04 本番
練習終了、いよいよ本番。
魔導弓の残存魔素量は3割ほどですが、
今日はススケ鳥のみに狙いを絞って、それ以外は狩らないつもり。
えーと、なんだかさっきの魔うさぎに申し訳なくて、今日は他の獲物は自粛……
気を引き締めて、今からは本気モードで狩人します。
ーーー
ススケ鳥、発見。
成体×1、木の枝で休息中。
全力で飛ぶススケ鳥はハンパ無く速いけど、最高速を長時間は維持できません。
全力飛行後は、あんな風に休息が必要。
つまり、今がチャンス。
距離は、さっきの魔うさぎと同じくらい、
魔法矢はノーチャージで、
構えて……狙って……
・ ・ ・ そいっ、
命中!
おっしゃ、しっかりばっちり急所に一撃。
スゴいよ、アリシエラさんっ、
むやみにチャージしなければ、素晴らしく素直な良い弓ですよ、コレ。
本当にありがとうございます、
この大物のススケ鳥は魔導弓開発大成功の証し、ロイさんご家族みんなで味わってくださいね。
さあ、お目当てのススケ鳥は狩れたし、凱旋撤収!
ーーー
えーと、ちょっと寄り道をば。
実は、魔灸の森南部に狩りに行くってアリシエラさんに伝えた際、
お使いを頼まれまして。
この近くにあるケルミシュ村の特産品のきのこ『アグラタケ』だそうです。
なんでも、アリシエラさんの大好物だそうで。
不思議な性質を持つきのこで、特徴は『産地限定食味』でしたっけ。
つまり、特産地の魔灸の森から離れれば離れるほど味が落ちてしまうという、摩訶不思議なきのこ。
『収納』魔法で保存しても駄目、
『転送』で運んでも駄目、
とにかく、この森から離れれば離れるほど美味しくなくなっちゃう、
つまりは、産地近辺完全限定の美味なのだそうです。
で、例によってアリシエラさんの魔導具技師魂がうずいちゃったみたいで。
『まさに"アグラタケ運搬"こそが、魔導具技師への挑戦状にして最後のフロンティア!』
で、アグラタケの味を落とさずに『運搬』可能(予定)な、新開発魔導具を預かってきた次第。
えーと、アリシエラさん、魔導具技師としての最後の挑戦が、きのこ輸送チャレンジでよろしいのですか……
そしてこれが、新型『運搬』魔導具。
その名も『ナマモノ搬送ゲゼルシャフター』
略称『ナマハゲ』
要は、可能な限り鮮度を保つためにアリシエラさんが持てる魔導知識をフルに活用したバッグ型携帯『収納』庫。
簡単に言うと、未だかつてないスッゲェ『収納』バッグ。
せっかくだから、ススケ鳥、これに入れていこうかな。
鮮度抜群ってことみたいだし。