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【真正ユレイシア帝国】議会(4)

「それが出来る勢力?」

「はい。ウェスターライヒです」

「!」


 ウェスターライヒ――帝国四大貴族最後の一角にして、末席といわれている。現当主は『フレデリック・フォム・ウェスターライヒ』。


 主戦派が多数を占める議会の中で、ほぼ唯一と言える反戦派の派閥を組んでいる貴族である。


「何故、ウェスターライヒがルシエス様を庇うの?確か彼らは反戦派、むしろルシエス様を裁く側の勢力のように思えるけど」

「それは、今回のウェスターライヒの標的が、恐らくルシエス様にはならないからです」

「?」


 ルシエスを罪を裁く場に標的も何もないだろうと、リュドミアが首を傾げる。


「結果的に庇うことになる、というのが正しいでしょうか?ともあれ今後のこともありますので、少し四大貴族周りの力関係を整理しましょう。そもそも、サイドリッツとゾンダーフェルムは今回の件が起きる前から、クラウディア家を追い落とすチャンスを伺っていました」

「え、どうして?私の記憶が正しければ、追い落とすも何も、クラウディア家は議会での発言力はほぼ無いと聞いているわ。そもそも現時点で、サイドリッツとゾンダーフェルムの派閥は既に議会の最大派閥の筈だけど」

「はい、『現議会において』は最大派閥です。ですが、ここで問題になるのはクラウディア家の立ち位置です。彼らは四大貴族の中でも、少々扱いが特別です。具体的に言えば、唯一の武官畑の一族なのです」

「ああ、なるほどね。そういうこと」


 テレシアの言葉からリュドミアが事情を理解した。


「ユレイシア大陸の統一は帝国の国是。それに最も近いところにいるのが、クラウディア家というわけね」

「はい。クラウディア家の前身は、五大十小戦国時代の十小の一つ、武家国家クラウディア。その気質は代々受け継がれています。彼らは政より、戦場に身を置くことを貴族の名誉としました。言ってしまえば、個人的なこだわりから勝手に議会と距離を置いているだけなのです」

「まぁ、そうね。ルシエス様の領土はこのご時世にしては珍しく、うまく回っていると聞くわ。決して政治の才能が無いわけじゃない」

「戦場に身を置く、即ち最も実務的な部分で成果を上げている家なのです。共に戦った者、助けられた者は数知れず。またルシエス様はあのような方ですから、個人的な友好的関係にある者も多数いらっしゃいます」


「例えば、リュドミア様とか」と、テレシアがからかうように笑う。


「ウォホン!あーつまり、ルシエス様がその気になれば、議会の勢力図を塗り替えることも不可能ではないということね?」

「不可能ではないというより、間違いなく可能でしょうね。もっとも、それをしないからこそのクラウディア家なわけですが。一切の不安要素なく、権力基盤を維持したい彼らにとって、それは関係のないことです」

「で、結局それがどうして、ウェスターライヒがルシエス様を庇うことに繋がるの?」

「主戦派である彼らは、強引に戦いを推し進めた自分たちの責任を、ルシエス様に敗北の責任を取らせることで、覆い隠そうとしています。――では、もし覆い隠せなかったとしたら、両家の立場はどうなるでしょうか?」

「あっ……」

「ウェスターライヒが仕掛けるのであれば、恐らく会議終盤。サイドリッツとゾンダーフェルムが、事前の打ち合わせの通りに、ルシエス様に重罪を負わした、その瞬間を見計らって――」

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