本田所長と
俺は本田紫尾津区所長の指示に従い、深呼吸をしてから声を出してみた。
「ンバアアアアアアアア〜」
所長の高い声に合わせて、俺も同じように声を出そうと試みる。なんとも奇妙な訓練だが、これが俺の身に宿った変な能力をコントロールするための方法らしい。
「いいぞ、孝明くん。その調子だ。もう少し声を高くしてみよう」
俺はさらに高い声を出そうと努力する。
「ンバアアアアアアアア〜」
本田所長は頷きながら微笑んでいる。
「素晴らしい。この訓練を続ければ、君の能力は制御できるようになるだろう」
俺の能力は、どうやら特定の周波数の声を出すことで物体を動かすことができるというものだった。しかし、制御が難しく、意図しないときに発動してしまうことが多かった。
「所長、この能力を完全にコントロールできるようになるまで、どれくらいかかりますか?」
本田所長は少し考えてから答える。
「それは君の努力次第だが、数ヶ月の訓練でかなりの成果が期待できるだろう。ただし、焦らずに一歩一歩進めていくことが大切だ」
俺は頷いた。確かに、この奇妙な能力が完全に制御できるようになるまでには時間がかかるだろう。しかし、本田所長の指導のもとで訓練を続ければ、きっと達成できるはずだ。
「よし、次のステップに進もう。今度は、声を出しながらこのボールを動かしてみよう」
本田所長はテーブルの上に小さなボールを置いた。俺は深呼吸をして、再び声を出した。
「ンバアアアアアアアア〜」
ボールがわずかに動いた。少しだけだが、確かに動いた。
「いいぞ、孝明くん。その調子だ」
俺は自信を持って再び声を出し、ボールを動かすことに集中した。この訓練を続ければ、きっと俺の能力は完全に制御できるようになるはずだ。