第五十六章 亮太、テロリスト残党に気付く
ある日、亮太は総理大臣に呼び出されました。
「陽子さん、今回のような危険な任務は、今後も発生する可能性があります。警視総監とも相談して、今後、陽子さんに、銃の携帯を許可する事にしました。今から警視庁捜査一課長を訪問して、銃の扱いについての説明と、射撃訓練を受けて下さい。銃の携帯が可能かどうか、一課長が判断します。」と指示されました。
その結果、銃の携帯が許可されました。
銃を盗難などされると、大変な事になる為、職場には警察のような、銃の保管場所がなく、金庫も開けられるのは、亮太だけではないので、休日も常時携帯していました。
泉が、亮太が銃の取り扱いに、神経質になっている事に気付いて、今まで、よく発砲していると聞いた、京都府警の広美に相談しました。
広美は、「そうですか。初めて銃を持てば、責任感が強い人ほど、神経質になるものよ。そう考えると、陽子さんは、責任感が強いのね。そんな人ほど、いざとなれば、銃を使用してもいいのかどうか、迷うものよ。それでは、私から一言だけ伝えておきます。銃を使用するのは、人命を守る時だけです。銃を使用しなければ、人命が失われる時だけであって、強盗犯などを威嚇する為には、決して使用してはいけません。」と参考意見を伝えました。
その後広美は、「それと、陽子さんに伝えて頂きたいのですが、先日京都で逮捕した、テロリストの春やっこが潜入する為に、熱海で芸者の修業をしていた事が判明しました。先日押収した資料の中に、熱海の事は記述されていませんでした。熱海に、テロリストの基地がある可能性があり、熱海警察署に依頼して、調べて頂いていますので、お耳に入れておきます。」と伝えました。
泉は、広美からの伝言を、亮太に伝えて、「広美さんは、京都府警の刑事なので、熱海の事件に、表立って動けない為に、娘の愛美さんの事が心配なのではないかしら。探偵の時のように、亮太に助けて貰いたいと、この件を亮太に伝えたような気がするわ。」と伝えました。
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亮太は愛美に連絡して、「愛美ちゃん、先日京都で逮捕した芸者が、熱海で修業していたらしいわ。熱海にテロリストが潜伏している可能性があると、お母さんが心配していたけれども、大丈夫か?」と確認しました。
愛美は、「可能性じゃなく、間違いなく、テロリストは熱海にいるわ。先日熱海で検挙した、拳銃取引の相手は、テロリストだったわ。拳銃を売ろうとしていた花田組も、警察がくれば、マシンガンで警察官数名を射殺した事に驚いていたわ。」とテロリストが熱海にいると伝えました。
亮太は、マシンガンやライフルなどではなく、拳銃を大量に入手しようとしていた事から考えて、近距離から要人を襲う可能性があると考えていました。
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その日帰宅した亮太は、「お父様、可能であれば、明日から、防弾チョッキを着用して頂けませんか?お父様以外にも、各大臣など、要人にも着用お願いしたいのですが、可能ですか?」と確認しました。
政男が、「陽子さん、テロリスト達は、壊滅したのではないのですか?」と不思議そうでした。
亮太は、「いいえ、残党がいる可能性があります。私が京都基地に、警察と踏み込んだ時には、パソコンなどの記憶媒体は、全て破壊されていて、紙の資料を燃やそうとしていました。紙の資料の殆どは、回収できましたが、一部燃やされた資料がありました。その燃やされた資料に、熱海の事が記述されていた可能性があります。芸者として潜入していたテロリストも、熱海で芸者の修業をしていた事が判明しました。今調査中ですが、熱海にテロリストの基地が残っている可能性があります。彼らは、近距離用の銃を、大量に入手しようとしていました。お父様、国会議事堂や総理官邸などに、掃除のおばちゃんなどの部外者を入れる時に、厳しくチェックするように指示して下さい。お兄様やお姉様も、巻き添えで射殺される可能性がありますので、充分注意して下さい。」と警告しました。
