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ルーナ生態研究所 特別実験室
「見ろ、経過も順調だ、月魔の細胞を移植してここまで理性と力を維持しているのは、このNo.50だけだ!、このまま何もなければ、実用段階に入っても問題ない」
ウトクは実験結果を誇るように目の前にいる人物に言った。
「ほう、思った以上に進んでいるようだな!、実用段階に入れば我が組織の兵隊共も強くなれるな!」
「まあ、おたく達が資金を提供してくれる限りは、最高の結果を出すつもりだ、ところで、話しは変わるが、少々、厄介な事があってな」
ウトクはいかにも困っているとアピールするような態度をした。
「なんだ、我々の力が必要なのか?、それともまだ金がいるというのか?」
金髪の髪に白い仮面、そして黒いコートを着ている男が言った。
「いや、金は問題ない、ただ、実験を邪魔される可能性があるかもしれん」
「それは、深刻だな、早急に手を打たないとマズいな、どこからバレるかわからんからな」
「そちらで処理出来るか?、私としては研究に専念したいのでね!」
「いいだろう、本来なら金を取る所だが、我々もこの研究は邪魔される訳にはいかない、我々、闇灰の方で処理しよう」
「任せたぞ、これで気にせず研究に打ち込めるわ、期待していろ」
ウトクはそう言うと嬉しそうに去って行った。
ヒュウガが宿から出ると声がかかった。
「ヒュウガ様、至急、ノム様が話しをしたいと言っているのですが大丈夫でしょうか?」
ルーナ支部の職員らしき男はヒュウガを見つけるや否や、すぐさま伝えてきた。
「何か、あったみたいだね!、分かった、すぐ行こう!」
ルーナ支部 支部長室
「急に、お呼び出ししてしまい、申し訳ありません」
ノムはヒュウガの様子を探るように声を出した。
「いえいえ、問題ありませんよ!、畏まらないで下さいよ!」
挨拶を交わした二人はテーブルに向かい合うように座り、話しを始めた。
「さっそくですが、ヒュウガ様に至急、当たって頂きたい任務が発生してしまいまして、まずは詳細をお話したいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ、お願いしますよ!、まあ、私の力で足りるかどうか、わかりませんが、、」
「いやいや、ご冗談を、ヒュウガ様にしか出来ないかもしれません、ではお話します」
そう言うとノムは詳細を話し始めた。
概要を言うとこういう事らしい。
ルーナ南西部に月魔の残党が発見され、ルーナ支部からも何人か派遣して対処したがことごとく失敗してしまった、そして現在、ルーナ支部にはS級ブレイカー員がいない為、困っているから、行ってくれないか?、と言う事らしい。
「詳細はわかりましたが、月魔の残党ぐらいであれば、B級程度でも対処出来ると思うのですが?」
「ええ、普通であればそうです!、そう思っていた為、私もB級の者を何人か向かわせたのですが、全員、命だけはなんとか助かりましたが、酷い致命傷を負った者がほとんどでした」
「そうですか、その討伐に向かったB級の者達の話しを少し、聞きたいのですが?」
ヒュウガがそう言うとノムは一瞬、怯んだ表情をした。
「実を言うとその者達は致命傷もそうですが、精神的に参ってまして、とても話しが出来る状況ではないのです、出来れば、今はゆっくりと療養してもらいたいので、出来れば会うのはちょっと控えて頂きたいのですが。
無論、心配はありません、細かい状況などは彼らが戻って来た時に私がある程度、聞きましたので」
ノムは何も言わさないとばかりに一気に話した。
ヒュウガはノムの反応に違和感を感じたが、あえてとぼける事にした。
「そうですか、わかりました!、ですが、私もそれが目的で来ている訳ではないので、一つ、条件があります」
ヒュウガがそう言うとノムは警戒したような表情になった。
「条件とは、一体何でしょうか?、可能な事であれば、最大限、協力させて頂きますが」
「いやいや、別に、そんな難しい事じゃ、ないんですが、、先ほど、ノムさん、詳細を聞いたと、言われてましたので、私と一緒に動向して貰えれば有り難いのですが?」
ヒュウガがそう言うとノムは慌てて反論した。
「動向したいのは、山々なんですが、あいにく此処を離れる訳には行かないので、残念ですが」
「問題ありませんよ、私が行けば、月魔はすぐ処理しますし、何より、本部から転移の魔法石を副会長より何個か預かって来てるので!」
ヒュウガはノムの反応を見るかのように告げた。
「て、転移の魔法石ですか、それはまた、なんと言うか、凄いですね、わかりました、ではこうしましょう、私はちょっと、色々な案件を抱えてまして、どうしても離れる訳には行かないので、ヒュウガ様の案内を、私が最も信頼しているブレイカー員を付けましょう、それでどうでしょうか?」
ヒュウガはこれ以上、言っても無駄と判断しそれを了承した。
そして明日の朝、ルーナ支部で待ち合わせをして現地に向かう事となった。