(自称)大精霊との出会い
よーし、じゃあ早速次は『アイテム』欄を見ていこう。
「メニュー画面、開いて」
これ、何か○K.G○○gleみたいだな。
まぁ、この世界にはスマホみたいな電子端末はないから○K.G○○gleみたいなサービスもないんだけど。
……そう考えるとせっかくの異世界みがなくなって嫌だなぁ。
「えーと、アイテムは……」
おぉ、結構あるな。
しかも、全部『Encounter of fate』で出てきたアイテムじゃん。
アイテム欄にあるのは大まかに分けると、回復系アイテムと強化系アイテムと装備系アイテムと罠・爆弾系アイテムと素材系アイテムの五種類か。
具体的に見ていくと、回復系アイテムはHP回復とMP回復の二種類で、品質が良ければ良いほど回復量がアップするタイプ。
中には、死者蘇生が出来るほど品質が良い物もあった。
ちなみに、ポーションではなく乙女ゲームだからか何故か可愛いスイーツ。
強化系アイテムは、攻撃力や防御力などを一時的に上げる物で、こちらも何故かスイーツやアクセサリーなどといったファンシーなものだった。
装備系アイテムは、何か強そうな剣・槍・斧・弓・杖が多数と頑丈そうな兜・鎧・盾が多数あった。
魔術師が使う杖はともかく他の武器は見るからに重そうだから、フェリシアちゃん(6歳)には扱えない。
防具も使用者に合わせてサイズが変わるみたいだけど、公爵令嬢はこんなゴテゴテしたのはつけない。
回復系アイテムと強化系アイテムはあんな可愛いのに、どうして装備系アイテムはこんなにもリアルなの?
あと、罠・爆弾系アイテムはひたすら物騒。
素材系アイテムは使い道がよく分からない。
以上。
………うん、何で?
私、今世で初めて開いたんだよ?
なのに、何でこんなアイテムがたくさん入っているの?
ゲーム内のアイテムも転生先まで持ってきちゃったの?
何かここまでサービス(?)が良いと怖くなってくるよ。
しかも、誰によるものなのか分からないから余計に。
「知らない人からモノを貰ってはいけないって言うし、封印しよ……」
前世のお父さんとお母さんから、小さい頃口酸っぱくして言われた事を思い出し、そっとアイテム欄の画面を閉じる。
特にスイーツとかは賞味期限・消費期限があるからなぁ。
腐ってたら嫌だし、何か口に入れたくない。
「……じゃ」
ん?何か声が聞こえたような……
「何故じゃ!何故、使おうとしないのじゃ!」
聞こえた。
何か、老人口調なのにロリ声だったぞ。
そして、私がその声をはっきりと認識した瞬間、目の前が真っ白になった。
そして気づいたら、果てしなく広がる真っ白な空間に無数の本棚が並んでいる、そんな不思議な空間に私は立って、いや浮いていた。
ここどこ?
「……夢か」
あまりの急展開に私の頭はキャパオーバし、思わずそんな事を呟く。
すると、先程から後方で聞こえていた泣き声のボリュームが大きくなる。
うわぁ、振り向きたくない。
この空間にくる前に聞いた声からすると、この泣き声の主は私に色々な力やアイテムを与えてくれた人なんだと思う。
でも、もう不可思議な事はお腹いっぱいなんだよなぁ。
というか、さっきも言ったけど急展開すぎるんだよ。
ご都合主義の創作物でも、もっと色々な順序を踏んでるよ?
前世の記憶を思い出してすぐに、こんなゲームとかの中盤でたどり着くような重要な場所に飛ばされる6歳児なんて中々いないと思う。
うーん、どうしようかな。
もう面倒事はごめんだけど、後ろから聞こえる幼女(?)の泣き声を無視するのも良心が痛むし。
それに、元の世界(?)への帰り方も分からない。
えぇい、もうどうにもでもなれ!
ちょっと自暴自棄になった私は勢いよく泣き声がする方に振り向く。
すると、そこには見事な白銀の髪をした幼女がいた。
え、何あの髪?????!?!?
人が持っていい(?)髪じゃないよ????
この子、神か何かなの?