治子は、「陽子さん、怖い事言わないでよ。でもニュースで、テロリストは、完全に壊滅したと報道していたわよ。」と疑問に感じていました。
亮太は、「それは、国民を安心させて、パニックを防ぐ為です。パニックになれば、その騒ぎに紛れて、いくらでも暗殺するチャンスがあるわよ。」と油断しないように警告しました。
政男が、「でも、要人暗殺捜査本部は、解散したと聞いたよ。」とまだ亮太の指摘が、信用できない様子でした。
亮太が、「狙撃者も特定できない捜査本部と私と、どちらを信用するの?私は、お父様を守りたいだけよ。」とテロリストに警戒している様子でした。
秋山総理大臣は、「治子も政男も、私を殺すつもりか!陽子さんの指摘については、対応します。」と亮太を信頼している様子でした。
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翌日、秋山総理大臣の指示で、大臣などの要人には、防弾チョッキを着用する事になり、業者の出入りも、厳しくチェックする事になりました。
マスコミは、ボディーチェックまでされたのは、どういう事なのか、各大臣にインタビューしていました。
秋山総理大臣は、「テロリストの基地を数か所壊滅させて、油断しています。もし、残党がいれば、危険です。あくまでも念の為です。」とマスコミに答えていました。
奥山財務大臣が、「私の知り合いが、解散した要人暗殺捜査本部に所属していて、テロリストは完全に壊滅したので、解散したと聞いた。総理大臣の第三秘書かなにか知らないが、偶然、狙撃者を特定できて、天狗になっているのではないのか?人騒がせな女だな!娘の事しか信じない、あんな人物に、総理大臣を任せても、大丈夫か?」と批判していると、突然、暴走車が突っ込んできて、後部座席から、銃を数発発砲して、逃走しました。
奥山財務大臣は、防弾チョッキを着用していなかった為に、心臓には命中しませんでしたが、銃弾が肺を貫通して、呼吸ができない!と大量喀血しながら、亮太の事を信用しなかった事を後悔して、死を覚悟しながら、その場に倒れました。
救急車で搬送されましたが、出血多量で意識不明の重体でした。
近くにいた、他の政治家は、防弾チョッキを着用していた為に、軽傷でした。
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秋山総理大臣は、奥山財務大臣のインタビューを見て、「私が、防弾チョッキを着用するように警告しても、私の秘書が、天狗になっているだなんていいながら、信用しないから、こんな事になるんだ。私の秘書が、テロリストは壊滅していないと判断したのは、それだけの理由があるからだ。決して勘などではない。」とマスコミにコメントしました。
その後、秋山総理大臣は警視総監に、「天狗になっているだなんていいながら、私の秘書の調査を信用しなかった刑事は、先日、狙撃者の事を信用しなかった刑事か!どこが優秀な刑事だ!その刑事のミスで、要人が二人も死にかけたじゃないか!何度失敗したら、気が済むんだ!左遷したのに、反省が足りない!そんな刑事に、捜査は任せられない。交番巡査に格下げして、一からやり直させろ!それに不服なら、解雇しろ!」と奥山財務大臣が重傷を負い、激怒していました。
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マスコミは、「救いの女神さまの警告を無視した、奥山財務大臣に、女神さまの天罰が下る。」とテロリストは壊滅していないと報道しました。
秋山総理大臣は、帰宅後、亮太に、「私の力不足で、奥山財務大臣に、防弾チョッキを着用させられなくて、折角の陽子さんの警告を、無駄にしてしまいました。しかし、この一件で、私に従っていれば、間違いないと、私の支持率も上昇している。陽子さん、今後も色々と助けて下さい。」と亮太を頼りにしている様子でした。
