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運が良いのか悪いのか

「ここの神殿ではどの属性の魔術が使えるのか、また魔力値はどれくらいなのかを調べる事が出来ます。」


私の目の前には、見覚えのある優しげな雰囲気の初老の神官が聞き覚えのある事を説明していた。

それもそのはず、彼はゲームの序盤、プロフィール作成の時に出てきて、それが完了するとヒロインは六属性の魔術全てが使えるという事と、光属性の次に得意な魔術の属性を教えてくれたりするのだ。

また、その属性は誕生日や血液型によって変わり、攻略対象との相性にも関わってくる。

例えば、風属性が得意なら同じく風属性が得意なシリルと相性が良いし、土属性が得意ならカイルと相性が良いといった具合だ。

ちなみに、私が誕生日と血液型を入力したら、カイルと相性の良いタイプのヒロインとなりました。

カイルと関わりたくない身としては嬉しくない結果である。


「こちらの水晶に触ると使える属性の魔術の色に輝き、こちらのモノリス型の魔力測定機は手のひらをかざすと具体的な自身の魔力値を教えてくれます」


うん、知ってる。

全部ゲームで予習済みですから。


「まぁ、理屈は置いといて実際にやってみましょうか。どちらが先にやりますか?」


うーん、正直フェリシアの使える属性も魔力値も知ってるからなぁ。

今さら、やったって興味ないよ。


……はい、嘘です。

めちゃくちゃワクワクしてます。

いや、だって転生ボーナス的な何かがあるかもしれないじゃん。

さっきだって、本来使えないはずの属性の魔術が使えたんだよ?

ヒロイン並みのスペックが今の私には備わっている可能性だってある。


「……なら、俺が先にやる」


と、そんな事をぐだぐだと考えていたら、カイルが先に名乗りを上げてしまった。

あぁ、正直に先にやりたいって言えば良かった。


そして、カイルは幼子とは思えないほど落ち着いた表情のまま、水晶に触る。

すると、茶・緑・青・黒・黄の順に光が灯った。


「おぉ、なんと……!さすが、フォレスター家の嫡子でいらっしゃる!カイル様は土、風、水、闇、光の5属性を扱う事が出来ます!」


はいはい、フェリシアちゃんはそれも知ってますよ。

ついでに、土属性の魔術は類を見ないほど強力だという事もね。

カイルは人気No.2だもん。

そりゃ、高スペックにもなるよね。

……けっ。


「ささ、フェリシア様もどうぞ」


神官さんはフェリシアもカイルのような結果になるのでは考えているのだろう。

幾ばくか声が上ずり、どこか期待しているような顔をする。


うんうん、分かるよ。

私も同じような気持ちだから。


「はい、分かりました」


私がそっと水晶に触れると青色・茶色の順番に光り、元の透明な水晶に戻った。


……え?

これで終わり?

私はもっと俺TUEEE的な展開を望んでいたんだけど。


(……言いづらいのじゃが、土属性の方は前世のお主成分じゃ)


えーと、つまりフェリシア自身はゲームと変わらず水属性しか扱えないと。

なるほど、転生ボーナスなんてないのか。

……は?


「おぉ、フェリシア様も素晴らしい!二属性も扱える事が出来ます!」


いや、普通は一つの属性の魔術しか使う事が出来ないから、二属性でも凄いんだろうけど。

でも、やっぱり先にやったカイルの比べるとどうしても見劣りしてしまう。

現に神官さんはああ言いながらも、ちょっと気まずそうな顔してるし。

私のせいではないけど、何か気を遣わせちゃってごめんなさい。


にしても、この世界の神もしくは女神はなんて融通が聞かない奴なんだ。

ここは、普通転生者の私が俺TUEEE的な展開になるのが王道なのに。

責任者出てこいや!


(おっ、分かるか?そうなんじゃよ、本当に融通が聞かない奴らでな!我輩よりもちょっと偉いからって、調子乗りおるし!)


……私は彼女が神と知り合いなんて事は一切聞いていません。


もう、神様に文句言うの止めよ。

ゲーム内のフェリシアよりも凄いんだし、それを喜ぶ事に専念しよう。


「やっぱりフェリちゃんは凄いわね~!あなたもそう思うでしょ?」


「あぁ、二属性なんてそうそういないぞ!」


いや、全属性を使えるお父様とお母様に言われてもなぁ。

あまり、説得力がないというか。

本心で喜んでくれているのは分かるけどさ。


「……で、では、魔力値の測定に移りましょうか」


やや引きつった顔のままの神官さんは、自然を装って話を進め出した。

何かもうごめんなさい。

この場でその事を気にしてるのは、多分私とあなただけだろうけど。


「どちらから計りますか?」


うーん、どうしよう。

何か、神官さんずっとこっちをチラチラ見てくるんだよね。

多分、さっきの二の舞を避けようとしてるんだろうけど。

でもなぁ、まだちょっと無双出来ないという衝撃の事実に立ち直れていないからなぁ。

もうちょっとだけ、現実から目をそらさせて。


「……なら、次も俺が先にやろう」


よし、カイルナイス!


私は心の中でガッツポーズをしながら、さっきと同じく落ち着きのある顔で魔力測定機に触れるカイルを見る。

そしてその瞬間、魔力測定機にひびが入り、煙を出し動かなくなった。

……え、壊れた?


あー、もしかしてカイルの魔力値は魔力測定機で計りきれないほど、規格外だとか?


「こ、これは……!間違いありません!カイル様の魔力値は魔力測定機では計りきれないほど、高いようです!」


うん、あってた。

だって、これチートで無双系主人公が出てくる小説でよくあった展開だもん。

はぁ……。


だから、普通は転生者である私がそういう展開になるはずなんだって!

カイル、スペック高すぎ!

少しは私に寄越せ!


(いや、今回ばかりは運が良かったと言うべきじゃな!)


え、それはどういう意味で?


(だって、今のお主は契約者である我輩と魔力回路を繋げておるから、尋常でない魔力が流れている状態なんじゃよ~!だから、その状態で魔力測定機に触れると、壊れるどころか大爆発するぞ!)


魔力回路というのは、マナを取り込むための出入り口とそれを体に巡らせるためのものだ。

一般的にこの回路が多ければ多いほど良しとされている。

また、その回路が人間よりも遥かに多く持つとされる精霊と契約すると、その精霊の回路を借りる事も出来る。

ちなみに、ゲーム内のフェリシアの魔力回路数は9本、ヒロインは102本、シリルは55本、カイルは78本だった。

平均は40本くらいなのに、ヒロインとフェリシアの格差ありすぎじゃない?


まぁ、何はともあれ、私と大精霊の子の回路が繋がれているのなら、さっき言ってた通り爆発するのも、水の魔術で壁をぶち抜いたのも、納得できる。


できるのだが。


契約っていつした?

どうしよう、まっっったく身に覚えがないんだけど。


(……てへ☆お主を見つけた時に、一目惚れ的なあれでつい契約結んじゃったのじゃ!)


ツッコミたい事は山ほどあるが、とりあえずこれだけは言わせてくれ。

私の意志は?

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