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その4

 



 「いやあユウジのやつ相変わらずカッコいいね」


 「ん?アカルどこ行くんだ?」



 「ちょっと新郎のところに行ってくるよ」



 「じゃあこのテーブルのみんなで行こうぜ」



 「ちょっと待ってくれないか、まずはかつての切り込み隊長一匹でいかせてくれよ(うわ、切り込み隊長とか言っちまった、恥ずい!)」



 「あはは、よっ切り込み隊長!(言っててちょっと恥ずかしいなコレ)」





 「よお、ユウジ」


 俺は新郎にかつてのように挨拶をする。俺は新婦に向き直ると出来るだけ良い笑顔を作りながら挨拶をする。


 「本日はおめでとうございます、ユウジくんの小中高時代の友人でアカルといいます」


 そこまで挨拶したところで、果たして俺は彼の友人だったのだろうかと思ったものだった。


 「久しぶりだなアカル、来てくれてありがとう」


 「ん、久しぶり、結婚おめでとう」


 俺とユウジの視線が交錯する。会場のご歓談のボリュームが急に大きくなったようなそんな気がした。

 その披露宴特有のざわつきのカーテンを開けたのはユウジの方だった。


 「ところでさ」


 ユウジの方から話を切り出すとは珍しい、こういう時は大概、何かこの話をするぞとあらかじめ準備している場合が多い、とかつての経験から推測出来た。


 「アカルはさ、小学校の卒業式の日のあの小さい悪魔、覚えてるか?」


 「ああ、覚えてるよ」


 「実はさ俺、アカルに謝らなきゃいけないんだ」


 「…?へえ」


 「俺さ、ルックスに自信あったからさ、悪魔に頼らなくても女の子にモテる自信あったんだよな」


 「あはは、言ってるよ」


 「それより俺の兄貴みたいにチームの頭やりたくてさ、だから本当は同性に受ける薬を取りたかったんだ」


 ―――え?


 「だけどあの時アカルが先に同性にウケる薬取るって言ってたじゃん」


 俺はユウジの話を微笑を顔に貼り付けながら聞いていたのだが、内心かなりショックを受けていたし、これから受けるであろうさらなるショックの予感に身構えていた。


 「だからさぁ―――


 ―――あの薬の瓶、すり替えちゃったんだ、アカルが飲む前に」


 ショックに備えていて正解だった。

 久々に俺は、この頭をぶん殴られるかのような衝撃を懐かしさと共に噛み締めていた。


 「アカル、ゴメンな」


 俺は酷い耳鳴りを聴きながら考えた。

 それじゃユウジが飲んだのは女にモテる薬だったのか。ユウジは続けた。


 「けどあの薬全然効かなかったな」


 俺は、効いてんじゃんと心の中でシャウトしながら、出来るだけいい笑顔を捏造ってユウジに言った。


 「結局、悪魔をあてにしたらいけないってことかな」




 俺とユウジが同時に笑い出したその時、2人以外の世界が止まった。




 「なんだこれ、なんで動いてるのが俺とアカルだけなんだ!?」


 俺はあの悪魔、ベルゼビュートが現れるんだろうなと思った。





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