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第13話 師匠と話そう!

「ギルド長の所に来いと言うが、一体何事なんだ?」


 突然の呼びだしに僕は面食らう。なにかやらかした覚えはないんだが。


「申し訳ありません。理由については私も聞かされていないのです」


 マリーはバツの悪そうな顔をする。どうやら本当に詳しいことは分かっていなさそうだ。


「不安はあるけど、ギルド長から呼ばれたなら行くしかなさそう」


「そうね。行きましょう」


「ああ、確証はないが、僕の予想が正しければ悪いようにはならないと思う」



 ◆❖◇◇❖◆



 ギルド長の執務室は、ギルドの最上階である3階にあった。


「ギルド長、雷光の追放者の方々をお連れしました」


 マリーが木製の扉をノックすると、部屋の中から「入ってくれ」という声が聞こえてくる。


「では私はこれで」


 マリーは扉から離れて立ち尽くしている。あとは勝手に入れということなのだろう。


 僕は扉を開く。その途端、部屋からタバコの匂いが漂ってくる。執務室の壁は本棚となっており、所狭しと皮で装丁された学術書が並べられている。


 そんな部屋の奥に1人のダークエルフが鎮座しながら、パイプをふかしていた。


「ふーっ。久しぶりじゃあないか、レオンの坊や」


「本当にお久しぶりです、マイヤー師匠。いつの間にかここのギルド長に就任していたのですね」


「あんたがここを出て行ってから数ヶ月後くらいかねぇ。前ギルド長だったジンの野郎が急死しちまってねぇ。代わりにあたしが就任したんだよ」


「そうですか、あのジンさんが……」


 僕は少し落ち込む。前ギルド長のジンさんには色々とお世話になったからだ。


「暇な時にでも墓参りに行けばいいさ。それより、今回あんたを呼んだのは昔話をするためじゃないんだよ。少し頼みたいことがあってね。あとなんだい、そのよそよそしい話し方は。昔見たくタメで良いよ」


「分かりま……分かった。それで、頼みたいことだって?」


「ああ、それはともかく、彼女たちは誰なんだい?」


 マイヤーはパイプでミアたちを指さす。


「彼女たちは……僕の教え子みたいなもんだよ」


「ギルド長様、お初にお目にかかりますわ。わたくし、ミア・ランバルドと申します。ランバルド公爵家の3女ですの」


 ミアはバトルドレスの両端を手で持ち上げ、頭を少し下げてお辞儀をする。


「私はエマ・グリーンフェルトです。家督継承権は持ち合わせていませんが、グリーンフェルト男爵家の者です」


「クラリッサ・シュメール。父はフンボルト自由市の議員をしています」


 ミアに続いてエマとクラリッサも簡単に挨拶をする。


「どこの娘たちかと思えば、レオン。まさか貴族や議員の娘とパーティを組んでいるとはねぇ。随分と良い身分じゃないかい」


「まぁ、なんというか、成り行きでこうなっただけだ」


「あの、レオン、ギルド長が師匠ってどういうことなの?」


「額面通りの意味だよ。僕の幼少期に冒険者のノウハウを教えてくれた人なんだよ」


「そんなところさね。まさかあの青臭いガキだった坊やが人を教える立場になるなんてねぇ。ふーっ」


 マイヤー師匠は一服すると、煙を吐く。煙はリング上になって天井へと昇ってゆく。


「おいおい。未だに坊や呼びするのはやめてくれ。もうそんな歳じゃないんだから」


「ふん。312歳の私からしたらあんたなんてまだまだ子供なんだけどねぇ」


「人間の寿命はそんな長くないだろ。それはさておき、なんの用で呼んだんだ?」


「ああ、時間もないし、さっさと本題に入ろうか。あんた、確かペレ砂漠には行ったことあるだろう?」


「もちろん。ここからたいして遠くないしな。懐かしいな。あそこにはアルコールを採取できる魔物、酒精の生息地だから、冒険者ランクの低いときにはよく行ったもんだ」


「そのペレ砂漠で複数の冒険者パーティが行方不明になった。坊やにはペレ砂漠の調査をお願いしたい」


「行方不明? ペレ砂漠にはそこまで危険な魔物はいないはずだろ。寧ろ弱い魔物しか生息してないせいで低ランクの冒険者には人気のスポットなはずだ」


「本来はねぇ。だけどどういうわけか、最近は行方不明者が続出してるんだよ。おまけに、行方不明となった冒険者たちを捜索しにでかけたミスリル級冒険者も行方知れずになっちまってね。レオンの坊やには主に彼らの行方を追って欲しい」


 どさりと、マイヤー師匠は机の上に書類を置く。見ると、そこには行方不明になったと思われる冒険者の情報が記されている。


「冒険者パーティ紅蓮の風が行方不明なのか……」


 そこに記されているミスリル級の冒険者パーティには見覚えがあった。


「知り合い?」


 クラリッサは首を傾げる。


「ああ、何度か一緒にパーティを組んだことがある。熟練パーティである彼らがそう簡単に全滅するとは考えにくいが……。覚悟はしとかないとな」


 僕は目を瞑りながら、紅蓮の風のメンバーたちのことを思いだす。


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