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20 ……比べ


 普段通りの元気を取り戻したアリシエラさんは、テーブルのお料理を口いっぱいに頬張って、元気良くロイさん宅の地下にある秘密の工房へと向かっていきました。


 けんちゃんとアヤさんがにこにこしながら見送っていたのが、とても印象的でした。



「ありがとね、フォリス君」


 いえいえ、ロイさん。


 元気がいちばん、ですよね。



 えーと、ところで、


 屋根の上で元気に鳴いているあの鳥、どうしましょう。



『阿呆』



「何だか狩りっていう雰囲気でもないよね」

「っていうか、あれだけリラックスされちゃうと、食材って感じもしないし」

「まあ、鳥さんの自主性に任せるってことで」


 何だかロイさんらしいです。


 ご家族みんなが自由にのびのび、ここでの暮らしを楽しんでいますよね。



「そう思ってくれると嬉しいよ」

「まあ、時々自由にヤリ過ぎちゃうのが玉にキズ、かな」


 それもロイさんらしいです。


 だって、ロイさん自身、危機管理が間に合わないこと、多々あるでしょ。



「あー、ほら、反面教師も教師のうち、ってね」


 勉強になります。


 今度シュレディーケさんを連れて、ヴァニシアさんにご挨拶に来ますね。



「フォリス君のお宅におじゃまさせても良いけど」


 ごめんなさい、勘弁してください。


 もしヴァニシアさんが、噂の暴走モードになっちゃったら、


 僕とシュレディーケさんだけでは絶対に止められないです。



「確かに」


 ヴァニシアさんがシュレディーケさんの血縁ってことは、僕の親戚にもなっちゃうってことだから、親戚付き合いする上での距離感とか、ちゃんと考えないと。



 えーと、ヴァニシアさんはシュレディーケさんの父方の血縁関係で遠縁。


 ツァイシャ女王様はシュレディーケさんの母方の血縁関係で遠縁。


 つまり、ヴァニシアさんとツァイシャ女王様は、血縁関係ではないご親戚、と。



 何だかちょっとややこしいな。


 ごたごたの原因となったリグラルト王家って、本当に罪深いですよね。



「まあ、結局のところ人間関係で大事なのは、気が合うかどうかってことなんだろうね」

「どうだろう、フォリス君から見て、ヴァニシアとシュレディーケさんって、気が合いそう?」


 あーどうだろ、正直予想もつかないです。


 僕が言えるのは、おふたりとも、よく似てるよねってことだけです。


 どこがとは言えないけど。



「うん、俺もそう思うよ」

「どこがとは言わないけど」

「旦那さまのフォリス君には悪いと思ってるけど、やっぱりつい見比べちゃうんだよね」

「どこがとは言わないけど」


 確かに僕も、目が離せなくなっちゃうくらい見比べちゃいます。


 どこがとは言えないけど。



 そして僕たちふたりとも、背後から迫る気配"柔らかな圧"には気付けなかったのです……



 ふたり仲良くおしおきされることで、ロイさんとの絆がさらに深まった……気がしなくもないのです。


 それにしても、リノアさんの気配消しの業前って、すでに達人狩人クラスじゃないのかな。


 本当に、危機管理って大事ですよね、ロイさん……



 でもさ、ロイさんが見比べるなら、やっぱりリノアさんと、だったんじゃないかな。


 どこがとは言えないけど。



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