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こんにちは、乙女ゲームのメニュー画面さん

さて、そういうわけで今からさっそく魔術の修行を始めようと思う。

理由は明解。

前世の私がかなり重症な中二病を患っていたからである。

そして、そんな記憶を持つ私がファンタジー世界に転生したとわかれば、まぁ、後はお察しの通り魔術を使ってみたい、この一言に限る。

うん、ぶっちゃけ私ことフェリシアちゃん(6歳)は私利私欲に目がくらんでおります。

いや、だってファンタジー世界に転生よ?

想像力豊かな元日本人の血が滾るぜ状態にもなるって。


「でも、その前にまずはあれだ。」


そう誰にともなく言い訳をし終えた私は、指を鳴らし、ちょっとカッコつけながら、


「ステータス、オープン!!」


という言葉を発した。



……

…………

………………

そして、痛いほど長い沈黙が訪れた。

その間、悲しいことに特に何も起きなかった。


……どうやら、この世界はステータスがないタイプの世界だったらしい。

まぁ、でも確かに私はフェリシアとして六年間生きて来たけど、ステータス系の魔法は見た事がない。

本当に残念な話である。

その上、とても居たたまれない。


「はぁ、つまんないの」


ちょっとやる気を削がれてしまった私は、無駄に豪華なベッドに寝っ転がりながら、思わずそう呟く。

憧れだったんだけどなー、ステータス。


にしてもこのベッド、無駄に金かかってそう。

天涯付きだし、マットレスはふかふかだし、シーツも私が寝っ転がる前はしわ一つなかったし。

完全に当初の意欲を失くした私は、魔術とはまったく関係のない事を考える。

というか、本当にベッドがふかふか過ぎて、このまま寝落ちしちゃいそう……。


「『Encounter of fate』のメニュー画面みたいに自分のパラメーターがわかるやつがあったら、便利なのになぁ……」


「【"メニュー画面"を開きます】」


段々と強くなる眠気に逆らえず、目を閉じながらもステータス系の魔法を諦めきれず、未練がましく思わずそんな言葉を口にする。

そして、何故かそれに反応するように静かな部屋に無機質な声が響いた。

この部屋には私一人きりのはずにも関わらず。


……何、今の?

メニュー画面を開きます、って言った?


突然のホラー展開(?)に眠気がぶっ飛んだ私は恐る恐る閉じていた目を開ける。


……いやいやいやいや……え?


気のせいかな?

目の前に『Encounter of fate』でよく見た半透明のメニュー画面らしきものがあるんだけど……?


突如として、目の前に現れた半透明のメニュー画面らしきものに私は動揺を隠せない。

それどころかびっくりし過ぎて、一瞬呼吸を忘れた。


「……そ、そっちかぁ」


混乱状態から何とか普通の状態に戻った私はベッドに寝っ転がったまま、呆けたように目の前のメニュー画面を見つめる。


そうか、ここは乙女ゲームの世界だからステータスじゃなくてメニュー画面なのか。

でもさ、ヒロインならまだしも私はあくまでライバルキャラなんだよ。

序盤退場のメンヘラ・ナイフ令嬢なんだよ?

しかも、メニュー画面ってゲームだけの仕様じゃないの?