髪だけに、なんちゃって。
あまりの美しさのため数秒間、ぼうっと魅入られているどころか、超くだらない事を考えた私は、ふいに今まで手で覆っていた顔をゆっくりと上げた幼女と目があった。
顔も髪同様に美しい幼女の目に、涙はなかった。
「……あの、帰りたいんですけど」
「おーいおいおいおいおい……(泣き声)」
いや、もう嘘泣きだってバレてるから。
その後も私はこの幼女に元の世界(?)に帰りたい事を伝えるも、ちらっとこっちを見るだけですげなく無視される。
なので私は面倒事を回避する事を諦め、この幼女の話を聞く事にした。
「まったく仕方ないやつじゃのう!最初からこうしていればいいものを!」
こっちが下手に出たら調子に乗り出した幼女を見て、私は無意識の内にやっぱり帰ります、と口走っていた。
すると幼女は私の服を掴み、必死な様子で食い下がる。
「ま、待ってくれ!我輩が悪かった!もう調子乗らないから!お詫びにもっと強い力やるから!」
「いや、結構です」
やっぱり私に力やらアイテムやらくれたのはこの幼女だったか。
でも、もう本当に十分です。
これ以上、強い力とか手に入れたら既に越えてる公爵令嬢の域をさらに越えちゃう。
にしてもこの幼女、改めて見るとすごい顔が整ってるなぁ。
しがみついてくる幼女の顔をこれでもかと目の当たりにし、私はそんな事を考える。
見事な銀髪と青・黄色・オレンジが混ざった複数色のいわゆるアースアイと呼ばれる目が彼女の神秘性に拍車をかけているためか、余計にそう感じた。
見た目は私と同じくらいなのに、完成された美しさを持ってるって彼女は本当に何者なんだろう?
「じゃあ、我輩はどうしたらいいのじゃ!?」
そして、謎のその年寄りじみた口調。
本当に何者?
「えっと、その前にあなた誰?」
しがみついてくる幼女と少し距離を取り、パーソナルスペースを確保した私は、もっともな事を聞く。
すると、幼女はハッとしたように慌てて取り繕うように咳払いをする。
「わ、我輩は大精霊じゃ!時空を操れたり、この世界の事なら何でも知る事が出来たりするぞ!」
そして、何故かとても偉そうにそう断言した。
えーと、確か精霊も力の有無でランク分けみたいな事されてて、一番力が強い精霊を大精霊、その次に強い精霊を準精霊、一番力が弱い精霊を微精霊と呼んでいるんだっけ?
彼女の言う事が本当なら精霊界ではきっと重要な地位を占めているのだろう。
なるほど、道理で偉そうな訳だ。
……うーん、しかしそうは見えない。
「ちなみに、お主に色々と与えたのは我輩じゃよ!気づいておると思うが、お主のおもしろい記憶を頼りに与えた力を目に見える形にし、回復薬とやらや武器なども作っておいたぞ!」
なるほど、あれらはついさっきこの子が一から作った物だから、今まで他の人が使ってる所を見た事がなかった訳だ。
あと、アイテムがゲーム内に出てくる物ばかりだったのも以下同文って事か。
「……ん?記憶を頼りに?」
「あぁ、ここにはお主の事が書かれている本がたくさんあるからな!だから、お主の事は何でも知っておるぞ!」
いやいやいやいやいや、何で?
何でこんな所に私の事が書かれた本があるの?
というか、ここどこだ?
凄く濃い出来事に出くわし、もっともな事をもう1つ忘れていた事に気づいた私は思わず首を傾げる。
「ん?あぁ、そういえばまだこの場所について教えてなかったのう!ここはだな、この世界の全てといっても過言ではない知識を有する……」
私が少し困惑している事に気づいたのか、それとも偶然なのか、大精霊の子はどこか気迫のある様子で私の疑問に答えてくれた。
「図書館じゃ!」
……図書館。
何ていうか、凄そうな前置きのわりに普通の名前だな。
私が思わずがっくりと肩を落とすと、それを見た大精霊の子は何じゃ、その反応は!?と文句をつけてくる。
いや、だってこんな凄そうな場所の名前がよりによって図書館なんだよ?
テンションも下がるって。