11 理解
僕たちがワヤワヤしている間に、
チュースさんがお話しをまとめてくださった模様。
チュースさんは王としてではなく、ここにいるとびねずみさんたちのまとめ役として、エルサニア王国側との交渉役を務めることになったようです。
とびねずみさんたちの願いは、この洞穴で静かに暮らすこと。
そのためにチュースさんは、このとびねずみ集落の存続を国に働きかけるのだそうです。
『ここのみんなが飢えることのない程度の食べものさえ確保出来れば、森からの過剰な採取は控えてくれるそうなんです』
『みんなには、この洞穴内で維持できる規模以上には増え過ぎないようにってことも、理解してもらえました』
さすがはチュースさん、見事な落としどころです。
では僕の方からは、イーシャさん、じゃなくて、ツァイシャ女王様に、この件を直接お伝えしてみますね。
もちろん、チュースさんも同席してくれますよね。
『私なんかが女王様と謁見してもよろしいのでしょうか……』
よろしいのですよ、むしろチュースさんの同席は必須なのです。
こういう交渉ごとは、僕なんかよりも大人でインテリなチュースさんの方が適任でしょう。
ただ、謁見の際、チュースさんのお身体が心配なのですが。
『?』
えーと、ツァイシャ女王様って、可愛いモノには目がないのです。
つまり、チュースさんが過剰にモフられまくっちゃうんじゃないかって……
『……お手柔らかに、です』
さて、こんな感じで今回の依頼は一件落着しそうなのですが、
アランさんたちもご一緒しますよね、エルサニア城。
「俺たちは、ここからは別行動って事で良いかな」
「ケルミシュ村のギルドと『有害生物研究所』への報告、出来るだけ早い方が良いと思うんだよね」
「もし別口の討伐班なんかが送られてきちゃったら、悔やんでも悔やみきれないだろうし」
本当に優しいんですね、アランさん。
今回ご一緒できて、奥さまが4人の本当の理由、とてもよく理解できました。
「よしてよ、フォリスさん」
「さっきも言った通り、他力本願なんだよ、俺」
「ツァイシャ女王様のゴージャスなお姿をがっつり拝見したいのは山々なんだけど、とびねずみさんたちの集落の存続うんぬんの真面目な交渉の場には行きたくないってだけなんだから」
はい、そういうことにしておきますね。
ゼシカさんもフルリさんも、お気を付けて。
その、いろいろと。
「お心遣い、痛み入ります」
「フォリス様も、お気を付けて」
「ご夫婦でジオーネへお越し下さる日を、心よりお待ちしております」
そうでした、ゼシカさんたちとは、先日の里帰り挨拶回り以来ごぶさたでしたね。
あの時は駆け足での訪問でしたので、今度はぜひ、ゆっくりゆったりと。
「シュレディーケ姉さまには、フォリスさまのことで言いたいことが山盛りのてんこ盛りなのですっ」
えーと、お手柔らかにね、フルリさん。
「シュレディーケ姉さま絶賛の、狩人さん特製おやつ次第では、善処しちゃうかも、ですっ」
期待してください、ですっ。
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アランさんの素敵なご家族、勉強させていただきました。
特異ではあるけれど、アレも立派ならぶらぶの形。
でも、あの状態にさらに奥さま4人とメイドさんがふたり、加わっちゃうわけで。
まさに、余人には到底真似のできないらぶらぶ案件過積載ご家族、なのです。
『私は、エリスさんおひとりでいっぱいいっぱいです……』
ですよね、チュースさん。
共感していただけて、とてもうれしいです。
さあ、普通な僕たちは、急ぎエルサニア王都を目指しましょうか。




