんで……」


>【ツッコミたいけど可愛すぎて無理】

>【表情管理ガバガバなのも推せる】

>【ていうか、名前教えてくれない?】

>【飯作って!なんでもいいから!異世界飯希望!】


 コメント欄はもはやお祭り騒ぎである。


 そんな中、澪の視界にまたしても謎のウィンドウが現れる。


 《初回配信ミッション:3時間以内に空腹を解消せよ》

 《報酬:回復ポーション×3、初級魔法書×1》

 《オススメ:森での野草採取or小動物の狩猟》


「え、クエスト? しかもご飯探してこいって……」


 澪は頭を抱えた。


 ——つまり、自力で食料を調達しろと。報酬で魔法がもらえるらしいけど……。


 「……行くしか、ないよね」


 観念して森の奥へと歩き出す澪。後ろには何もないはずなのに、画面は常に彼女の美麗アングルを捉えている。


 そして——


 彼女の異世界生活と秘密配信生活が、静かに幕を開けた。

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