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DNA鑑定

死亡フラグを少しでもなくすためにもアンリと仲良くなるという目的は達成された。

決して、自分の欲望を満たしただけだろ、とか言ってはいけない。


さて、次はお母様の事なのだが。

どうやら私が思った以上に拗らせているようだ。


私がアンリを連れ、お母様の部屋に行くと、何とお母様は自身の部屋に引き込もってしまっていた。

両親の仲を元に戻すために、何とかお母様を部屋から出すか、私達を部屋の中に入れてもらわなければ。


まぁ、そんなに悩む必要はないかもね。

ほら、お母様ってば親バカだから。


「お母様、出てきてくれませんか?」


「……フェリちゃ~ん!」


私が呼び掛けるとお母様は秒で出てきた。

そして鼻をぐすぐすとさせて泣きながら、私に抱きついてくる。

うん、予想以上に出てくるの早かったな。

もう少し手こずりって時間がかかると思っていたのだけど。


「実は私、私……」


「取り敢えず、一回落ち着きましょう?ね?」


うーん、まぁ、これは仕方ないと思う。

妊娠しているのに、お父様が忙しくて帰って来ないわ、お父様に似ている男の子が家にやってくるわ、だなんて、ねぇ?

そりゃ、不安を抱くどころか情緒不安定にもなるよ。


え、何故それを知っているかって?

それも『Encounter of fate』の情報であり、アンリの運の悪さをより際立たせている要素でもあるからです。

そう、ゲーム内のお母様はお腹に宿した第二子を流産してしまったのだ。

その結果、お母様は塞ぎこんで自分の殻に閉じ籠り、お父様はそれを悔やんでどう接していいか分からなくなり、二人は仲違いを起こす。

また、アンリはその出来事で自分を責め、フェリシアに『あんたのせいよ!あんたのせいで、お父様とお母様がギクシャクした関係になってしまったのよ!この疫病神!』と言われ、決定的なトラウマにもなってしまった。

フェリシアはその後に『まぁ、邪魔になるであろう弟か妹を殺してくれたのは感謝するけど』と言っていたので平常運転だったけど。


「お母様、不安なのですよね?分かりますよ。そして、お母様は悪くないとも思います」


「で、でも……」


恐らく、お母様はお父様が浮気をしていないと信じたいが、アンリの存在がもしもを匂わせ信じきれず、自己嫌悪に陥るという悪循環に入っているのだろう。

精神状態が不安定な妊婦だから余計に。


「いいえ、お母様は悪くありません。その懸念はもっともかと。ですが、このままお母様の不安が燻り続けるのはもっと良くないです。なので、白黒ハッキリつけるためにDNA鑑定をいたしましょう!」


「でぃえぬえー、ですか?」


まだまだ日本に比べたら医学の発達していない部分が多いこの世界の人は、ピンと来ないのだろう。

しかし、手っ取り早くお母様の不安を取り除くにはやはりこれが一番だ。


「簡単にいうとDNAとは、親から子へ、子から孫へと代々受け継がれていく物です。」


本当はもっと色々な役割があるけど、今はこれだけの説明でも良いだろう。

そう判断した私はごくごく簡単な説明をするだけに留めた。


「基本的に親と子はそのDNAが同じとされています」


「な、なるほど?フェリちゃんは博識ですねぇ」


ちょっとだけ元気が出てきたのか、お母様はいつもの調子で私を誉めてくれる。

そのくらいフェリシアちゃんの存在は大きいのだろう。


「それでですね、私と契約を交わした精霊がそのDNAが同じかどうかを判断する装置を作り出したのです」


びっくりするよね。

私もこれを聞いた時、耳を疑ったもん。

ナツメ、規格外過ぎるよ。

まぁ、これは役に立つから普通にありがたいけど。


(当然じゃ!ほら、我輩天才じゃから!)


感謝半分苛立ち半分の気持ちをナツメに抱きながら、私は話を進める事にした。


「これがこの箱です。」


この箱というのは、側面に液晶の画面のような物がついただけの至ってシンプルな硬めの箱だ。

この中に鑑定をしたい人たちのDNAが付着した物を入れると、高度な分析でそのDNAが同じかどうかが液晶の画面に表示される。

ちなみに、難しすぎて高度な分析がどんな物かは私の頭じゃ分からなかった。


「実際にやってみましょうか。クロード、シリル」


「はい、お嬢様。こちらが仰っていた私とシリルの毛根です」


名前を呼んだだけなのに執事長のクロードは私のしてほしい事を察し、物が物だから箱に入れるまでしてくれた。

おぉ、さすが。


クロードの仕事意識の高さに感心しつつ、私が蓋を閉めると画面に『分析中』と表示される。

それからすぐにその文字は『分析完了・二人は同じDNAです。』に変わった。


「と、このようにDNAが付着した髪の毛などを入れると、その毛の持ち主たちのDNAが同じかどうかを教えてくれます」


「それで、ルーサーとアンリくんのを?」


「はい。お父様の毛根は既にクロードに頼んであります」


「……分かり、ました。アンリくん、悪いのですが」


「あ、はい!……っと、どうぞ!」


きっと、お母様はもうお父様を疑いたくないのだろう。

DNA鑑定をするために自らアンリに協力を頼み込む。

また、アンリはそれを快く引き受けた。

アンリ、やっぱ良い奴だな。

クロード同様に自分で箱に髪の毛を入れてくれたし。


「……結果は」


「同じDNAじゃ、ない……!」


よ、良かった。

ここで、同じDNAですとか出るサプライズがあったらどうしようかと思った。

やっぱりお父様は浮気なんてしていなかったんだね。

期待を裏切らないお母様大好き人間だったんだね。

良かった良かった。


だが、勿論それで終わりではない。

これだけではお母様の不安が全て取り除かれたたは決して言えないのだ。

まだ見ぬ弟か妹のためにも、お母様には安心して妊活に励んでほしい。

ゲーム内のフェリシアが持たなかった感情を心に秘めながら、私はお母様にもうひとつの提案をした。


「ではお母様、お父様の元に行きましょう!」


「え、えぇ?」


あとは二人が話し合えば万事解決だが、その機会はこちらから動かなければ訪れるのは随分先になってしまうだろう。

でも、それじゃ遅すぎし、お母様の不安を増長する事になりかねない。

妊婦のお母様にとって、やはり夫であるルーサーは必要なのだ。


「クロードに頼んで、馬車は用意しましたから!」


「えぇ、その点は抜かりなく」


私はお母様のお腹に配慮しつつ、ぐいぐいと引っ張って予め用意しておいた馬車にお母様を押し込んだ。

その後、私も馬車に乗り込み、運転手さんにお父様のいる所までお願いします、と言った。


結論からいうと、辿り着いたのは病院だった。

やった、ラッキーだな。

これでお医者さんか看護師さんあたりがお母様のお腹の子に気づいてくれたら、お父様はさらにお母様と今後生まれてくるであろう第二子のために力を尽くしてくれるはず。

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