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第五十一章 政男の婚約者はシンデレラ

栄子は、「昨日、話を聞いたわ。近い日に、彼氏の親兄弟を紹介してくれるそうよ。」と近況を説明しました。

亮太は、栄子の同級生を見ながら、雑談していると、政男が彼女に声をかけて、公園に連れてきました。

政男は、「彼女は、私の妹の陽子です。陽子さん、彼女は、今付き合っている、下田聡子さんです。今晩、家に招待しています。家族に紹介するつもりだが、先に陽子さんに紹介しておくよ。こちらは、陽子さんと同居している泉さんです。」と亮太に、彼女を紹介しました。

聡子は、妹を呼び捨てではなく、なぜ、陽子さんと呼ぶのだろう?と違和感を覚えましたが、深く考えませんでした。

亮太は、「世間は狭いものね。栄子さんの独身の同級生と付き合っている男性が、お兄様だったとは、驚きました。それでは、若様、今晩楽しみにしています。」と笑っていました。

聡子は、「若様って何?」と意味不明でした。

政男は、「陽子さん、余計な事は、言わないで下さい。聡子さん、それは、今晩、家族を紹介してから、説明するよ。」と焦っている様子でした。

    **********

聡子は自宅に帰って、田舎の両親に電話で、今晩彼氏の親兄弟に会うと報告しました。

田舎の両親は、「親兄弟を紹介するのは、その男性も、聡子の事を、遊びではなく、真剣に考えているようですね。」と安心していました。

その日の夕方、聡子は政男の自宅に招待され、すごい豪邸でしたので、言葉を失いました。

政男は、「聡子さん、どうしましたか?入って下さい。」と玄関を開けて、聡子を自宅に案内しました。

玄関から入ると、お手伝いさんが、「お帰りなさい、お坊ちゃま。」と出迎えました。

聡子は戸惑いながら、家に入ると、幸枝と治子を紹介されました。

亮太と泉も加わり、雑談していると、秋山総理大臣が帰ってきました。

    **********

政男は、「聡子さん、紹介するよ。私の父です。こちらは、私が結婚を考えている、下田聡子さんです。」と紹介しました。

聡子は、政男の父親が、総理大臣だと知り、驚いて、「秋山総理大臣、私とは、つり合いが取れないわ・・・この話は、なかった事にして下さい。」と帰ろうとしていました。

亮太が止めて、「そういう控えめな所が、お兄さんの心を射止めたのですね。」と納得していました。

泉が、「誰かさんと正反対ね。」と亮太を見て、笑っていました。

亮太が、「うるせえな、馬鹿!」と不愉快そうでした。

泉は、「陽子ちゃん、総理大臣のお嬢様なのだから、もっとお淑やかにね。それから、お兄様、聡子さんの表面しか見えてないのではないですか?聡子さんは、今、シンデレラのように、いつも辛い思いをしていますよ。素敵な王子様のように、助けてあげてね。」と指摘しました。

亮太は、「泉、やけに詳しいな。」と不思議そうでした。

泉は、「お母様が、先日偶然に、お兄様と聡子さんが、親しくしている様子を見かけて、お兄様を心配したお母様から頼まれて、秘書に調べさせました。」と説明しました。

聡子が帰ると、秋山総理大臣は、「泉さん、先程の話ですが、聡子さんは、どのような女性ですか?」と秋山家の嫁として、相応しいか、確認しようとしている様子でした。

泉は、「正義感の強い女性で、清廉潔白を要求される政治家の妻として、申し分のない女性です。それで、煙たがられて、虐められる事もあるようです。美人で控え目な彼女は、反撃せずに、いつも泣いています。お兄様、素敵な王子様の出番ですよ。」と説明しました。

    **********

その日、自宅マンションに帰宅した聡子は、両親に慌てて電話しました。

母親は、「どうだった聡子、彼の親兄弟は。」と確認しました。

聡子は、「どうもこうもないわよ。私とは、つり合いが取れないから、断るわ。」と報告しました。

母親は、「つり合いが取れないって、どういう事よ。必要なら、私がお父さんと、相手の親に会うわよ。」と何か問題があったのかと心配していました。

聡子は、「政男さんの父親は、総理大臣だったわ。すごい豪邸に住んでいて、お手伝いさんも、数人いるのよ。とてもじゃないけれども、私とは、つり合いが取れないわ。」と政男とは、別れるつもりのようでした。

