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【ユレイシア貴族連合王国】城主(13)

「この勧誘に失敗したら、ガルグ……ああ、俺の幼馴染なんだが、そいつと俺は失敗した責任を負って、キストラ城主から何かしらの制裁を受けるらしい」

「なんだそりゃ!?」

「めちゃくちゃ過ぎるな……」


 その責任の範囲のデタラメさに、サトルとヘイキチが呆れと驚愕の顔をする。


「キストラ・プラデーシュってのは、そういう奴なのさ。悪評は星の数ほどある。だからここに攻めてくるって話も、きっと脅しじゃないだろうし、そう考えるのは危険過ぎる」

「レイ殿……」

「悪いな、二人とも。俺は、所詮ただの一商人なんだ。商人は権力を敵には回せない。回してしまったら、商売ができなくなる。まだまだ小さいとはいえ、一商会の長として、従業員やその家族を露頭に迷わせるわけにはいかない。だから、俺はなんとしても、アスカイには城に行って貰うつもりだ」


 ハオランが素直に、頭を下げて謝罪する。


「顔を上げてくれ、レイ。それを言ったら謝るのはこちらの方だ。僕たちと関わってしまったばかりに、君はこんな役目を押し付けられてしまった。本当にすまない」

「それをあんたのせいにするほど、俺は腐っちゃいないさ。だが、攻め込まれる名分を、ああもスラスラ並べられるんだ。アスカイ、遅かれ早かれこうなることを、君は分かっていた筈だ」

「……」


 そのどこか咎めるようなハオランの言葉に、サトルがばつの悪そうな顔をする。


「アスカイ、君は自身の望みと起こす行動がチグハグだ。穏やかに過ごしたいと言いつつ、目立つことを平然とする。俺は以前、君がヘイキチを助けた時にも忠告したぞ。静かに暮らしたいのならば、ヘイキチを助けるべきじゃなかった、と。なのに君はまた、同じことを繰り返した。どうせ、今回も彼らに請われたんじゃないのか?自分たちを助けて欲しい、と」

「……返す言葉もない」

「それだけならまだいいさ。だが、流石に派手にやり過ぎだ。君らしくもない、思慮に欠けた行動だった。ここまで派手にやって、お上に目を付けられたくないってのは、無理な道理だ。今じゃなかったにせよ、いずれ必ず同じような事態を招いていたはずだ」

「……そうだね」


 ハオランからの説教(?)をサトルがゆっくりと咀嚼する。


「僕は……少々調子に乗り過ぎていた。どこかで歯止めを掛けるべきだったんだ。でも、それをしなかった。出来なかった。何故かと思えば、きっと僕は小心者の癖に、そういう誰かから頼られたいと思う欲求が、人一倍強いからなんだと思う。悪い気分じゃなかったんだよ。人が人を呼んで、村が大きくなっていくを見るのも。村長として、皆が自分を頼ってくれることも」

「親父殿……」


 どこか遠くを見るような目で、サトルが自嘲気味に胸の内を漏らす。


「それに夢だったんだ。自分の学校を持って、そこで教鞭を振るう事が。ここでそれが叶った。とても楽しかったし、充実した時間だった。でも……そろそろ覚めるべきなのかもしれない。思えば僕は、賢者を名乗るには、あまりにも俗な感情で動き過ぎていたと思う」

「……アスカイ」


 そんな自分の迂闊さを責めるサトルに、ハオランが同情の視線を向ける。 


「勘違いしないで欲しいんだが、俺はそれを悪だと言いたい訳じゃない。むしろ美徳だとさえ思っている。人間として君を尊敬すらしているよ」


 そして、励ますように賞賛の言葉を掛ける。その言葉は、きっと彼の本心なのだろう。

 つい調子に乗ってしまったサトルの迂闊さや俗な部分、それら全部含めて、ハオランはサトルにまごうことなき敬意を持っていた。


「でも、それを発揮する時と場所を、残念だが君は間違えてしまった」


 だが、サトルのその行動が優しさから出たものであることを理解していてもなお、それでも友としてハオランは苦言を呈さずにはいられなかった。


「お人好しが過ぎるんだよ、君は」

「……かも、しれないね」


 ハオランのその言葉に、サトルが静かに頷いた。

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