ルート
「じゃあ、帰るよ。これ以上いると、カイルに恨まれそうだし」
と、そんな爆弾を落としてエドワードは帰って行った。
どうやら、私はカイルルートにいつの間にか入ってしまったようだ。
やっぱり、初対面の時に私がお父様の方が良いって言ったから『ふん……俺に興味ねーなんて、おもしれー女……』と感じで恋に落ちちゃったの?
それとも、ゲームの強制力がおかしな方向に働いちゃった感じなの?
私自身、カイルに何かした覚えは全くないのだけれど。
まぁ、フェリシアちゃんは美少女だから年頃の男の子の一人や二人を恋に落としちゃうのも無理ないよね。
そうなのだとしたら、仕方ない。
カイルが美少女・フェリシアちゃんに求婚してきたら、婚約したかったらお父様とお母様を倒せと言うようにしよう。
お父様とお母様は今の所この国で一番強い訳だから、まず勝てるはずがない。
もし勝てる人物がいるとしたら、恐らくヒロインかリズ・リゼくらいだろう。
カイルも強いには強いが、ゲームを参考に能力を鑑みてもお父様とお母様よりも強いとはいえない。
仮に勝てたとしたら、それはもう私の手に余る代物だ。
その場合は諦めて、他国へ亡命する事にしよう。
いや、何で私は求婚される前提で話を進めているんだ?
そもそも、彼の意識からフェードアウトした方が話は早いに決まっている。
カイルの嫌いなタイプは、ゲーム内のフェリシアだから彼女の行動を真似すれば、カイルは私を自然と嫌っていくだろう。
……って、それだとゲーム通りに進んで私が死んじゃう!
駄目だ、駄目だ!
なら、カイルルートの好感度を上げきれなかったヒロインの行動を真似すればいいのか?
でも、確かカイルから特定の言葉を投げ掛けて貰って行動しないと好感度を下げられないから、これも難しいよね。
それに、その一つには急所を思いっきり殴らないといけないような物騒な場面もあるから、余計に無理だ。
公爵令嬢が公爵令息を急所を殴るなんて、論外だよ。
やっぱり関わらないようにするのが一番だな。
カイルのも思春期特有の熱病みたいな感じのやつだと思うから、接点がなければその内私への興味関心も薄れるでしょ。
私がどこかの英雄みたいな振る舞いをしてる事も相まって、憧れみたいな感情も混ざっているだろうし。
私自身も大人しくしていれば、より一層それはなくなる可能性が高い。
……前者はともかく後者は無理じゃないか?
関わらないようにするのはともかく、私にはナツメというトラブルメーカーがいるから大人しくしていられないよ。
ん?待てよ。
そもそも、ゲーム内ではフェリシアとカイルは身分上の関係で婚約を反対されていた。
だから、私がそれを理由に拒否し続ければ何とかなるんじゃないか?
何だよ、簡単な話じゃないか。
あーあ、焦って損した。
大体、エドワードもわざわざあんな意味深な言葉を言わなくても良いのに。
本当に心臓に悪いからやめてほしい。
「sb\w@<2%ld3xyf6;k:e7hd'Zwbsw@eeyrt?(ところで、フェリシアさんは俺の契約者って事でいいんすか?)」
あっ、そうだ。
すっかり忘れてけど、私はさっき騙されてドラゴンを召還したんだった。
勝手に呼び出したのは、あくまでこっちなのにこれで『はい、バイバイ』じゃドラ男さんが不憫過ぎる。
「そうですね。じゃあ、よろしくお願いします」
「fe<9\dhZr!(はい、よろしくっす!)」
私が手を差し出すと、彼も爪を差し出してくれた。
そんな私達が仲良く握手をしていると、ナツメは隅でいじけてしまった。
普通なら可愛いと思うような場面だが、生憎と彼女は赤ちゃんが刃物を持っているようなイメージに定評のある大精霊。
むしろ、頭の上に雷でも落とされないかとヒヤヒヤしてしまう。
「むぅ!こうなったら、一生パクチーしか食べれなくなる呪いを掛けてやるぞ!」
「あぁ!そっちかぁ!」
残念。
どうやら、外してしまったようだ。
ナツメとは結構長い付き合いになってしまったから、自信はそれなりにあったのだが。
「uteeZr,(仲良いっすね~)」
「お、そう見えるか?お主もたまには良いこと言うのぅ!」
「3x@Zr(あざ~っす)」
すぐさま、ナツメの機嫌を直したドラ男さんはお茶目にもウィンクをしてみせる。
うーん、良いドラゴン。
軽い感じがするが、紳士という言葉がお似合いだ。
あーあ、何で『Encounter of fate』にはドラ男さんルートがないんだろう。
あったら、絶対やるのに。