【コミカライズ記念SS】過保護な王弟殿下の可愛い妻
コミカライズ配信記念SSです。楽しんでいただけますように♪
ステラの一日は早い。
朝は日が昇ると同時に精霊に祈りを捧げる。
朝の光を浴びて祈るステラからは、普段の幼さが消えて神々しさすら感じる。
『ヒヒン!』
「まあ……ルルード、お祈りが終わったらね?」
『――ヒヒン!』
「……そういえば、あなたが精霊ね? 祭壇に祈るよりも、あなたに祈ったほうがいいのかしら」
ステラは、軽く首を傾げた。
ルルードが彼女の手に鼻先を押し付けた。
精霊に愛される加護を持つ彼女に、ルルードは夢中なのだ。
「ジェラルド様は、どう思われますか?」
「ん? そうだな……私は、もう少しのんびりして、それからルルードと一緒に遊べばいいと思うが」
「子ども扱い……です」
ステラがショックを受けたような顔をした。
ジェラルドとしては、彼女を子ども扱いしたつもりはなかったのだが……。
彼女が幼いころから感じていたことだが、ステラは頑張りすぎてしまう気がある。
精霊に愛される加護のおかげか、風邪を引いたりすることはないようだが……。
――むしろ、倒れたのはジェラルドのほうだ。
二柱の精霊からの加護を受けたせいで寝込んでしまい、看病を受けたのは記憶に新しい。
「ルルード、今日も国民の皆様を健やかに守ってくださいね?」
『ヒヒン!』
あのいななきは、了承したという意味だろう。
十五歳の頃から一緒に過ごしているせいで、ジェラルドにはルルードの気持ちがなんとなくわかるのだ。
ステラは気がついていないようだが、彼女の祈り……というよりもお願いにより、今日も王国は精霊からの加護を与えられることだろう。
平和を守るために戦うしか脳のないジェラルドと違い、ステラはもっと大きな平和を守っているのだ。
――だが、そのことを知るのはジェラルドばかり。
「どうしたのですか? もしかして、また具合が悪い?」
「大丈夫だ」
「ジェラルド様の大丈夫という言葉を聞くたびに、心配になるのはなぜなのかしら?」
「はは、朝食にしようか?」
「――はぐらかされた気がします」
ステラはいつもジェラルドのことを心配している。
彼女が幼い頃から……。
「そういえば……」
「ステラ?」
「私を助けにきてくださる直前に、幼い頃にお渡しした御守りが壊れてしまったそうですね?」
「ああ」
確かに、ステラの危険を知らせるように御守りは壊れてしまった。
いつも身につけていた御守りではあったが、これ以上破損してはいけないと、今は机の引き出しにしまっている。
時々執務の合間に眺めているのだが……。それは、誰にもいえない秘密だ。
特に、バルトになんて知られたら、生涯揶揄われてしまうことだろう。
「ふふ、新しい御守りです!」
「手作り?」
「そうですよ。心を込めて作りました」
ステラが両手の上に御守りを乗せて差し出してきた。
その御守りには本物の宝石が嵌め込まれ、素人が作ったとは思えない出来栄えだ。
「こんなに立派なものを作れるようになって……!」
「――ジェラルド様」
ステラは少しだけムッとしたような表情を浮かべたが……。
「私はもう、大人です。教えて差し上げましょうか?」
「え……」
彼女の唇が頬に触れた。
それは家族が交わすような軽い口付けではあったが……。
多分ジェラルドは頬だけでなく耳まで赤くなっていることだろう。
視線を向ければ、ステラの笑みは今までに見たことがないほど大人びていた……。
「あまり見ないでください」
しかし、ステラは恥ずかしさに耐えられなかったのであろう。
大人びた表情は、すぐに小さな両手で隠されてしまった。




