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【ユレイシア貴族連合王国】決起(9)

「ケホッ!ケホッ!いや、分かってはいたが凄い埃だ……。これは掃除のし甲斐があるな……」

「そうですね、ゲホッ!ケホッ!でも、ホコリが多いだけで思ったよりしっかりしてますね。家自体の痛みは少ないですし、これならすぐに住めるようにできそうです」


 部屋を確認しながら、埃だらけの廊下をサトルと男たちが進んでいく。

 野盗などに荒らされた後だろうか。途中で確認した部屋には、ほとんど何も残っていなかった。


「金目の物、とは言いませんが、もう少し使えそうな物があっても良かったですね」

「こらこら、それでは我々はただの野盗になってしまうよ。たとえ持ち主不在の家でも、略奪はなしだ。それに何もない方が、片付ける手間が省けて都合がいい。元より一から開拓するつもりだったし、立派な家が一軒あるだけも儲けものさ」

「それは確かに。あ、ここが最後の部屋みたいですよ」

「お、本当だ」


 男が廊下の奥の扉を指差す。恐らくは寝室だろうか、今まで一番大きな部屋のようにみえる。


「さてどんなも――」

「うげっ!?」

「うぎゃあ!?」


 扉を開け、サトルと共に部屋に入った男たちが悲鳴を上げた。


「これは……」


 そこに散らばっていたのは、大小様々な人骨だった。

 かつてのこの家の主か、その子供か、あるいは使用人のものか。おびただしい数の人骨が床に散らばり、ホコリを被っている。


「まぁ可能性としては考えていたけれど……本当にあるとは……」


 薄暗い室内で、それも廃墟の一室でこの有様は流石に気分が悪くなってくる。もし、これ光景を一人で見たのならば、誰もが悲鳴を上げて、一目散に退散していただろう。


「け、賢者殿……これは一体……?」

「詳しいことはわからない。ただ……彼らはこの家の住人で、この部屋で心中したのかもしれないね」

「え?」

「これを見てごらん」

「これは……」


 サトルが剣を手に剣を握っている人骨を指差した。


「この家の状態、大きさから見ても、きっとこの家の住人は村ではやんごとなき身分だったんだろうね。村長とか、地主とか多分、そういう感じの人種だろう。だからきっと最後の最後まで、それこそ村民の最後の一人が居なくなるまでこの村に居続けた。そして、その最後の村人を見送ってから、彼らはこの村の長として、この村と共に眠ることを選んだ。そんなところかな」

「賢者殿……」

「ははは、なんてね。そんな話だったら救いがあったかも、と思っただけさ。今となってはもう何もわからないしね。実はただ野盗と相打ちになっただけかもしれないよ?」


 サトルが苦笑する。


「とにかく他の皆を呼んできてくれるかな?遺骨は全部、外に運びだそう。こんな薄暗く、ジメジメした所で放置されていたんじゃ、彼らが可哀想だ。ちゃんとした所に埋めて弔ってやろう」

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