治子も、「本当に、陽子さんの指摘通りだったわ。あの時、私も近くにいて、テロリストの銃弾が、私の横を掠めて、腰を抜かしたわ。暫く立てなかったのよ。陽子さんの警告通り、注意していたので、暴走車に気付いて、咄嗟に避けたので、助かったわ。そうでなければ、陽子さんの指摘通り、巻き添えで、死んでいたかもしれないわ。」と亮太に感謝していました。
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翌日、愛美から電話があり、「テロリストの基地を発見して、壊滅させましたが、機動隊と警官隊が到着するまで、張り込みしていた刑事によると、車に三人乗り込み、基地を出たそうです。調査すると、一号線を西に向かっている事が判明しました。どこか西の方で、大臣の講演などの予定はないですか?」と確認しました。
亮太は、「ちょっと待ってね。」とパソコンで確認していました。
その後亮太は、「愛美ちゃん、浜松で、森岡環境大臣が、明日、講演予定です。」と返答しました。
亮太は、森岡環境大臣に事情を説明して、講演を中止にできないか確認しました。
森岡環境大臣は、「テロに屈したくない。講演は予定通りだ。警察の護衛を信頼している。」と講演は変更したくない様子でした。
亮太は、隆一に事情を説明して、移動も含めて、対応するように依頼しました。
隆一は、「先ほど、熱海警察署から、警視庁に正式に依頼があり、浜松警察署と協力して、護衛する事になりました。」と亮太を安心させました。
森岡環境大臣に依頼して、移動は防弾ガラスの車で移動して頂き、講演場所を狙撃可能な場所には、警察官数名を配置して、万全の態勢で臨みましたが、講演を聞きに来る客に紛れている可能性もあり、講演場所にも、警察官数名配置していました。
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亮太は、以前逮捕した狙撃者がCAだった為に、司会の女子アナウンサー、高坂秀美に注目していて、いざという時には、いつでも銃を発砲可能な体制でいました。
秀美が、講演の主旨などを説明して、「それでは、森岡環境大臣、お願いします。」と紹介して、森岡環境大臣が、壇上にいる秀美に近づいた瞬間、秀美が右手を懐に入れました。
亮太は、「まさか!」と焦って銃を取り出したと同時に、秀美が、「死ね!」と銃を森岡環境大臣に向けました。
森岡環境大臣は、腰を抜かして、護衛の警察官達は、えっ!?まさか、阻止できないと焦った瞬間、亮太が、銃で秀美の肩を撃ちぬき、秀美が倒れると同時に引き金を引き、弾丸は天井の照明に命中して、落下した破片で、数名軽傷を負いましたが、暗殺は阻止できました。
仲間のテロリストが、同時に飛びだしましたが、護衛の警察官に、秀美ともども逮捕されました。
森岡環境大臣は、腰を抜かしましたが、少し落ち着くと、亮太に感謝していました。
この講演には、マスコミも来ていて、テロリスト逮捕の一部始終を撮影していて、何度も、テレビニュースで流れていました。
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講演も無事に終わり、帰宅した亮太に秋山総理大臣は、「陽子さんに、銃を携帯させたのは、正解でした。暗殺を阻止して頂いて、ありがとう。」と亮太に感謝していました。
治子は、「何故、あんな近くにいたの?最初から、彼女が怪しいと思っていたの?」と不思議そうでした。
亮太は、「怪しい人物は、警察がマークしていた。テロリストが大量に入手しようとしていたのは、近距離用の銃でしたので、既に数丁入手している可能性を考えて、私は怪しくない人物で、森岡環境大臣に接近しても、不信ではない人物を警戒していた。先日逮捕した狙撃者は、美人CAだったわ。だから、司会者は美人女子アナウンサーだったので、彼女に警戒していたら、ビンゴだったわ。彼女に飛びかかっても、間に合わないと判断して、彼女を銃で撃った。」と説明しました。
次回投稿予定日は、11月1日を予定しています。