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銀の鱗と図書室の鍵 4


 ***


 想いが通じ合った……。

 そう思ってよいのだろうか。

 これで、私たちはようやく本当の夫婦になれるに違いない。


 けれど、先ほど見せられたジェラルド様の表情は、忘れられそうにない。

 だからこそ、もうあんな顔をさせないと決意する。そう、ジェラルド様は、私がお守りするのだ。


 それはともかく、私には先ほどから気になってしかたないことがあった。


「それにしても……。どんな二人だったのですか? 可愛いかったでしょうね……。ジェラルド様にも似ていますか!? 男の子と女の子、どちらが上ですか!?」

「はは、質問責めだな……」

「だって、私たちの子どもですよ!? 私だけ見られなかったなんて!」

「……あまり煽るな」

「煽る」

「失言だ、忘れるように」


 優雅にお肉を切り分けて、口に運んでいたジェラルド様が、珍しいことに赤ワインを一気に飲み干した。もしかして、香辛料がかかりすぎていたのだろうか?


「こうなったら、早く二人に会えるように、白い結婚宣言を撤回していただきます!!」

「はあ、ステラ、君は……」

「わかってます! 私、ちゃんと習いました!」

「……何を習った?」


 王太子の婚約者をしていたのだ。もちろん習ったに決まっている。

 ……詳しいことは、よくわからなかったけれど、何とかなるに違いない。


「……聞き捨てならないな? 君は、誰に何を習ったんだ?」

「ジェラルド様?」


 立ち上がったジェラルド様が、なぜか怒ったような笑顔のまま、私に近づいてくる。

 そのまま、長い指先が顎に当てられ、上を向かされる。……なんのご褒美なのだろう。


「頬を赤く染めて。……腹立たしいほど、扇情的だ」

「扇情的」

「そう、それで、誰に何を習ったんだ?」

「……えっと、教育係に」

「教育係ね……。なるほど」


 ジェラルド様が、笑みを深めた。

 あまりに妖艶なその表情に、なぜか背中がゾクゾクして、それなのに頬が熱くなる。


「えっと……」

「それで、何を習った?」


 顎を上げられながら、触れあいそうなほど唇が近づく。……困った。白状すれば、私は実はよくわかっていない。


「あの、つまり、夫婦が一緒に寝て」

「……ああ、それで?」

「すべて万事、旦那様にお任せすれば良いと」


 顎に当てられていた指先が離れていく。どうやらお預けらしい。


「はあ」


 ジェラルド様は、私から離れていった大きな手で、なぜか顔を覆ってしまった。


「あの……」

「すまない。……いや、君はもうしばらく、そのままでいてくれ」

「えっと……?」


 なぜかわからないけれど、ジェラルド様に呆れられてしまったらしい。

 でも、普段であれば、相手に知らないことがあったからといって、呆れるような人ではない。

 これは、よほどのことなのだろう。


「……さあ、そろそろ明日に備えて休もうか。部屋へは、もう戻れるようになったか?」

「……」


 このままでは、もちろんバラバラに眠ることになるに違いない。

 白い結婚の解消の鍵は、夫婦が一緒に寝ることにある。それだけは、間違いない。


「実は、まだ覚えられないのです! 連れて行って下さいませんか?」


 もちろん私は、一芝居打つことにしたのだった。


最後まで、お付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ステラいいぞ〜押せ!押せ!がんばれ〜♡ ジェラルド様が何やってもかっこよくて…ほあぁっとなってしまいます。 [気になる点] ジェラルド様の今回の受け止め度合い。
[良い点] 無自覚に煽ってくるステラと ステラに関しては沸点の低いジェラルド様(^◇^;) どちらも可愛いですね♪
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