なのに何で私がメニュー画面使えるのよ。


……まぁ、起こってしまった事はしょうがないし、あったらあったで便利だし、むしろ良い事ずくめだし、何でもいっか。

そもそも、私が乙女ゲームのキャラに転生してる事自体がおかしいんだし、この際細かい事は気にしないようにしよう。


それはさておき、今はメニュー画面を詳しく見ていく事にするか。

えーと、メニュー画面のホームにあるのは『パラメーター』『アイテム』『好感度』『ガチャ』の欄ね、把握把握。

それと、さすがに現実世界だから『セーブ&ロード』欄はないらしい。

まぁ、あっても反応に困るだけだし、ここはなかった事を喜ぼう。

でもこれ以外は『Encounter of fate』と一緒だから、使い勝手はいいな。


よし、じゃあ早速上から順に見ていこうかな。

まずは『パラメーター』から、ポチッとな。


【『フェリシア・カレトヴァー』のパラメーター】


種族:人間

年齢:6


HP:4996/5000

MP:5000/5000


知力Lv:21/30

容姿Lv:27/30

流行Lv:1/30

魅力Lv:測定不能


攻撃力(物理):5

攻撃力(魔術):9473

防御力:2738



………何だ、これ。

いや、知力・容姿のレベルが高いのはまだ分かるよ。

私も伊達に高校大学を卒業した訳じゃないし、フェリシアちゃんの容姿もメイドさん達が毎日頑張って磨いてくれているわけだし。

あと、流行のレベルも、フェリシアちゃんが社交界デビューなるものを、果たしていないから低いっていうのも分かる。

魅力のレベルも、まだ幼女だから測定不能っていうのも分かる。

むしろ幼女なのに魅力のレベルが高いのも何か怖いし。

あと、か弱い幼女だから攻撃力(物理)が5なのも分かる。


でもさ、何だよ。

HPとMPが最大で5000で、攻撃力(魔術)が9473で、防御力が2738って。

おっかしいよなー、ゲーム中のフェリシアは全部底辺中の底辺だったのに。

フェリシアちゃんこと私は、まだ6歳なのにも関わらず一流の魔術師か何かなの?


いや、違うよね?バグってるだけだよね?

今日はちょっと『パラメーター』欄の調子がおかしかっただけだよね?


「そ、そうだ!魔術を実際に使えば、おかしいかどうかわかるはず!」


それに、最初の魔術の修行という目的も達成できるし、魔術の使い方自体も『Encounter of fate』のチュートリアルにもあったからその通り大丈夫なはず。


えーと、確かまずは大気中に漂うマナを体内に取り込むイメージをするんだよね。

……うん、でもマナって何?

よく分からないから、とりあえず一旦酸素とかに置き換えよう。

それで、次は酸素(マナ)を使いたい属性のものに置き換えるんだよね。

光属性なら傷などを癒す優しい光を、闇属性なら全てを飲み込むブラックホームのようなものを、火属性なら燃え盛る火を、風属性なら吹き渡る風を、水属性なら透き通る透明な水を、土属性なら広大な大地を、だったっけ。

チュートリアルに出てきた精霊がヒロインにそう言ってた気がする。

あと、ゲーム内のフェリシアは、確か水属性の初歩的な魔術を扱っていたから、今のフェリシアちゃん(6歳)も水属性が使えるはず。

つまりチュートリアルの精霊が言っていたように、水属性なら酸素(マナ)を透き通る透明な水に置き換えればいいのか。

そして、最後はその属性の魔術を発動させる呪文を唱えるんだったよね。

まぁ、熟練した魔術師なら詠唱なしでも発動できてたから、一流魔術師疑惑のあるフェリシアちゃんも呪文なしでも発動できそうだけど。

でも、一番最初だから、一応呪文は唱えておこう。


その呪文は確か……


「アクアっ!」


そして私がその呪文を唱えた瞬間、カレトヴァー家自慢の庭園が目の前に広がった。

そう、私の魔術で作り出した水が勢いよく壁をぶち抜いたのだ。


うん、フェリシアちゃんは威力だけなら一流の魔術師だわ。

でも、制御の修行が必要だね。


……って、いやいやいやいや、どういうこと?

これで、さっきの『パラメーター』は別にバグってなかったって証明された事になるんだけど。

こんなのゲーム内にはなかったよ?

だって、フェリシアは魔術師としては落ちこぼれで、魔術学院でも公爵家の権力を駆使して何とか入学・進級したくらいなのだ。

なのに、今の魔術は何?

一体フェリシアちゃん(6歳)に何があったの?


「お嬢様!?今のは………?」


おや、どうやら今のバカデカい破壊音を聞きつけた使用人やメイドの皆さんが集まって来てしまったみたいだ。

まぁ、公爵の位を持つカレトヴァー家の一人娘の部屋で破壊音がしたら、こうなるのは当然だよね。

本当にさっきからすみません。


「フェリシア!?今の音は一体……」


「フェリちゃん!?何があった、の……?」


おっと、さっきの破壊音で今世の私のお父様とお母様まで召還してしまったようだ。

そして、二人ともぶち抜かれた壁を見て、使用人とメイドの皆さん同様に絶句している。

あっ、ちなみにフェリちゃんっていうのは私の愛称です。


「まさか、魔術を使ったのか……?」


「ま、魔術ですって……?」


私が一周回って冷静に状況を確認していると、数分間黙っていたお父様とお母様が絞り出すようにそう言った。


「フェリシア!お前は天才なんだな!」


「さすが、私たちの娘ね!」


そしてお父様は私を抱き上げ、その側でお母様はにっこりと笑いながら、二人で大げさに私を褒めまくる。

この反応を見てわかると思うが、お父様とお母様は一人娘のフェリシアちゃんに甘々だ。

だから、ゲーム内のフェリシアがあんなに性格悪くなったのは、この人達のせいでもあると思う。

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