【ユレイシア貴族連合王国】城主(2)
「で、ガルグよ。結局、どう処理をしたんだ?」
それまでの醜態などなかったとばかりに、プラデーシュがディリップに尋ねる。
一通り暴れてすっきりしたのか、何個かの家具を犠牲に、ようやく話ができる状態にまで落ち着いたようだ。その度に、片付けに呼び出される部下たちには同情を禁じ得ないが。
「無視する訳にもいきませんので、とりあえず兵を出す方向で調整しました」
「なんだと?バカ正直に兵を貸し出すというのか!?」
「いえ、出せる数については過小に報告させて貰いました。どこまで通じるかわかりませんが、我々にも治安の維持という仕事がありますので。領土の事を考えてのことなら、最悪、申し開きはできるかと」
「フン。それでもこの城の兵力が減少することに、変わりはないではないか。私の兵を勝手に献上するとは良い身分だな、ガルグ」
「しかし、これは領主様直々の要請です。一兵も出さないというのは流石に不可能かと……」
「言い訳など聞きたくないわ」
ディリップに対応を丸投げにしておきながら、プラデーシュは遠慮なく嫌味を投げつけ、不満そうな顔をする。
「そもそも、あの馬鹿息子に理屈が通じるなら、誰も苦労なんぞせんわ」
(……それは確かに事実ですが、ならあんたが他の解決案を出してくださいな。物に当たってる暇があったのなら)
ディリップはそう心の中で思うが、勿論口に出すことはないし顔にも出さない。いつものことだからだ。
「申し訳ありません」
そして普段通り謝罪し、頭を下げる。
仕事をしない城主に代わり折衷案を出したのだから、ディリップ責められるのはお門違いだが、プラデーシュにそんな理屈は通じない。
「フン、謝るぐらいなら兵力の増強案を持ってきて欲しいものだな」
(それもあんたの仕事でしょうが……)
領主と城主の間で板挟みになっている、この時のディリップの心労が如何ほどものであったか、想像に難くない。
クァンリー城の部下たちも基本的に、判を押すか、文句を言う以外しない城主より、ディリップにお伺いを立てていた。
実質的にクァンリー城の実権はディリップのものであり、日頃の扱いの悪さなども考えれば、プラデーシュはこの時点で既に、反逆を起こされていてもおかしくはなかっただろう。
だが、幸いなことにディリップは職務に忠実な男だったため、まだなんとか最後の一線は守られていた。
「年齢の引き下げでも、条件の緩和でも何でも良いから、さっさと徴兵を行って、城の兵を増強しろ。これでは不安で夜も眠れん」
「無理な徴兵を行えば、労働力の減少を招きます。民の反発も必至でしょう。訓練の問題もあります。やはり急な増強は難しいかと。時間がかかっても、ゆっくりと増員すべきです」
「フン、ゆっくりなどしていられるか。明日反乱が起きたら、貴様はどう責任をとるつもりだ?」
「……」
そんなディリップの提案をプラデーシュが鼻で笑う。
「お前はいつも文句ばかり達者だ。私の言うことに不満があるのなら、少しは対案を出してみたらどうだ?」
プラデーシュの発言に、いちいちツッコミを入れるのは不毛である。ディリップも「何を言っているんだ、こいつ」と思ったことだろう。
「……この城の者を使わずに兵の増強、ということであれば一つだけ、それができる可能性があります」
「……ほう?そんな都合のいい対案があると申すか?面白い、言ってみろ」
やたらと上から目線で、プラデーシュがディリップの言葉に耳を傾けた。
――レイ商会・リィンダイ支部にて
「レイの旦那、客人です」
「客人?俺に?本家にじゃなくてか?」
「はい。『レイ・ハオラン』に繋いでくれと。なんでも『クァンリー城』からの使者だそ――」
「――お引取り願え」
「は?」
「お引取り願えと言っている!!」
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