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【真正ユレイシア帝国】指揮(7)

「ここまでか……」


 ルドウィッグが、崩れ始めた自軍を見ながら呟く。


「兵達も、よくぞここまで頑張ってくれた」


 元よりボロボロの部隊を更に切り分けた分隊。鎧袖一触に打ち破られなかっただけでも十分過ぎる、とルドウィッグは思ったのだろう。


(だがこれで、ルシエス様が逃げる時間は十分に稼げたはずだ。ならば後は……将としての責任を果たすのみだ……む?)


 覚悟を決め、ルドウィッグが槍を構えて最期の突撃を行おうとした時、突然王国軍の攻撃が止んだ。


「聞こえるか、クラウディア軍の将よ。私は王国軍、レン・リキョウ将軍が配下、ファン・シュインである」


 そして戦場に、拡声符によって増幅された声が響き渡る。


「卿等の戦いは見事だった。素早い判断、弱所を見切っての包囲突破、そしてこの撤退戦、同じ武人として尊敬に値する。だからこそ言おう、これ以上の交戦は無意味だ。大人しく投降して欲しい。卿達ならば、我々は喜んで歓待しよう」


 相手に敬意を表しての降伏勧告だった。その降伏勧告に両軍、一瞬の静寂が流れる。


「――私はクラウディア軍配下、ルドウィッグ・ライツェンガーである」


 そして、その静寂に割って入るようにルドウィッグが前に出た。


「シュイン殿と言ったか。その寛大な慈悲には、痛み入る。私には勿体ない言葉だ。だが、残念ながら、その提案は断らせていただく」


 そしてその申し出をきっぱりと断った。


「私はルシエス・フォム・クラウディアに忠誠を誓い、爵位を賜った者。誇りがある。仕える故国も主も、生涯において一つのみ。変えるつもりはない」


 そして一切の淀みなく、故国と主への忠誠を語った。


「そうか……」


 その力強い言葉に、説得は無理とシュインは悟る。


「では仕方ないな……構え!」


 そして兵達に命令をくだす。その言葉にはひどく残念な感情と、同時に確かな敬意が込められていた。


「理解に感謝する」


 遂に最後のぶつかり合いが始まる。


「いくぞ――」

「待てえええええぃぃぃ!!」


 その時だった。


「む!?」

「なんだ!?」

「空気が読めなくて悪いな、ご両人。割って入らせて貰うぞ!」


 なんとも『悪い』タイミングで、マクフォールが二万の軍勢を引き連れ参戦してきた。


「お前……マクフォールか!?何故ここに!?」

「話は後だ、ルドウィッグ!皆の者、行くぞ!敵を蹴散らせ!」

「い、いかん!」


 マクフォールが兵達と共に、シュインに襲いかかる。


「皆、撤退だ!撤退しろ!」


 シュインはすぐさま撤退を指示した。

 敗走相手の追撃に足る兵でも、二万の援軍は想定外だ。しかも王国軍側は連戦中。

 しっかりと統率の取れた、二倍の戦力の相手を、正面から相手取ることなど出来るはずがない。


「退け!退けぇ!」


 形勢はあっという間に逆転した。シュインは追う側から追われる側へ。

 王国軍一万はマクフォール軍の攻勢を前に、散々に打ち倒されることになった。

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