その2
そんな不思議な小学校卒業式のイベント後、俺とユウジとワルダチたちは無事に中等部に進学した。
一時期は俺達の無邪気な悪行が発覚してしまい危ぶまれたエスカレーターなので入学式では感慨もひとしおだった。
ちなみに俺達のいた学園は小学校は共学だが中学高校は一環で男子校だった。
ファーストインパクトにセカンドチャンス無し。中学生としてのファーストデイズはハーデストデイズだった。
だがこちらは内部生の上に地の利、同じ学園敷地内を移動しただけ、もあった。多少手こずったが5月の連休前には予定していたステータスを勝ち取っていた。
結局与えられたものには意味が無く、それを使い戦い勝ち取ったものにしか意味が無いのだ。
その結果、夏休み前には麗しのお兄様方から心温まる優しいご指導を頂くことになり、生まれて初めて袋叩きというものを経験するわけだが、それはまた別の話だ。
次に始まるのがグループ内でのポジション争いだ。不良っぽいサブカルチャーを好むシャレオツな少年たちもサルや政治屋とやってることは大差無いのである。
「アカル、なんでアカルも悪魔の薬飲んだって、みんなに言ったらダメなんだ?」
「ホモと思われるのが嫌だからな」
ユウジは悪魔との出会いや御礼にもらった薬のことを仲間にプレゼンしポジショニングに利用した。
俺はユウジに俺がベルゼの薬を飲んだ事は口外しないでくれと頼んだ。ユウジは彼自身の優位性を保つ為もあっただろう、この約束は最後まで守ってくれた。
仲間たちは皆、ユウジの話を信じた。
「確かにユウジはオーラが違うよな!」
「だろう?」
「あのルックスに悪魔の薬の援護がついたから、無敵のモテ男くんだな!」
事実ユウジの周りには男子校であるにも関わらず常に女の子が取り巻いていた。放課後はうちの学園の女子部の生徒たちだけでなく、近くの学校に通う女生徒たちが大挙してユウジを取り囲んでいた。
中学校3年生にして女子大生果てはOLのお姉様方まで冗談かと言う位にモテていた。
俺は他の野郎仲間と、そのオアシスのようなハーレムを遠くから眺めているだけだった。それは砂漠のオアシスというより蜃気楼だった。
その一方で俺のワルダチ仲間の受けは大変良かった。俺なりに頑張ったからな、いろいろと。
共に仲間内のリーダーを目指すライバルになったユウジとの対比でいうと、ロマンチストな俺は女の子にすぐに惚れてはすぐに振られていた訳だが、そんなモテなさっぷりも野郎仲間には好意的に受け入れられていた。
例えばこんな具合だ。
俺「いやー実は昨日かわいい女の子と知り合ってさぁ」
一同「ほうほう」
俺「なんつーのそのコさ、天使!やれやれ、って感じでよー」
一同「アカルはホントにローマ人だねー」
ロマンチックな妄想大好き少年の俺は仲間からしばしば親しみを込めてローマ人と呼ばれていた。
仲間A「おっユウジがまた新しい女の子連れて歩いてるぜ!」
ユウジは相変わらず尋常でない位モテていた。
ユウジ「よお!おまえら!」
天使「あら、昨日はどうも…」
俺「ああ、えーっと、どうも」
ユウジ「うん?アカル、コイツのこと知ってんの?」
俺「いやまあ知ってるってほどじゃないよ、ハハハ…」
毎度のことだがこーゆー事態になると、頭を思いっきりブン殴られたような気持ちになるんだよな。
仲間のうちの仲間Dがこっそり俺に聞いてきた。
仲間D「アカル、ひょっとしてあの子がその天使か?」
俺の様子が一目瞭然だったので続けてフォローを入れてくれた。優しいヤツだったな、仲間D。
仲間D「アカル、相手が悪かったぜ、なんせユウジには悪魔がついてるんだからな」





