第五十三章 亮太、テロリストに気付く
世界各国で、要人が暗殺される事件が多発していた為に、日本でも警戒していました。
テロリストは、指導者を暗殺して、全世界を混乱に陥れて、その間に、何かを企んでいると推測されました。
各大臣や総理大臣には、警視庁の護衛が付いていました。
厳重な警備の中、板谷防衛庁長官が、狙撃され、亡くなりました。
警察が護衛していたにも関わらず、暗殺された為に、世間から非難されていました。
堪りかねた警察は、優秀な刑事を集めて、特別捜査本部を組織して、対応する事にしました。
世界各国の警察が捜査していましたが、亮太も、身の危険を感じた、秋山総理大臣の密命を受けて、捜査していました。
警察の捜査情報は、秋山総理大臣を通じて入手して、それを参考にして、色々と調べていました。
同じライフルを使用している為に、世界中飛び回っていると判断して、航空機の搭乗名簿や、プライベートジェットまで、徹底的に捜査していましたが、犯人の手掛かりは、掴めませんでした。
搭乗名簿から手掛かりが掴めないのは、偽名を使用した可能性があるとして、空港の防犯カメラなどを、徹底的に解析しましたが、やはり、手がかりは掴めませんでした。
世界中飛び回っているので、資金面で、大金が動いたと判断して、その線でも、徹底的に捜査しましたが、矢張り、手がかりは、掴めませんでした。
警察を混乱させる為に、同一人物の犯行に見せかけて、ライフルのみを密輸した、複数犯の可能性も視野に入れて、徹底的に捜査しましたが、やはり有力な手掛かりは、ありませんでした。
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そんな中、秋山総理大臣が、ヨーロッパ数カ国を訪問する事になり、亮太も護衛として、同行する事になり、秋山総理大臣の側近として、同室にしました。
出発前に、自宅で警備の打ち合わせをしていました。
幸枝が、「あなた、今回の訪問は、中止にできないの？」と心配している様子でした。
秋山総理大臣は、「暗殺は、日本でも発生しています。どこにいても危険です。」と今回の訪問を、中止する気はない様子でした。
幸枝が、「宿泊ホテルでは、寝室は同じにしても、着替えなどの事を考えると、目隠し板のようなものがあるのでしょう？」と生活の様子を確認していました。
亮太は、「それだと、別室と同じじゃないですか。私の視界には、必ずお父様が入るように、目隠し板は考えていませんが、お父様、大丈夫ですよね。」と確認しました。
幸枝は、「陽子さんこそ、男性の前で着替えるのは、大丈夫ですか？」と心配していました。
亮太は、「私は、体こそ女ですが、男のつもりです。だから、泉とも同居しているんだ。」と問題ないと考えていました。
秋山総理大臣は、「女性の体といっても、すみれの体だ。幸枝、何を心配しているのだ。」と信用されてないようで、不愉快そうでした。
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幸枝は、「わかったわよ。寝室は同室でも、まさか、入浴は一人で入るので、別々ですよね。」と確認しました。
亮太は、「それだと、私が入浴している間、お父様から目を離す事になります。ご迷惑でなければ、私は、お父様と一緒に入浴してもいいですよ。」と総理大臣から、少しでも目を離したくない様子でした。
泉が、「えっ？ホテルの風呂って、そんなに大きくなかったわよね？一人用ではないの？」と不思議そうでした。
亮太は、「泉、何を考えているんだ？俺達庶民が泊まる部屋と、総理大臣が泊まる部屋は違うよ。特別室だろう。きっと風呂も大きいよ。」と泉を安心させました。
治子は、「陽子さん、そこまで神経質にならなくても、大丈夫ではないの？警察も護衛として、同行しているのでしょう？」と亮太の様子が、異様に感じている様子でした。
亮太は、「先日、日本国内でも、警察の厳重な警備の中、防衛庁長官が暗殺されています。私は、お父様を守りたいだけです。」と緊張している様子でした。
秋山総理大臣は、「治子、お前、俺を殺す気か！警察の護衛だけでは、安心できない。陽子さんが、横に居るだけで、私の心は休まるよ。」と亮太を信頼している様子でした。
幸枝が、「あなた、陽子さんは他人でも、体はすみれの体ですよ。入浴時、ジロジロ見たり、変な事したりしないでね。」と睨みました。
秋山総理大臣は、「だから、心配しなくても大丈夫だといっているだろう。」と不愉快そうでも、どことなく嬉しそうでした。
泉が、「亮太、二人で入浴している時に襲われたら、どうするのよ。素っ裸で争うの？」と心配していました。
亮太は、「そういう事になるわね。二～三日だと、私が入浴しない選択肢もあるが、二週間の予定だ。二週間も入浴しないわけにはいかないだろう。」と入浴は必要だと考えていました。
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泉は、「亮太の事だから、そういうと思って、私も色々と考えました。柔道選手を引退した、翔子さんに依頼すればどうかしら。勿論、翔子さんは、別室よ。帽子とサングラスで顔を隠すように依頼して、亮太の右腕だとでも説明して。亮太が入浴する時だけ、護衛を翔子さんに依頼すればどうですか？」と提案しました。
