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短編小説シリーズ

駅と言えば

作者: ex.MONSU

 駅と言えば、売店がありますよね。無い駅もありますけど、都会や大きな街の駅にはあります。

 正直、何を売ってるのかわからない場合もあるし、物が密集して配置されているので、潰れている時もある。

 この物語は、そんな駅構内に設置された売店と、売店に訪れるお客さんのお話。


 朝、通勤ラッシュの駅構内。

「やぁ、いらっしゃい。何を買いますか?」

 年老いた70そこそこのお爺さんが、お客さんに話しかける。

「ええーっと、ああ。この競馬新聞何円ですか?」

 30代後半と思しき男性が、競馬新聞を持ちながらお爺さんに問いかける。

「それですか。お客さん競馬をなさるんですか?私もよく馬券を買うんですがね。当たったことがないんですよ」

「その歳で競馬をやられるんですね。いやぁ、僕もさっぱりで。でも楽しくって買っちゃうんですよ」

 2人はそこそこ話し込んでいましたが、電車が来る時間が迫ってきたので、男性は急いで競馬新聞を買うことにした。

「もう電車来ますから、取り敢えずまた負けるかもしれないですけど、競馬新聞買います」

「ほい。500円」

「500円?!……急いでるんで良いですけど!」

 釣り銭を受け取る暇さえない程ギリギリの時間だったため、定価より些かボッタクリと分かっていながらも男性は新聞を買っていった。

「昼休みにでも抜けて馬券買えば、安い買い物だったと思えますぜ」

 と、お爺さんが最後にかけた言葉は聞こえていたのかは分かりません。


 昼、子連れが多くなる時間。

「やぁ、いらっしゃい。何を買いますか?」

 お爺さんは、あいも変わらずお客さんに話しかける。

「子供が、ちょっとグズっちゃって、何かありませんか?お菓子か何かあれば買いたいんですが、おもちゃとかあったりはしませんよね?」

 赤子を抱えた母親が、ちょっと困り顔で注文をつける。

「それは大変ですね。これなんて如何ですか?たまごボーロに似た食感で、子供さんでも食べられますよ」

 お爺さんは、ラムネ瓶に似た入れ物に入ったボーロっぽいお菓子を出す。

「あ、それで良いです。幾らですか?」

「50円で良いですよ」

「わかりました。はい。50円です。ありがとうございます」

 母親は赤子を連れて、去っていった。

 どこかで高笑いにも近い赤子の笑い声が聞こえたので、どうやら赤子はお気に召したようだった。

 周りの人は、その笑い声には何も気にはしていないようだった。


 夜、帰宅ラッシュの駅構内。

「やぁ、いらっしゃい。何を……ああ、朝のお客さんじゃないですか」

 お爺さんの眼前には、超絶笑顔の朝の男性がいた。

「お爺さんのところで買った競馬新聞、あれ、何なんですか?!」

 笑顔から一転、驚きの顔を見せる男性だったが、お爺さんは動じる気配もなく、

「何とは、一体何かあったんですかい?」

「いや、何かあったかって……今日は、会社で嫌なことがあったから、自棄になって新聞のまま馬券買ったら、大金星で超大儲けで!」

「おお。それは良かったじゃないですか。たまたまにしてはピッタリな新聞ですね」

 お爺さんは、件の競馬新聞を読みながら話を続ける。

「これですかい。3-4-5。へー300万帰ってきた人がいたんですかい。そいつはすごいですね。あ、お客さんのことですね」

「そうなんですよ!これで妻を幸せにしてやれそうです!ありがとうございます!」

「いやいや、私はお客さんに新聞を高値で売り付けただけのボッタクリ爺さんですよ」

と、お爺さんが言い切る前には、もう男性の姿は無かった。

 後で男性が気付いた事ですが、競馬新聞の日付は翌日の物だったようです。



どうして、赤ちゃんの笑い声は誰も気にしなかったのか。

どうして、競馬新聞は翌日の物だったのか。


それは、貴方の解釈次第で、普通に感じる事もあればホラーである可能性もあるのです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短いながらよくまとまった文章だと思いました。朝昼晩の 話の移り変わりのテンポが良かったです。 [気になる点] 高笑いに似た赤ん坊の笑い声、は面白い表現ですが、自分には高笑いが「含みある大笑…
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