最初の転移者-2
優愛ちゃんの朝ご飯の提案に、自分もお腹がすいていたので、お互いリュクサックの中からランチパックらしきパンをとりだし、食べ始めた。自分の知っているランチパックよりは幾分おいしかったけど、まだ食べ足りないとおもっていたら、優愛ちゃんが
「リュックサックの中に入っている食料、一日分くらいだね。食べ足りないけど、無くなったら大変だから少しずつ食べないといけないね。」
そう言った。 仮に72時間後にゲートが出てきて元の世界に戻れるとしても、食べ物は足らないと思うので、空腹を我慢するか、この世界で食べ物を手にいれないといけないのかなと思う。そうして、朝ごはんのパン1個を食べ終わったので、リュックサックの中に入っていた旅のしおりを見た。
旅のしおりを開いたら、ようこそラーミア星へと書いてあった後に、右手の腕時計の事が最初に書かれていた。腕時計の液晶に出ている数字は、やはり元の世界に戻るゲートが開くまでの残り時間で、時計が
00:00になると、アラームがなった後に自分の前に元の世界に帰れるゲートが出てくると書いてあった。 また、そのゲートは地球から来た人一人が入るか、だれも入らないまま一時間がたつと消えてしまうと書いてある。そして、地球から来た人間以外はこのゲートを見ることが出来ないらしい。 どうやら、72時間後には元の世界に帰れると書いてあったので少しは安心した。 しかし、その下の行にはこう書かれていた。
自分の目の前にゲートが現れるのはこの一回だけです。 ですので、このゲートに入らなかった人は元の世界に帰りたい場合は、ゲートを発生させるアイテムを入手するか他の人のゲートに入って帰ってきて下さい。
それを読んだ時に、他の人がゲートに入ったら、ゲートを発生させた人は帰れなくなるんじゃないか?と考えたけど、まずは自分が無事に元の世界に帰ることが一番大切なので、気にしないことにした。
次のページには、ラーミア星で手に入れた物は一部の物を除いて持ち帰ることが出来ず、元の世界に戻る時に消滅してしまう事、その一部の持ち帰れる物には王冠のようなマークが刻印されていることが書いてあり、その下にはリュックの中に入っているものの説明があった。
まず、中に入っていた食料、水に関しては賞味期限はありません。いつまでもおいしく食べられますと書いてあった。 次にナイフには、ただナイフとして使う目的の他にナイフの柄のところにボタンが二つ付いていてうえのボタンを押すとナイフが光りあかりとして使用でき、下のボタンを押すとナイフの先端が熱くなるのでライターとして使用もできると書いてあり、試してみると本当に光ったり熱くなったりしたので、かなり有能な道具が入っていてありがたかった。 また、袋に入ったシートは寝たり休む時に使うらしく、高い保温効果があります。と書いてあった 最後に小さな瓶の中身は薬らしくて、赤い瓶は外傷用、水色の瓶は病気の治療用らしかった。 使用量はどちらも小さい傷、病気は4分の1、中くらいの傷、病気は半分、大きな傷、病気は全量と書いてあった。また、赤い瓶の薬は患部に塗り、水色の瓶の薬は飲んで使用すると書いてあった。
そして、ここからは時間がある時に読んでくださいと書いてあったが、パラパラと見たら食べられる木の実とか、燃料に向いている木などが挿絵とともに描いてあったが、ここでしおりのページを閉じ、隣で自分のしおりを読んでいる優愛ちゃんに声をかけた。
「旅のしおり読み終わった?」
「だいたいは読み終わったよ。」
「じゃあ、これからどうするかを話し合ったほうがいいかな?」
「そうだね。」
「まずは、目標は二人とも無事に帰れることが目標でいいですか?」
「賛成でーす」
「その為にどうすればいいと思いますか?」
優愛ちゃんは少し考えた後、
「まずは歩きながら食べ物と水があるところを探すべきだと思います。」
その通りだけど、その前にしおりの中に有用な知識が書いてあったからこれを確認してからでも遅くないと思う。
「歩き始める前に、しおりをよく読んでおいたほうがいいんじゃないのかな。この環境についてあまりにも知らないことが多すぎるのだから」
「確かにそうだね。まずは、しおりをきちんと読んでおこうね。」
こうして、まずは旅のしおりを最後まで読んだのだった。 とりあえず、食べられる木の実と燃料になる気の枝などや、野宿するときに気をつけることが書かれていたのでそれを頭にいれ、リュックサックからナイフを取り出し、何かあったときでも対応できるように左手でもつようにして出発の準備は整ったと思う。 優愛ちゃんも自分のよりおおきなナイフを左手に持ち、リュックサックを背負ってから、
「そろそろ出発しようか」
そう言って、草の丈が短くなっている方向へ向けてお互い歩き始めたのだった。
