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ブレイカー協会 ルーナ支部前
朝、ヒュウガがルーナ支部に着くと3人の人影が目に入った。
「おはようございます!、ヒュウガ様、朝、早くからご苦労様です。」
そう言うとノムは頭を下げた。
「ええ、おはようございます!、そちらの方が、案内人の方ですか?」
ヒュウガはそう言うとノムの後ろにいる二人の人物を見た。
「ええ、二人共、紹介しなさい!、昨日、話したヒュウガ様だ」
そう言われると、二人の人物が声を出した。
「マイよ!、よろしく」
茶髪の髪を後ろで束ね、くりっとした目元、整った鼻筋、赤くふっくらとした唇、シャープな顎、身体付きは女性としては少し小さいぐらい、だが、出る所はちゃんと出てる、通る人が絶対、立ち止まって見てしまうほどの美人と言ってもいいだろう。
と、マイを見ているともう一人の人物からも声がかかった。
「マドカです!、よろしくお願いします」
マドカと言った方は、黒髪のショートヘアー、こちらも目鼻立ちが整っていて、美人と言うよりは可愛いと言った方がいいだろう、マイよりは少し身長があるが、体型の方は控えめとだけ言っておこう!。
その後、お互いに紹介し終え、軽い話しを少し、した後、現地に向かった行った。
この世界においてのエネルギーは何か?、問われれば一様に皆はこう答えるだろう、魔力と。
エネルギー資源と言われれば、色々と想像する通り、様々な物が存在する、その中でも取り分け人類が注目したのは魔力だった。
生ある者は例外なく体内に魔力を宿している、だがそれは少量であり、それを増幅させるには魔力研鑽、一言で言えば修行をしなければ増やす事は出来ない。
だが魔力は何にでも変換でき、どんな事にも応用が効く為、長年、研究が行われてきた。
その結果、人類はこの世界全体にも少量ながら魔力が存在している事を突き止めた、だが世界に存在している少量の魔力をめぐって様々な戦争が繰り返されてきた。
だが、それも長くは続かなかった、魔力を奪い合った結果、世界に残されていた魔力はほとんど無くなってしまったのだ。
だが、ある研究者が開発した装置で世の中が劇的に変わって行った。
その人物の名はシュウと言った。後の世で偉大なる発明家として名が刻まれている。
シュウが発明したもの、それは魔力増幅器と呼ばれる代物だった。
この世界は自然災害が非常に多い、大量の雨、暴風によるいくつもの竜巻、度重なる地震、地震の影響による津波、シュウはその莫大なエネルギーをなんとか魔力に変換できないものかと長年、研究を重ねた結果、それらを魔力に変換する方法を突き止めたのだ。
複雑な魔力式を幾重にも組み込み、シュウ以外は誰も真似できないほどの難解な魔力式であった。
シュウがそれを世に発表するとたちまちに各国のトップは争うようにシュウに資金を提供し、そのおかげでシュウの魔力式を元にした魔力増幅器が完成した。
それは各国の各地に配備され、その事によって、世界各地の自然災害のエネルギーが魔力に変わり、そして自然災害も無くなったのだ。
魔力が全世界に満ちる世界になった為、あらゆる物が魔力によって発展して行った。
車、機関車、通信手段 etc、、、
数を上げればきりがないほど、人々の生活は向上して行った。
だが、それに比例して月魔の出現する割合や、出てくる数が増えていった。
いまだにその変の関連性や、つながりは解明されていないが、、
ルーナ 南西部に向かう機関車の室内
「で、実際、あんた、何者?」
マイは目の前にいる男を怪しむように言った。
「ちょっと、マイ、そんな言い方、失礼でしょう!、すいません、ヒュウガさん」
マドカはマイの態度があまりにも失礼にあたると思い、頭を下げた。
だが、マイがこういうふうに疑っているのも仕方ないとも思っていた。
いきなり、支部長に呼ばれ、行ってみると、例の月魔達の残党の任務に行ってくれ、と言われ、本部から一人、派遣されて来てる男がいるからその者と一緒に頼むと、いきなりの内容に私もマイも驚いてしまった。
「支部長、月魔の討伐なら構いませんが、その本部の人と行くのは無理です!」
マイははっきりとした態度で支部長に向かって言った。
「マイよ、そこをなんとか頼む!、お前たちが男を毛嫌いしているのはわかるが今回だけはどうしようもないんだ、それに二人はあの辺の土地勘もあるし案内役にはお前たち以外の者は有り得ない」
ノムはマイの毅然とした態度に一瞬、怯んでしまったが、なんとか事が運ぶように言った。
「ですが、支部長、なんでその本部の人を連れて行かないといけないのですか?、さっきマイも言いましたが討伐だけだったら私達だけで充分だと思うのですが?」
マドカは思っている疑問を投げかけた。
「お前たちも知っているように今回の任務は何回か失敗している、なので次は失敗する訳にはいかんのだ!、だからA級であるお前たち二人と本部から派遣された男、この三人で任務に当たってもらいたい、そんなに深く考える事はない、言うなればお前たちは保険であり、あくまで案内人で構わん」
「つまり、その男のボディーガードをしろと?」
マイが鋭い目つきで言った。
「まあ、その必要はないと思うが、あくまで案内だけつとめてくれれば問題ない」
ヒュウガが軍神、そして本部の総長という事は支部長クラスまでしか知らない事だった、ヒュウガは各地に調査任務に出掛ける事がある為、顔、姿、身分は末端のブレイカー員にはほとんど知られていない、そしてヒュウガが調査で出掛ける時の身分は、審査官、副会長のゴルがヒュウガの身分を隠す為に突発的に、作った仮の役職だった。
「ですが、私もあんまり乗り気はしませんね!、本部の人と一緒に行くと言うのはちょっと、まだ普通の男の方がマシですね」
マドカは遠回しに断ってますよ!と言わんばかりの態度で言った。
「お前たちはいずれ、本部で働きたいって言ってたじゃないか!、今回の任務でアピール出来れば、お眼鏡にかなうんじゃないか?」
ノムがそう言うと二人は考えさせて欲しいと、相談を始めた。
相談している二人を見てノムは舌打ちをした。
全く、じゃじゃ馬共め!、この私の言う事を二つ返事で、ハイッ!と言えばいいものを。
相談が終わったのか、二人はノムの前に再び現れた。
「今回の任務、受けるのは構いませんが、条件があります!」
ノムは表情を崩さずにいたが、心の中では偉そうな態度を取りやがってと、罵っていた、だが、今回の任務を受けさせるまでは我慢と、腹に飲み込み、その条件とやらを聞いてやる事にした。