母親は、「相手の男性は、政男さんというの?親兄弟を、聡子に紹介したのは、聡子を嫁として迎えたいのではないの?遠慮する事はないわよ。玉の輿じゃないの。お父さんに報告して、近いうちに、挨拶に行くわ。」と娘の幸せを、考えている様子でした。

聡子は、「ちょっと考えさせて。」と政治家の妻になる、心の準備が、できてない様子でした。

    **********

翌日、政男は、泉の指摘が気になり、朝食後、出掛けようとしていました。

治子が、「兄さん、今日は休みだったのではないの?」と何処に行くのだろう?と考えていました。

政男は、「昨日の、泉さんの指摘が気になり、聡子の様子を見てくるよ。」と泉の指摘が、気になっている様子でした。

朝一番から、政男は隠れて、聡子の様子を窺っていました。

聡子がゴミを出していると、同じマンションの住民もゴミを出していました。

聡子は、「今日は、燃えるゴミの日で、燃えないゴミは、明日出して頂けませんか?見た所、分別もできてないようですね。」と忠告していました。

その住民は、「お前は、いつもいつも五月蠅いな!ゴミなんて、いつ出しても関係ないだろう!その日にでたゴミは、その日に捨てないと、不潔だろう。捨てるゴミの分別を何故しなければいけないのよ。」と反論していました。

その声を聞いて、別の住民もゴミを持って出てきて、「本当に、お前は五月蠅いな!」と、持ってきたゴミで、聡子の頭を殴り、再度殴ろうとした腕を、政男が掴んで、「君達は、何しているのだ?今のは、どう見ても、君達が悪いだろう。」と聡子を助けました。

    **********

その住民達は、女二人で、「部外者が口出しするな!」と政男に襲いかかって来ました。

政男は避けて、「聡子さん、君を、こんなマンションに、置いておけない。私の所に来て下さい。」と聡子の身の回りのものだけ持って、政男は聡子を連れて行こうとしていました。

住民達は、「あんた、何者や!誘拐じゃないか!」と抵抗していました。

政男は、「私は、聡子さんの婚約者です。このマンションの調査をさせます。」とその住民達を睨んでいました。

住民達は、「マンションの調査する?お前何者や!」と政男に襲いかかってきました。

そこへ、様子を見に来た亮太が飛び出して、「ここは、私が押さえるから、お兄さん、聡子さんと早く行って。」と政男と聡子を助けました。

二人が逃げた事を確認すると、亮太は、「お兄さんが、このマンションを調べると言っていたでしょう?覚悟しておくのね。」と睨んで、亮太もその場を去りました。

    **********

聡子を連れて帰った政男は、事情を幸枝に説明して、「聡子さんを、あんなマンションに住まわせられない。今日から、ここで生活して下さい。」と聡子を守ろうとしていました。

聡子は、「政男さんと私とでは、つり合いがとれないわ。この話は、断らせて下さい。」と政男との結婚を、諦めようとしていました。

政男は、「先日も、同じような事を言っていましたが、つり合いなんて、関係ない。私は、聡子さんと結婚したいんだ。」とアタックしました。

その時、聡子の携帯に、着信がありました。

確認すると、聡子の母からでした。

聡子が電話にでると、「聡子、固定電話に電話しても出ないので、携帯に電話しました。外出しているの?」と確認しました。

聡子は事情を説明して、「今、政男さんの自宅です。」と外出先を告げました。

母は、「政男さんに電話替わって。」と政男に挨拶しようとしていました。

政男は、「秋山政男です。お嬢様を、秋山家の嫁として迎えたいのですが、許可して頂けませんか?」と母にアタックしました。

母は、「勿論喜んで。娘は、警察官の父に似て、昔から正義感が強く、それが原因で、よく虐められていました。先程のマンションのゴミの件も、それです。聡子の事を、お願いします。お父さんと相談して、近々に挨拶に伺います。」と玉の輿に喜んでいました。

    **********

電話を終えると、治子が、「聡子さんの部屋は、どうするの?荷物もあるようだし、兄さん、勢いで連れて来たのはいいけれども、後の事を考えてよ。」と政男は軽薄だと忠告しました。

政男は、「空き部屋が数室あるじゃないか。そこにすればいいじゃないか。」と何故部屋の心配をしているのか、不思議そうでした。

治子は、「部屋だけあれば、いいわけないでしょう?ベッドや布団もないのよ。掃除もできてないのよ。カーテンも破れているし、電灯も切れているわよ。急には無理でしょう?」と問題点を指摘しました。