そうしてしばらく歩いていると、舗装はされていない道が見えてきた。 道にたどり着くまでに、無事に帰るために出会う人とは関わるべきなのか? それとも人から隠れて食べ物などをがんばって集めて72時間をやり過ごすのか?どちらの方がいいのか話をした。優愛ちゃんは人と関わりあって食べ物などを買えたりできたらそちらの方がいいと言っていたけど、自分の考えとしては、こちらの世界の常識も言葉ですら分からない状況のなかで、人を頼るより自分たちだけで時間まで過ごした方が安全だと思う。食べ物が一つも手に入らなくても、お腹はすくけどなんとかなるだろうし無事に地球に帰るのならそちらのほうがリスクは低いと思う。 そう話したら、帰れなくなるのは絶対に嫌だから、人にはあまり関わらないでいこうということで決まった。
こうして道には出たけれど山が見える方に向かうか、それとも平地が続いてる方へ行くかどちらにするか優愛ちゃんに聞いたら、
「平地のほうがいい。」
と言った。 自分もどっちがいいのか分からないけど、歩くのが楽な分だけ平地を進んで行ったほうがいいと思う。そうして道沿いをしばらく歩いていると、遠くから馬らしき動物で荷物を運んでいる人が見えたのだった。
「どうする?かくれる?」
優愛ちゃんは少しそわそわしながら言った。 どうみても地球から転移してきた人ではないだろうから不安なのだろう。 けど、見た限り歩いてくるのは一人だし、怪物などではなく、普通の人間のようだし襲いかかってくることはないと思うし襲いかかってきてもこっちは二人なのでどうにかなるから、話しかけてみようと思い優愛ちゃんに言った。
「優愛ちゃんは少し道から離れてていいよ。僕は前から来る人に話しかけてみる。」
「それなら、私もそばにいるよ」
そう言って僕の後ろで荷馬車が来るのを待ってたら、荷物を積んで運んでいる人が近くまで来たので
「こんにちは」
そう言ったら
「こんにちは」
と返してくれた。どうやら日本語が通じるようだ。 なので、いろいろ話しを聞いて情報収集しようと思い、この先は何があるのかを聞いた。
「少し先に巡礼小屋があるから、そこで休めるし、そこから半日くらい歩けばアローボートの町つくぞ。」
そう答えたので、先にある巡礼小屋がなんなのかを聞いたら、
「巡礼小屋を知らないのか? 服装も見たことのない服装だしおまえたちもしかして遠くから来た者か?」
また分からない単語が出てきた。
「昨日お告げがあっただろう。 もしかするとお告げもしらないか?」
もちろん分からないので知らないですと言うと
「お告げというのはカミル様からのお告げのことだ。 お告げというのは天災だったり、これから起きることをカミル様がすべての人に伝えてくれるものだ。 昨日カミル様からお告げがあり、明日から遠くから来る者がやってくると、そして彼らは知らないことが多いだろうと、なので、かれらに知識を与えてほしいとそして、困っていたら助けてあげてほしいと、それが人々に繁栄をもたらすとおっしゃっていた。」
「見たこともない服装だし、何も知らないようなので遠くから来た者だろうから、聞きたいことがあるのならどんどん聞いてくれ。」
僕は神様も兼任しているらしいカミルに初めて感謝をした。
「では、巡礼小屋とは何ですか?」
「巡礼小屋は各地にある無料で泊まれる宿泊施設だ。 そこで悪さをすると神様から罰が当たると言われているので比較的安全だ。 それに、この先にある巡礼小屋には近くに井戸もあるから水もただで手に入るぞ。」
それと、聞いておきたい事としてお金はどのようなものがあるのかを聞いた。 男の話によると、鉄銭、銅貨、銀貨、金貨、大金貨があり、鉄銭、銅貨、銀貨をそれぞれ見せてくれた。そして、鉄銭10枚で銅貨1枚、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚、金貨10枚で大金貨1枚だと言っていた。 鉄銭1枚が日本円で何円くらいの価値があるのかわからないけど、お金の種類と価値がわかったのはありがたかった。
「いろいろ教えていただきありがとうございます。」
そういって別れようとしたときに、荷物の中から見た感じリンゴのような物を4つ渡してくれた。
「カミル様が助けろといっていたからな。受け取ってくれ。」
「ありがとうございます。」
荷物を運んでいる男はリンゴを渡した後、自分たちが来た方へ去って行った。
男が立ち去った後、優愛ちゃんは僕の近くに来てこう言ってくれた。
「隆行君、すごいね。 いや、ホントすごいよ。 私じゃ絶対にできないよ。 見たことも無い何をしてくるか分からない人に声をかけて、私たちの知りたいことを聞いてくれてしかもリンゴまでもらってくれて。 私、隆行くんと一緒で本当によかったよ。」
そう言ってリンゴを抱えている手を握ってくれた。 今まで生きてきた中でこれほど女の子に褒められたのは生まれて初めてだ。 すごくうれしいような誇らしいような照れくさいようないろんな気持ちが混ざり合った気持ちになり、少し優愛ちゃんの目を背けた感じで
「リンゴを二つずつリュックにいれようか。」
「うん。」
そうして、リンゴをリュックサックに入れて、この先にあると言われた巡礼小屋に歩いて行った。