亮太は、「翔子はダメよ。柔道選手は、相手が一人で、それも、隠れて襲ってこないわ。柔道の試合とは、全く異なるのよ。それに、柔道の試合では、今も、私に全く敵わないのよ。柔道の試合はできても、護衛は無理よ。」と泉の提案を否定しました。
泉は、「そうか、強ければいいというものでもないのね。」と亮太の指摘を、納得していました。
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マスコミが、「各種難事件を解決してきた、秋山総理大臣直属の第三秘書であるお嬢様が、側近として同行します。親子なので、同室にして、護衛されます。」と報道するなか、亮太は秋山総理大臣と出発しました。
やがて、総理大臣の訪問も無事に終わり、日本に戻って来ました。
空港で、子どもが転倒して泣いていると、優しそうなＣＡが駆け寄り、子どもを助けていました。
亮太は、さすがＣＡさんは、優しいなと思いましたが、秋山総理大臣から離れられないので、声かけはしませんでしたが、何か閃いた様子でした。
亮太は、総理大臣護衛の任務終了後、要人暗殺事件の捜査に戻りました。
亮太は、各航空会社のパイロットやＣＡの、勤務状況を調べて、暗殺が発生した日時と比較して、容疑者を、大日本航空会社のＣＡ、吉山房子に特定すると、先日空港で見かけた、優しいＣＡだったので、信じられませんでした。
念の為に、房子の事を、秘書に調べさせると、学生時代、射撃部に所属していた為に、まさかとは思いましたが、房子が日本に滞在している時に、秘書に尾行させていました。
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そんなある日、房子が、帽子とサングラスとマスクで顔を隠して、ゴルフバッグを持って外出したと、秘書から報告を受けました。
亮太は、今から誰かを暗殺すると直感して、房子の元に向かいました。
房子を尾行中、亮太は、要人暗殺捜査本部に事情を説明して、応援要請しましたが、ゴルフにでも行くのだろうと相手にされませんでした。
捜査本部の刑事は、「総理大臣直属の第三秘書といっても、たかが探偵あがりの素人だろう。俺達専門家が捜査しても、容疑者すら浮かんでこないのに、素人に、容疑者が特定できないだろう。偶々、ゴルフバッグを持っている人を見かけて、ライフルだと考えるのは、短絡的だろう。ゴルフバッグを持っている人は何人いると思うのだ！お嬢様の火遊びに、付き合っていられない。」と、そんなの時間の無駄だと考えていたようでした。
房子は、大日本ビルの屋上から、船川副総理の講演場所を、ライフルで狙って、狙撃の準備をしていました。
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亮太は、隆一に電話で説明して、至急対応するように依頼しました。
隆一は上司に報告して、「要人暗殺捜査本部に伝えたそうですが、自分たちの捜査が正しいとプライドが高く、信じて頂けなかったそうです。」と補足説明しました。
上司は、「もう、ライフルを構えて、狙撃の準備をしているのか？確かに、総理大臣直属の第三秘書は、探偵あがりかもしれないが、今までの実績から考えて、充分信頼できる情報だ。我々捜査一課で対応するしかないだろう。」と手柄をたてるチャンスだと、捜査一課で対応するように、指示しました。
隆一は、警官隊と急行しました。
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房子は、人の気配に気付いて確認すると、警察だったので、やけくそになり、ライフルを乱射していました。
亮太は、「房子さん、先日空港で、転倒した子どもを助けていた、優しいあなたが、何故こんな事をしているの？」と落ち着くように声をかけました。
房子は、「何故、私の事を知っているの？」と正体がばれてないと思っていたので、確認しました。
亮太は、「私は、総理大臣直属の第三秘書の秋山陽子です。容疑者をあなたに絞って、尾行していたのよ。気付かなかった？もう逃げ道はないわよ。諦めなさい。」と抵抗は無駄だと促しました。
房子は、「五月蠅い！私の父は、ジャーナリストだったわ。それで海外でテロリストに殺害されたのよ。世間からは、そんな場所にいくからだと批判されたわ。何故テロリストではなく、被害者が批判されるの？だったら、私もテロリストになるわ。」と自分の思いを、ぶちまけて、ビルから飛び降り自殺しようとしました。
亮太は、「そんな事をしたら、航空会社に迷惑がかかるわよ。」と止めました。
房子は、「会社は関係ないわ。」と聞く耳持ちませんでした。
亮太は、「それを、あなたが証言しない限り、職場も狙撃の一味だと疑われて、徹底的に捜査されるわよ。特に、房子さんと仲が良かったＣＡは、疑われるわね。あなたが警察で証言すれば、少しは和らぐと思うわよ。」と投降するように説得しました。
房子は、「そんな言葉に惑わされないわ。」と飛び降り自殺しようとしたので、止められないと判断した隆一が、銃で房子の足を撃ち、柵を乗り越えられないようにしました。
隆一は、房子を銃刀法違反の現行犯で逮捕しました。
鑑識が、房子の持っていたライフルを調べると、これまでの、要人暗殺に使用されたライフルだと断定した為に、これまでの暗殺は、房子の仕業だと断定しました。
次回投稿予定日は、１０月１９日を予定しています。
