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「私は、本部からルーナに派遣された審査官のヒュウガですよ、それ以外の何者でもないですよ!」
ヒュウガはマイの突き刺す視線を交わすように言った。
「ふーん、あっそ、まあいいわ、私達はあんたの案内人だから、あなたが危なくなっても助けないわよ!、その変はしっかりと認識しといて頂戴」
私達はあくまでも案内人だ、と言わんばかりの態度でヒュウガに向けて強く言った。
「ええ、構いませんよ!、最初からそう言う話しでしたからね!、そちらのマドカさんもそう言う事でいいんですよね!」
ヒュウガは確認するようにマドカに向けて言った。
「ええ、私達は案内だけを支部長から頼まれてますので!」
マドカの確認をしたヒュウガは改めて今回の任務の事、そしてこれから行く場所の事を細かく聞く事にした。
二人の話しを聞くと改めて色々とわかった事があった。
まず二人は態度こそ、素っ気ないが真面目で正義感あふれる女の子達だった、以外にもあのノムが寄越した人物だからヒュウガも疑っていたのだが心配無さそうだ。
今回、ヒュウガがルーナに来た目的は、月魔の違法実験の調査とルーナ支部の支部長の調査であった。
副会長のゴルはある程度、予想は付いていたみたいだった、そしてゴルはこう言った。
「ヒュウガ、今回は大規模かもしれん!、国の上層部や、その地域を管理する領主、そしてルーナの支部長、すべて繋がっていて、全体で事が起こっている可能性がある」
ヒュウガはその可能性を聞いていたからこそ、ルーナに入ってからは慎重に行動していた。
だが、ここに来て、討伐に行かされるとは、あの、ノムと言う男、余程、私に近づいて欲しくない場所があると見えるな、あの報告書の資料も取って付けたような内容ばかりで信憑性に欠ける、私が離れている間に色々な証拠が消されなければいいが。
それと、もう一つの可能性と言えば、今回の任務の場所で、私達をまとめて殺そうとしているかもしれませんね!、おそらくこのマイとマドカと言う女性達はノムとは繋がってないでしょう、彼女達は真面目で正義感も強い、そんな彼女達をノムが手駒にするとは思えない。
まあ、現状ではどれも推測の域を出ないので何とも言えないが、注意するにこした事はない。
「あー、マドカ、駅が見えたわ、あと少しで着くわよ」
「マイは本当に、動く乗り物が好きね!、はしゃいじゃて」
「ふん、違うわよ!、ただ駅が見えたから、言っただけだもん!」
ヒュウガは二人のやり取りを見ながら楽しそうに微笑んでいた。
ノムの自宅
ノムはヒュウガ達を送り出したあと自宅に戻り、ワインを片手にソファーで寛いでいた。
ノムは一瞬、気配を感じ、その場所を見た、その場所を見ると金髪の白い仮面を付けた男が立っていた。
「此処には来るなと言ったはずだが?」
「心配するな、遮断はしてある」
「そうか、で、やれそうか?」
「女二人は問題ない、だが男は厄介だな、あれは恐らく、相当、強いぞ」
ノムはそう言われると苦虫を潰した表情をした。
「だが、やって貰わねば困る、我々の積み上げて来た物が壊れかけないからな」
「何も、別に、無理とは言っていない、だが別料金だ」
「オイ、それは約束が違う、ウトクから話しを聞いたが、邪魔者は排除してくれると聞いたぞ」
「ああ、普通のブレイカー員だったらな、だが、あいつは違う!、正直、軍神だなんだと言ってもそこまでの強さではないと思っていたが、近くであいつを見たらそれは間違いだったと気付いた」
「シード、お前程の奴がそこまで言うとは珍しいな!、今までだって、名がある数々の猛者を殺してきだろう」
ノムはシードがそんな事を言い出した事に驚いていた。
シードは物心がついた時には人を殺していた、最初は生きる為、だが途中から変わって行った、殺す事でしか自身の欲求を満たせなくなってしまったのだ、殺しを続けて行く内に闇灰にスカウトされ、今や闇灰の中でも実力を認められる暗殺者となった。
シードは殺しを重ねるごとに一切の考えをしなくなった、例えるなら自然と呼吸をしているようなもの、それぐらい自然に人を殺す事ができるようになっていた。
だからノムはシードの発言を無視出来なかった。
「だが、約束は約束か、いいだろう、今回はタダでやってやる!、ふふ、はーはっは!、ここまでの強者と合間見えるのは、いつぶりだろな!」
シードは興奮して抑えられない感情を爆発させた。
ノムは安堵の表情を浮かべた、てっきり、怖じ気づいたのかと思ったが、どうやら違うらしいな、戦う者の本能というか、それに触発されたか、まあ、いいわ、私としては奴らを殺してくれれば問題ない。
あの女共も私の言う事を素直に聞いていれば良かったものを、美女二人を失うのはちょっと残念だが、あの二人は真面目すぎる、いずれ私の邪魔となるだろう、ここいらで消えて貰おう。
「いいか、シード、失敗は許されんぞ」
「あーん、誰に言ってんだ、俺が今まで、あんたの言った殺しを失敗した事があったか?、あーん、あんまり調子にのるなよ、お前なんか、いつだって殺せるんだからな」
「おいおい、そんなに興奮するな、軽い言葉の確認をしただけだろう!」
ノムは軽い冷や汗を掻いていた、確かにこの男が本気を出せば、私ごときなど一瞬で殺せるだろう、だが上手く操れば、いい手駒だ、私の交渉術を持ってすればこの男を操るのは容易い。
ノムは先の未来を想像したのか、いやらしい笑みを浮かべたのであった。