【真正ユレイシア帝国】頭角(6)
「回れ!側面から攻めろ!数ではこちらが上だ。攻撃を続けて体勢を整えさせるな!」
朝日が登るより早々、帝国軍の攻撃は始まった。
左翼にセントローズ卿が四万、中央をルシエスが六万、右翼にドルニーゴ卿が四万でそれぞれの軍を率いて、敵陣の攻略に掛かる。
「奴らを柵に近づけさせるな!矢の雨を降らせよ!」
それに対応して王国軍も防御を展開する。
リキョウ将軍の指揮の元、王国軍六万の軍勢が築き上げた強固な防衛陣地を盾に立ち回る。
もう何回繰り返したかも分からない恒例行事だ。もはやある種、息のあった連携と言ってもいい。
だが、この日だけはその様相が少しだけ違っていた。
「駄目です将軍!もう持ちません!」
八ヶ月間なんとか持ちこたえていた防衛陣地だったが、数に勝る帝国軍の想定を上回る期間の波状攻撃によって、兵士と物資は消耗され続け、防御能力には限界がきていた。
「崩れたぞ!全軍、私の後に続け!」
その隙を逃さず、ルシエス軍配下の将の一人、ルドウィッグが先陣に立って馬防柵と塹壕の間を縫って突撃を敢行した。
「くっ!行かせるか!!」
「邪魔だ、どけぇ!!」
「ぐはぁ!?」
ルドウィッグを先頭に、怒号と共に兵士たちがなだれ込む。
「どうやらここまでのようだな……」
元より少数の防御側、一旦陣形が崩されてしまうとその崩壊は早かった。
侵入された場所より、なし崩し的に陣形は乱れていき、防衛陣地はあっさりと陥落した。
「現時点で本陣を放棄する。全軍退却!後方の陣まで退け!」
そうなると、リキョウの判断は早かった。早々に戦に見切りをつけ、全軍の退却を指示する。
だが勿論、それで戦が終わるはずもない。
「逃がすか!全軍追撃!」
「あの老人の首をねじ切ってやれ!」
それを見た、セントローズ卿とドルニーゴ卿が我先にと突撃を仕掛けた。そしてそれに呼応するように、配下の兵たちも突撃する。
逃げながら戦うのはとても困難なことである。よほど優秀な殿でもいない限り、その展開は大抵が一方的な蹂躙となる。
故に敵が退却を決めたのなら、すぐさま追撃を加えるのが戦における鉄則だ。それが更に数に劣っているのだから、もはや王国軍の壊滅は決定的だった。
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