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【真正ユレイシア帝国】議会(8)

「――という様な感じで、会議は進むと思います」

「……敵が墓穴を掘る所を静観する、か。流石はウェスターライヒ、趣味の悪い戦い方をするものね」


 テレシアが会議の動向についての予想を、リュドミアに説明した。


 この時点ではテレシアの手元にあったのは、各貴族の断片的な情報に過ぎないが、それでも大部分がテレシアの予想通りの結果になっていた辺り、流石である。


「これで、四大貴族の内、クラウディア、サイドリッツ、ゾンダーフェルムの三家がまとめて失脚。ウェスターライヒの天下が訪れるのであった。めでたし、めでたし……なんてことに?」

「ならないでしょうね。その程度で失脚させられるほど、四大貴族の肩書は軽くはないですよ。自身の勢力を総動員して、何が何でも失脚を回避するでしょうね。恐らく、何かしら理由を付けて、ルシエス様の罪を軽くするでしょう」

「……なるほどね。判決の根拠になっているルシエス様の罪が軽くなれば、自分たちに与えられる罰も軽くなる、と。確かに、自分だけの罪を軽くしようと利己的に動くよりも、その方が遥かに印象が良いものね。残念だったわね、ウェスターライヒ。世の中そううまく行くものじゃないみたいよ?」


「いいえ、フレデリック様とて、これで彼らを仕留めきれるとは初めから思っていないでしょう。罰が軽くなることまで計算の内です。今回のウェスターライヒの目的は、あくまで議会内での彼らの発言力を削ぐことです。徹頭徹尾いつまでも、勝ち目のない主義主張を抱えているのも考えものですが、ダブルスタンダードな主張は、人から最も信頼と信用を削り取ります。今回のことで、ウェスターライヒ側に惹かれた一派もありましょう」


「どちらに転んでも、ウェスターライヒには得しか無いってことか……」

「味方でなくとも、敵ではない、無視できない影響力を持ちうるクラウディア家の存在は、ウェスターライヒが他二家と戦う上で重要な要素ですからね。そういう意味でも、ウェスターライヒがルシエス様を見捨てることはないでしょう」

「そんで同時にクラウディア家に恩も売れる、と。とんだタヌキね……」


 リュドミアが呆れた様に息を吐いて、淹れられたお茶に口をつける。


「ルシエス様がもう少しウェスターライヒと裏で工作をされていたのなら、事はもっとスムーズに行くのですけれど。何もせず潔く裁判にかけられるとは、本当に不器用なお方です」

「だからこそのルシエス様ってね」


 リュドミアが苦笑する。


「ま、貴族共の勢力争いなんてどうでもいいけれど、そのおかげでルシエス様の罪が軽くなるのなら何だって良いわ。めでたし、めでたしよ」


 リュドミアが安心したように、ソファに深く腰掛けた。

 


 その後、議会はまさにテレシアの予想通りに動いた。

 身も蓋もない言い方をしてしまえば、サイドリッツ、ゾンダーフェルムの二家がゴネにゴネて、ルシエスの罪を軽くしたのだ。

 ルシエスに下される罰はかなり減刑され、最終的に半年間の謹慎という結論に収まった。


 結果として、サイドリッツ、ゾンダーフェルムの両家に下された判決も、三ヶ月の謹慎程度のものとなった。


 だが、そのあまりに自分たち本位すぎる行動は、議会内の多くの貴族たちの失望と疑問を買った。大貴族としての指導力に傷を負わされたのだ。


 この一件から、秘密裏に主戦派から反戦派、即ちウェスターライヒの勢力に鞍替えした下級貴族も少なくなかったという。


 結果としてみれば、終始フレデリックの思い通りに事が運んだと言える。



 ――後日、ライヒハート宅にて


 早朝、玄関よりコンコンと、ノックの音が聞こえてきた。


「はーい。今行きますので、少々お待ち下さい」


 その音を聞いたテレシアが駆け足で玄関に向かう。


「失礼いたします。リュドミア・ライヒハート様のお宅でしょうか」

「はい、そうですが」


 ルシエスに判決が下された後日、ライヒハート宅に一人の使者が訪れた。

 男は帝国の制服に身を包んでおり、見るからに格式が高そうな姿をしている。


「こちらをお受取りください」

「はい?」


 対応にあたったテレシアが、使者から一枚の手紙を受け取る。


「これは……リュドミア様宛の手紙?送り主は……」


 テレシアが封筒の裏側に書いてある送り主を確認する。 


「……帝国中央議会?」

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