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14 信頼


 何だかぐったりしているチュースさんを救出、


 名残惜しそうなイーシャさんに御礼とお別れのご挨拶、


 急ぎエルサニア城を脱出。



 そして、チュースさんのご自宅こと、


 エルサニア大森林にあるサイリさんのお宅へと向かいます。



 もちろん、エルサニア城の目と鼻の先にあるアシュトさん宅の『ゲートルーム』を使えばひとっ飛びなのですが、


 その前にぜひ、チュースさんにお話ししたいことが。



 今回の一件は諸々めでたしめでたしとなったのですが、


 これからのことについて、まだ若干課題が残っているのです。



 まずは、チューリス村について。


 あの村のとびねずみさんたちがいかに賢いとはいえ、チュースさん以外とは意思疎通はできません。


 つまりこのままだと、チュースさんが常駐するとか、そういう形にせざるを得ないのです。



 チュースさんは魔物になったおかげで僕たちと会話できるようになったそうですが、


 普通の動物であるとびねずみさんたちと僕たちとの意思疎通手段、いかに天才アリシエラさんとはいえ構築できるのでしょうか。



『それについては、お任せください』


 チュースさん?



『実は、先日完成した私たちサイズの小型魔導車両には、『転送』機能が装備されているのです』

『サイズの問題で多用は出来ないのですが、私の家とあの村の距離でしたら、毎日2回程度なら『転送』で行き来可能なのですよ』

『皆さんに良くしていただけた以上に、私も微力ながら頑張りたいと思います』


 無理なさらず、みんなと相談しながら、ですよ。


 ロイさんの受け売りですけど。




 名称:『試作型ミニチュアドール用浮遊飛空艇』


 略称:『シミドーフ』



 アリシエラさんの力作は、チュースさんや妖精さんサイズの、超小型の空飛ぶ魔導車両。


 日常生活でも、わりと危険がいっぱいな小さな面々のために、


 緊急避難目的の『転送』機能を標準搭載。



 何せサイズが小さすぎて、内蔵魔素貯蔵具もとても小さい。


 もちろん距離にもよりますが、チュースさんのおっしゃる通り、日に数回の『転送』が精一杯。


 でも、この使用目的なら、緊急避難用途じゃなくても使用許可をいただけますよね、アリシエラさん。


 というわけで、村のコミュニケーション問題はひとまず解決、かな。




 次の課題は、チュースさんご自身について。


 いかに上手くことが運んだとはいえ、


 家主のサイリさんにも、


 恋人のエリスさんにも、


 何もご相談せずに諸々決めちゃったわけで。



 そのせいで家庭に波風立ったら、皆さんに申し訳ないのです、


 いろいろ突っ走っちゃった僕としては。



『そちらも問題ありませんよ』

『確かに私はサイリさんのお宅に居候している身ではありますが、今回の件は、結果的にとても良い就職活動が出来た、と考えております』

『居候の身であればこそ感じていた、無職であることの肩身の狭さ』

『それをこのような素晴らしい形で解決出来たこと、今回御尽力していただいた皆様には、本当に感謝しかありません』

『サイリさんにも、ご家族の皆さんからも、この決断、必ずや祝福していただけると、私は信じております』


『エリスさんは、いつものように私の成した事を信頼してくれることでしょう』

『人造生命体であるエリスさんは、望まれて生み出された素敵なお身体ですが、お話しすることだけは出来ませんでした』

『私と暮らすようになったエリスさんに、生みの親のアリシエラさんが話せるようにしましょうかと言ってくださった時、彼女は首を横に振りました』

『言葉はありませんでしたが、エリスさんの想い、確かに伝わってきました』

『私に全幅の信頼を寄せてくれているエリスさんとは、言葉では伝わらないことすら理解し合える深い繋がりがあると、私は信じております』

『もちろん、私が間違った道に進みそうな時には、真っ直ぐに諌めてくれるでしょう』

『だからこそ、今回の件の私の決断は間違っていないと、エリスさんなら必ずや行動で示してくれると信じています』


『柄にも無く長々と語ってしまいましたが、サイリさんご家族も、エリスさんも、私の事をとても信頼してくれている、ただそれだけ言いたかったのです』

『私は、その信頼に応えるよう、真っ直ぐ行動するのみ、なのです』



 ……なんだろう、泣けてきちゃったよ。


 これぞまさに、大人の男の責任感と、それを貫き通す生き様。



 もう僕なんかがうだうだする必要なんてカケラも無いよ。


 チュースさんを待っているご家族皆さんのいるあの場所へ、真っ直ぐ進みましょう!



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