勝利
伝家の宝刀、抜いちゃおうかな~。
卒業パーティーまで、あと少しなのにも関わらず準備が終わらない。
それもこれもミレーヌぱいせんのせいだ。
あのぱいせんは何と取り巻きの人達以外にも圧をかけ、私への嫌がらせをするためだけにボイコットさせているのだ。
自分の卒業パーティーなのに、それで良いのか?
本当なら全て無視する気でいたけど、他の三年の先輩達から泣きつかれちゃ仕方ない。
そんな思いから私は伝家の宝刀を抜くようにエリザベートに頼んだ。
「え!?何でそこで私が出てくるんですの!?」
「まぁまぁ、当日はずっと黙っていてくれればいいから。むしろ、欲しいのはエリザベートの権力だけだし」
「あ~、なるほど!分かりました!」
「……私達はエドワード様を配置しますね」
「どういう事ですの!?」
そして、エリザベートの協力を仰ぎ、果てには友達のレベッカ嬢を始めとする1年の全女生徒に頼み込み、ミレーヌぱいせんを笑えないほどの大勢の人達を引き連れ、私はミレーヌぱいせんの元へ向かった。
これだけの人数を集められたのはレベッカ嬢とその取り巻きの子達や私のメイドであるサラやソフィのおかげである。
そのせいで道を開けてくる他の生徒を見て申し訳なさを感じたが、これも卒業パーティーを成功させるため。
もっと言えば、私の面倒ごとを一掃するため。
どうか許して欲しい。
「あら?フェリシアさんでは、あり、ません、か……」
はい、フェリシアです。リズとリゼを覗く1年の女生徒全員を引き連れているフェリシアです。
引きつった顔をしているミレーヌぱいせんの様子を見るに掴みは上々だ。
明らかにやり過ぎた感はあるけど。
「ご機嫌よう、ミレーヌ様。実は今日は、お話したい事があって参りました」
「お、お話?あぁ、カイル様の事ですか?」
「いいえ、違います。卒業パーティーの事です。こちらにいらっしゃるエリザベート王女は思うように進まない卒業パーティーの準備に大変心を痛めています。つきましては、是非ともミレーヌ様のカリスマ性をお借りしたいと思っています」
まがりなりにも、エリザベートは王家の人間。
いくら変人だろうと、奇行が多かろうと、それを全国民が知っていようとも、王家の人間な訳だから、流石のミレーヌぱいせんも無下には出来まい。
こんなに人が大勢いる前で、だ。
「くっ……ですが!やはり準備などは私達貴族がやる物ではありませんわ!」
「……なるほど。」
こちらが下手に出て、なぁなぁで済ませようとしているが、貴族の典型的な傲慢な所を詰め込んだ彼女はそれに中々応じてくれそうにない。
「ですが、貴方より身分の高いエリザベート様やフェリシア様は嬉々として準備を進めていますよ!」
「へ、辺境伯令嬢ごときが私に口答えしないでしないで欲しいわ!」
それを言うなら、私とエリザベートより身分が低いミレーヌぱいせんも大人しく私達の要望に応じて頂きたいものだが。
伝家の宝刀『私を誰だと思っていますの?』はあんまり使いたくないんだよね。
もしこれを使ったら最後、絶対に両親の耳に入って、張り切ってクーラン侯爵家を潰そうと考えるに違いない。
実際、お父様とお母様にはそれくらいの権力があるのが恐ろしい。
というか、ミレーヌぱいせんはレベッカ嬢の事を辺境伯令嬢ごときとか言ってるけど、レベッカ嬢のお父様は国王から直々に国境線の防衛を他国の侵略から守るように命を受けている凄い人なのである。
また、それもあってかレベッカ嬢の実家であるティファニー領は他の領よりも広大で大きな権限を与えられているのだ。
つまり、単なる伯爵と違って実際は侯爵と同じくらいの身分とされている。
先輩なのに無知だな、ミレーヌぱいせん。
でも、それ以上に私とレベッカ嬢を慕う子達の堪忍袋の緒が切れそうだけど、どうしてくれるのだろうか。
「どうしたのかな?」
あ、エドワード。その後ろにはリゼとリズもいる。
宣言通り、連れてきてくれたらしい。
よーし、名実共に名高いエドワード王子に皮肉混じりでチクっちゃお!
「ご機嫌よう、エドワード様。私達はこちらのミレーヌ侯爵令嬢に卒業パーティーのために手を貸して頂きたくて、会いに来たのです」
「そうかい。確かに三年生の中で一番身分が高い彼女が手を貸してくれるなら、話は早いね。僕もそう思うよ。一緒懸命卒業パーティーの準備を手伝っているカイルに付きまとっている彼女が応じてくれるかは微妙だけど」
うへー、ミレーヌぱいせんはそんなゲーム内のフェリシアみたいな事をしてたの?
道理でカイルはげっそりしてるし、エドワードは少し怒りを顕にしてる訳だ。
カイルは女運はないけど、友達には恵まれているね。
「そうですね。先程は自分より身分の低い方のお願いは聞きたくないという雰囲気でしたし」
「へぇ、それだと、まるでそのお願いをしているエリザベートとフェリシアの身分が、王家とカレトヴァー公爵家の身分がクーラン侯爵家より劣っているともとれるね?」
「まったくです。両親に相談した方が良いのでしょうか?」
「うん、それがいいね」
どうしよう。何か楽しくなってきた。
もしかして、私ってドS気質があったりするのだろうか?
「いまさらじゃろ……」
あっ、心読むの止めてもらって良いですか?
「ち、違います!事実無根ですわ!」
「何が事実無根ですか!私達は聞いておりましたよ!レベッカ様の悪口を!」
「そうです!言い逃れは出来ませんよ!」
何とか、誤魔化そうとするミレーヌぱいせんだっだが、レベッカ様の取り巻きの子達を中心に目撃者達が続々と声を上げる。
いいぞ、もっとやれ!
あ、サラとソフィも私のために声を上げてくれてる。
よし!給料を倍にしようじゃないか!
「皆さん、落ち着いて下さい。ミレーヌ様はきっと冷静になって、すぐにレベッカさんに謝罪してくれますよ。だって、ティファニー辺境伯がその気になれば、侯爵領くらい地図から消す事くらい周知の事実ですもの」
「あっ……」
気がついたって、後の祭り。
さぁ、もう諦めてレベッカ嬢に謝り、卒業パーティーの準備くらい真面目にやって下さい。
「れ、レベッカさん。申し訳ありませんでした。どうかお許し下さい……」
「分かりました。受け入れます」
「それと、僕からも一つ。友人のカイルに迷惑をかける行為を止めてくれますか?」
「はい……」
かくして、卒業パーティーは無事に終了した。
最後まで俯いたままのミレーヌぱいせんを見ていたら、やり過ぎたかな?って思った。
権力って、やっぱり怖い。
でも、まさかここに来てゲーム内のフェリシア的ポジションの令嬢が出てくるとは。
カイル、頑張れ!




