苦手な異性のタイプは?
僕は工業高校から建築の仕事に進んだので、義務教育を終えてからは周りに女っ気がゼロの生活をしていたので
『苦手な女性のタイプ』
なんて贅沢な悩みを抱えた事がありません。
だから
『僕に少しでも好意を抱いてくれる全ての女性』
は『得意なタイプの女性』
になっていたと思います。
そんな僕が
『お嬢さまタイプの女性』
に苦手意識を抱くようになったのは、ある女性と交際を始めた経験からです。
この女性は関西でも有名な、某お嬢様大学の音楽科を卒業、その後は銀行に勤務、お父さんは郵便局の課長職を務めているなど、ドラマとか映画の世界の『お嬢様』まではいかないとしても、雑草育ちの僕からすれば『世間知らずの温室育ちのかなりなお嬢様』でした。
何故、こんな僕がそんなお嬢様の彼女と交際を始めたかと言うと、二十歳も後半に差し掛かろうとしている時期、あまりにも周りに女っ気が無い事に危機感を覚え、手あたり次第の友人知人に
「良い女性がいたら紹介をして欲しい」
と声を掛けまくっていたら、仕事関係の知り合いが、たまたま昔から知っているらしい彼女を僕に紹介してくれたのが始まりになります。
初対面の彼女に対する印象は
「何て清楚で落ち着いた感じの大人っぽい女性なんだ・・・」
と、殆ど一目惚れに近い印象でした。
彼女を紹介してくれた知り合いから、彼女の卒業した大学や今の仕事を聞いて知っていたので、こんな僕が真面目さで攻めても到底どうにもならないと思い、無口な彼女に対して、ダメ元で僕のハチャメチャ人生ネタを一瞬の沈黙も無いぐらいに、得意のマシンガントークで攻めまくりまくったんです。
すると、彼女からすれば僕の吉本新喜劇並みのコメディー人生が凄く面白く感じてくれたみたいで、初対面から僕にバッチリな好感を抱いてくれた様子、知り合ってから2週間、3回目のデートで交際を申し込むと喜んでOKの返事をしてくれたのには『嬉しい思い』よりも『驚きの気持ち』の方が強かったぐらいです。
そうしていざ交際が始まると、僕とはあまりにも生活環境が違うのに少し違和感がありました。
1つ例をあげると・・・
彼女は
「吉野家の牛丼に行った経験が無い」
と言うので連れて行ってあげると、焼き肉では
「バラ肉が一番に好き」
だと言っていたはずなのに、牛丼のお肉を殆ど残して
「私は脂身が苦手・・・」
と、意味不明な言い訳をしたりの、その他にも色々な違和感がありましたが、ただ、どんなに違和感のある出来事があったとしても、悪気の無い無邪気に思える天然な性格に益々と惹かれて行ったのも事実です。
交際を始めてから半年が過ぎた頃の夏のある日、彼女と二人で花火大会を見に行った時の話です。
花火の打ち上げ時間少し前に会場に行くと、すでに良い場所は人でいっぱいになりかけてたので、慌てて二人が座れる空いているスペースを見付けて腰を下ろしたのですが、何やら後ろが騒がしいので振り返ると、僕と同年代らしい男三人がドカッと腰を据えて大声で話しをしていました。
「何で花火大会に男三人で?」
「鬱陶しいなぁ・・・」
と思いながら見た男達は大きなクーラーボックスを背もたれに、足元には何本もの缶ビールの空き缶が転がっていて、すでにかなり出来上がっている様子、場所を変えようと思ったけど他に座れるような場所も空いていなかったので、仕方が無くその男達を無視する形で花火が打ち上がるの待っていると、お約束通りの案の定にからまれました。
その危機的状況にも、僕は二十歳過ぎまでは格闘技が趣味だったし、子供の頃より喧嘩にもそこそこ自信があったので、心配する彼女に
「大丈夫、話し合いをしてくるだけやから」
との言葉を残して酔っ払いの3人を連れて人気の少ない場所へと行き「さあ・・・話し合いで済むかな?それとも3人相手に喧嘩沙汰かな」?とドキドキしながらいざ三人と向き合ってみると・・・
三人の中で一番に偉そうにしていた先輩格らしい一人はビックフットか雪男を彷彿させるぐらいにバカデカい人間・・・
格闘技の世界においても喧嘩の世界においても『体格が大きい方が有利』は常識、身体の大きな男はそれだけで『手足のリーチが長ければナチュラルパワーを備えている』と、何回も身を持って経験をしていた僕なんで「これはヤバいなぁ・・・」と思い、穏便に済ませる為にお金で解決をしようとポケットから財布を出した瞬間・・・
物陰からいきなり現れた彼女が!
まさにドラマ!
まさに映画!
まさにマンガ!
の正義のヒロインみたいに見事な手際良さで、あっさりとその三人を片付けてしまいした。
花火大会の帰りの道中で恐る恐るさっきの見事な格闘術について尋ねて教えてもらえた事実とは・・・
ほとんどの『お嬢様大学』と呼ばれる大学では内密で超実戦的護身術の授業が必修科目であり、教えてくれる先生と言えば空手、柔道、合気道、古武術など、それぞれの達人と呼ばれるレベルの師範代、その達人たちから週に6時間、4年間みっちりと最強の護身術の教えを受けたそうです。
そう説明してくれながら笑顔で
「特殊警棒を使えば大の男が相手でも5~6人までは大丈夫」
と、付け加えた彼女の横顔には、幼い子供が悪気なく虫を潰すのと同じ『無邪気な残酷さ』を感じずにはいられませんでした。
あの出来事があって以来、世間知らずで、大人しそうに見える
『お嬢様タイプの女性』
に、少しだけ苦手意識を抱くようになりました。
もし、あなたの周りに、世間知らずでイライラしてしまうようなお嬢様がいたとしても、多少の天然さは多目に見てあげて、決して本気で怒らせないように心掛ける事をお勧めします。
信じるか信じないかは・・・
あなた次第です・・・