わがままなプロローグ
俺はいつも通り過ごしていた。
いつもの教室、いつも通りのクラスメイト達。
そんな変わらぬ日常に一陣の嵐が舞い降りた。
ガキの頃はトラブルなんて日常茶飯だった。
でも、いつしか俺はそんなトラブルとは無縁の生活をずっと送っていた。
ずっと何かが抜けていて…。
ずっと何かが足りなくて…。
物足りないといえばそうなのかもしれない。
だが現状に満足していないわけじゃない。
まだ子供だった頃の俺の世界はきっと狭かった。
あの子と一緒にいることが俺にとっての全てだったから…。
でももう、その子は俺の隣にはいない。
代わりに親友と呼んでもいい、そんなやつが出来た。
「おはよーさん、グラウ」
「おはよう!グラウくん」
いつものように軽い調子で挨拶してくる白髪の少年。
元気いっぱいに挨拶してくれる茶目っ気たっぷりな少女。
ほかのクラスメイトも必ず挨拶してくれる。
そんなクラスメイト達に俺はろくに挨拶も返せず、ただふんっと鼻息一つしてそっぽ向くだけだった。
傍から見たら嫌な奴だろう。
それでもクラスメイトの皆は嫌な顔せずに変わらない挨拶をしてくれる。
それがいつもの事だとわかってるように。
何だかんだ俺はここがとても居心地よく思っている。
そうしていつものように授業受けようとしてそれは現れた。
それは突然に、なんの知らせもなく。
突如吹いた風のように。
「グラウー!!!」
あのころの少女が俺の名を呼んで目の前に現れた。
それはまるで、ずっとぬるま湯に浸っていた俺を無理やり引き上げるような…。
そんな感覚だった。
そこからは嵐のように物事は進んでいった。