02 ゲーム開始とキャラメイク
初期設定を済ましたり、彼とたわいない話をしたりそんな日々を過ごしていると、とうとう【Free travelers】の公開日になった。
「あっという間だったな。まるで一文しかたっていないみたいだ。」
自分で言った一文という単位に首をかしげながら窓の外を見る。
「この街もずいぶん変わったな。」
いつの間にか日本の人口も増え、たくさんの外国人が引っ越してきたため、
才能の無駄遣いだったはずの機能がしっかり機能するらしい。
そういえば、この家にも何人か外国の人があいさつに来ていたな。
ゲーマーばっかりだと思ったら、意外と普通の人も来ているのだからかなり驚いた。
あの伝説のプログラマーはこれを想定していたのだろうか。
まあそれは置いておいて、「彼」がもうキャラメイクを終えてゲームの中らしいし、俺も早くいかないと。
早速、ヘルメットのようなヘッドセットをかぶり、ついていたソフトを差し込むと、その場に倒れるように五感がなくなり、意識が飛んで行った。
「ようこそ、<freetrabelers>の世界へ。ニックネームの入力をお願いします。」
と無機質ながらも棒読みを感じさせないような、<音声合成>の声が聞こえた。
「んーとそれじゃ……カーケイで。」
いつもニックネームに使っている名前だ。
俺の名前の【空下健栄】≪からしたけんえい≫の、
名字の初めの文字、名前の初めと終わりの文字をぬいた、か、け、いに伸ばし棒をつけた形だ。
え、ネーミングセンスがないって?俺にネーミングセンスを求めても無駄だよ。ほっといてくれ。
こういうのは開き直るしかないんだ。センスは生半端じゃ鍛えられないんだから。
「カーケイさんでよろしいでしょうか?」
「それでお願いします。」
「次に種族の設定です。」
「今なれる種族は人・エルフ・ドワーフの3種類で能力も異なります。今伝えられるのはこれだけです。」
つまり直感やイメージで考えろって言うことか。
イメージが湧かない。
エルフは耳がとんがっているとかそんなところかな?
取り敢えず無難そうな人でいっか。
「わかりました。人でよろしいですね?」
「はい、というか心の中読んでますか?」
「正確に言えば頭の中という事になりますが、心を読んでいます。逆に話しかけてくる方が珍しいですから。」
ただの音声合成なのに感情をもって笑っているように感じた。
「それではカーケイさん、まずステータスを決めます。」
「現実の世界のからだの能力バランスで決める方法と、自由に振り分ける方法があります。前者の方はボーナスポイントがあります。」
「それじゃあ現実の世界のからだのほうでお願いします。」
「わかりました。測定をします、動かないでください。」
少しぞっとした感覚になった後、
「測定が終わりました。早速確認されますか?」
んー、どうしようかな?
楽しみは後でゆっくりと確認したいし、彼が待っているから早く終わらせるか。
「今は大丈夫です。」
「わかりました。それでは、<free trabelers>の世界をお楽しみください。」
言い終わってないのに食い気味で言われてしまった。
まあ心が読めるなら会話する必要もないからか。
時間が押していたのかもしれないな、次の人もあるし。
と思っていた矢先、目の前が白くなったかと思うとベッドらしいところで寝ころんでいた。
とりあえず動けるか試してみるか。
お、普通に思った通りに動ける。違和感は少ない。
クソゲーだと違和感がすごいからな。
彼からもらったメールだと、アルバント広場にいるらしいし行ってみるか。
にしても、ここはどこなのかな。
外に出てみるとマンションの廊下のようなところだった。
その隣にはカルリア・アール マテリア・ヒュウリなどの、知らない名前がずらりと20人ほど並んだ名札があった。
公式の事前発表によるとプレイヤー全員が個人スペースを持っているらしい。
「あっ、そんなことより早くいかなきゃ。」
そう言って1階のフロントの自動ドアをくぐった。