政男は、「女性だし、治子と同室はどうや?」と提案しました。

治子は、政男の予想外な提案に、戸惑っていました。

亮太が、「兄さん、姉さんも困っているじゃないですか。兄さんの婚約者だから、兄さんと同室にすればいいじゃないの。」と政男の提案を否定しました。

幸枝が、「そうね。政男が連れてきたのだから、責任とりなさいよ。聡子さん、政男と同室でいいわね。それと啓子さん、今日の昼食から、聡子さんの食事もお願いします。」と決めてしまいました。

聡子と自室に戻った政男は、「ごめん、僕は床で寝るから、聡子さん、ベッドで寝て下さい。」と戸惑っていました。

その日は、聡子の引っ越しなど、今後の事を相談していました。

翌朝、政男は、「今日は、私は仕事にでます。啓子さん、聡子さんは、この家の事が、まだわかっていません。よろしくお願いします。聡子さん、彼女は、お手伝いさんの取りまとめをしているので、この家の事で、わからない事があれば、彼女に聞いて下さい。啓子さん、今日は、聡子さんに引っ越しして頂きます。十時に、私の秘書二人が、トラックでマンションにきます。今後、食事などもお願いします。昨日の事もありますので、陽子さん、聡子に同行して頂けませんか?聡子さん、陽子さんは、格闘技の達人だから、昨日のように襲われても、安心です。」と聡子を守ろうとしていました。

    **********

政男は、出勤後、聡子が住んでいたマンションの、抜き打ち監査の手配を、父に相談していました。

秋山総理大臣は、「聡子さんは、秋山家の嫁として、素晴らしい女性です。私にも、聡子さんを守る義務がある。」と政男に協力的でした。

結局調査は、総理大臣の名前で、抜き打ち監査を実施する事になりました。

マンションでは、抜き打ち監査に戸惑っていました。

そこへ、引っ越しの為に訪れた聡子に、住民達は、「お前か!チクッたな。と襲いかかってきましたが、亮太が撃退しました。

監査員のリーダーは、「秋山総理大臣の指示です。」と説明しました。

住民達は、「何で、総理大臣がでてくるのよ。」と意味不明でした。

亮太は、「聡子さんの婚約者の政男さんは、秋山総理大臣直属の第一秘書で、長男です。殴りかかったでしょう?喧嘩売った相手が、悪かったと諦めるのね。私は、政男さんの指示で、格闘技の経験がある私が、聡子さんの護衛をしています。聡子さんは、秋山家の嫁として、総理大臣も認めています。監査結果に不服なら、マンションを取り壊すと激怒しているわよ。」と諦めるように、促しました。

住民の1人が、「そういえば、以前、指名手配中の殺人犯と格闘して、取り押さえた様子が、テレビニュースで報道していたわ。その女性に似ていたので、インターネットで検索したら、その時の動画がありました。彼女だったわ。」と亮太の事を思い出して、スマホで動画を住民達に見せて、抵抗する事は、諦めた様子でした。

    **********

翌日、聡子の両親が、秋山邸を訪れて、総理大臣と幸枝と政男と打ち合わせして、二人の結婚が、正式に決まりました。

その後、聡子が住んでいたマンションに、監査結果が通知されました。

“ゴミの分別や回収日の指定が、何故必要なのか、今まで何度も説明させて頂きましたが、全く理解されていないようで、ゴミの捨て方が、無茶苦茶です。今後、このマンションのゴミの回収はしません。自分達で回収して、勉強して下さい。もし、ゴミを回収せずに、放置するようであれば、マンションの取り壊しも視野にいれて、検討します。”と通知されました。

追伸として、“この内容は、総理大臣にも報告して、承諾されています。この通知内容が不満で逆らえば、総理大臣に逆らう事になります。”と説明されていました。

住民達は通知結果をみて、「ちょっと、取り壊しだなんて、厳し過ぎない?たかがゴミの事で。」

「総理大臣を怒らせてしまった事が、決定的ね。マンションを取り壊すと激怒していたと聞きましたが、本当に取り壊すとわね。あの聡子さんは、総理大臣のお気に入りだそうよ。誰よ、聡子さんを虐めて、総理大臣の長男に殴りかかった人は。」と諦めた様子でした。


次回投稿予定日は、10月11日を予定しています。

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